循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:12

日本人の“尿ナトカリ比”目標値が決定~ステートメント公表/日本高血圧学会

 日本高血圧学会は10月8日、日本人のための尿ナトカリ比の目標値と適切な評価方法を提唱するため、尿ナトリウム/カリウム(尿ナトカリ比)ワーキンググループによる『コンセンサスステートメント』をHypertension Research誌で公表した。尿ナトカリ比の目標値として、まずは実現可能な“4”を目指し、将来的に至適な“2”へ段階的に設定していくという。

NSAIDs、心筋梗塞や胎児動脈管収縮に関して使用上の注意改訂/厚労省

 2024年10月8日、厚生労働省はNSAIDsの添付文書の改訂指示を発出した。全身作用が期待されるNSAIDs(医療用)の添付文書には重大な副作用の項に「心筋梗塞、脳血管障害」を、シクロオキシゲナーゼ阻害作用を有するNSAIDsの添付文書には特定の背景を有する患者に関する注意として、妊婦に対し「シクロオキシゲナーゼ阻害剤の使用により胎児動脈管収縮を疑う所見を適宜確認する」旨の追記がなされる。

家庭用血圧計のカフのサイズは上腕囲に合っている?

 高血圧患者に対しては自宅での血圧モニタリングが推奨されているが、米国成人の約7%に当たる1700万人以上で、家庭用血圧計に付属のカフのサイズが上腕囲に合っていないため、血圧を正確に測定できていない可能性のあることが明らかになった。米ジョンズ・ホプキンス大学疫学分野の松下邦洋氏らによるこの研究結果は、米国心臓協会(AHA)のHypertension Scientific Sessions 2024(9月5〜8日、米シカゴ)で発表されるとともに、「Hypertension」に9月5日掲載された。  AHAによると、米国の成人のほぼ半数が高血圧と診断されている。コントロールされていない高血圧は、心筋梗塞、脳卒中、心不全などの発生リスクを高める。AHAは、高血圧患者に対して、家庭用血圧計による血圧の測定・記録を推奨しており、その際に使う血圧計は、手首で測るタイプよりも上腕で測るタイプの方が望ましいとの見解を示している。

食用色素でマウスの皮膚の透明化に成功

 米スタンフォード大学材料科学・工学助教のGuosong Hong氏らは、普通の食用色素を使ってマウスの皮膚を透明にし、皮膚の内側の血管や臓器の働きを可視化することに成功したことを報告した。一般に「黄色4号」と呼ばれているタートラジンという色素を溶かした水溶液を皮膚に塗布してしばらく置くと皮膚が透明になり、拭い取ると透明化の効果は速やかに失われるという。マウスよりも厚い人間の皮膚にもこの方法が通用するかどうかは不明だが、Hong氏らは、「その可能性は大いにある」と期待を示している。この研究の詳細は、「Science」9月6日号に掲載された。

新規3剤配合降圧薬の効果、標準治療を大きく上回る

 血圧がコントロールされていない高血圧患者を対象に、新たな3剤配合降圧薬であるGMRx2による治療と標準治療とを比較したところ、前者の降圧効果の方が優れていることが新たな臨床試験で明らかにされた。George Medicines社が開発したGMRx2は、降圧薬のテルミサルタン、アムロジピン、インダパミドの3剤配合薬で、1日1回服用する。アブジャ大学(ナイジェリア)心臓血管研究ユニット長のDike Ojji氏らによるこの研究結果は、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表されるとともに、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に8月31日掲載された。

冠動脈疾患診断後、禁煙で発作リスク半減も減煙では無効

 心臓病と診断された後に禁煙すると、心臓発作や心臓関連の死亡リスクが5年間で44%低下する可能性を示すデータが報告された。ただし、喫煙本数を減らしただけでは、この効果は期待できないという。ビシャ・クロード・ベルナール病院(フランス)のJules Mesnier氏らの研究の結果であり、欧州心臓病学会年次総会(ESC Congress 2024、8月30日~9月2日、英ロンドン)で発表された。  この研究では、安定冠動脈疾患患者の国際レジストリ(CLARIFY)のデータを用いて、冠動脈疾患患者の喫煙状況が、その後の心血管イベントリスクに与える影響が評価された。冠動脈疾患の診断から平均6.5年経過した患者3万2,378人を5年間追跡し、心血管死または心筋梗塞の発症で定義される主要心血管イベント(MACE)の発生率を検討した。登録時点で1万3,366人(41.3%)は喫煙歴がなく、1万4,973人(46.2%)は元喫煙者、4,039人(12.5%)は現喫煙者だった。冠動脈疾患診断時に喫煙していた元喫煙者のうち、72.8%は翌年までに禁煙していたが、27.2%は喫煙を継続していた。

症候性心房細動への肺静脈隔離術vs.シャム/JAMA

 症候性心房細動に対する肺静脈隔離術(PVI)はシャム(偽手技)との比較において、6ヵ月時の心房細動負荷が統計学的に有意に減少し、症状と生活の質は大幅に改善した。英国・Eastbourne District General HospitalのRajdip Dulai氏らが、無作為化二重盲検比較試験「SHAM-PVI試験」の結果を報告した。心房細動の治療において、PVIには大きなプラセボ効果があるかもしれないとの懸念があるが、これまで無作為化二重盲検比較試験は実施されていなかった。JAMA誌オンライン版2024年9月2日号掲載の報告。

高齢者へのImpellaの安全性・有効性~J-PVADレジストリより/日本心臓病学会

 補助循環用ポンプカテーテルImpellaは、左室機能を補助するための経カテーテル的補助人工心臓(PVAD:percutaneous ventricular assist device)で、唯一、国内承認されているものだ。2017年の承認から7年が経過し、国内の高齢者への安全性や有効性が徐々に明らかになってきている。今回、樋口 亮介氏 (榊原記念病院 循環器内科)が「心原性ショックを合併した後期高齢者におけるImpellaの成績:J-PVADレジストリからの検討」と題し、9月27~29日に仙台で開催された第72回日本心臓病学会学術集会の高齢化社会における循環器診療に関するシンポジウムで発表した。

大動脈弁狭窄症の症例は特別扱いが必要か?(解説:山地杏平氏)

経カテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)を行う症例において、有意な冠動脈病変がみられた場合、経皮的冠動脈形成術(PCI)を行うべきか否かを検討したNOTION-3試験がESC(欧州心臓病学会)で発表され、NEJM誌に同時掲載されました。TAVIが必要とされる症例の多くは80歳以上の高齢者であり、動脈硬化のリスクファクターが重なることが多いため、冠動脈病変を合併することも多くみられます。TAVIが必要な、今後の予後が限られていると予想される症例において、合併している冠動脈病変に対し積極的な侵襲的治療を行う意義があるのかが検討されました。

眼圧が基準範囲内でも高ければ高血圧発症の危険性が高くなる

 眼圧と高血圧リスクとの関連性を示すデータが報告された。眼圧は基準範囲内と判定されていても、高い場合はその後の高血圧発症リスクが高く、この関係は交絡因子を調整後にも有意だという。札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座の古橋眞人氏と田中希尚氏、佐藤達也氏、同眼科学講座の大黒浩氏と梅津新矢氏らの共同研究によるもので、詳細は「Circulation Journal」に7月24日掲載された。  眼圧が高いことは緑内障のリスク因子であり、21mmHg以上の場合に「高眼圧」と判定され緑内障の精査が行われる。一方、これまでの横断研究から、高血圧患者は眼圧が高いことが知られている。ただし縦断研究のエビデンスは少なく、現状において眼圧の高さは高血圧のリスク因子と見なされていない。そのため眼圧は短時間で非侵襲的に評価できるにもかかわらず、もっぱら緑内障の診断や管理という眼科領域でのみ測定されている。この状況を背景として古橋氏らの研究チームは、健診受診者の大規模データを用いた後方視的縦断研究によって、眼圧と高血圧リスクとの関連を検討した。