循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:10

異常降雨が全死亡リスクと関連、心血管・呼吸器疾患死亡も/BMJ

 日降雨量の強度はさまざまな健康に影響を及ぼしており、異常降雨は全死因死亡、心血管系疾患および呼吸器系疾患による死亡の相対リスク上昇と関連していた。また、その関連は、地域の気候や都市インフラによって異なっていた。ドイツ・German Research Center for Environmental HealthのCheng He氏らが、日降雨量(強度、期間、頻度)の特性と死亡との関連について解析し、報告した。気候変動により、短期的な降雨現象の頻度と深刻さが増している。降雨に関連する健康リスクに関する研究は、主に感染症と暴風雨に焦点を当てており、心血管系や呼吸器系の健康への影響、降雨強度の変化がこれらの状態にどのような影響を与えるかなど、より広範な影響は知られていなかった。BMJ誌2024年10月9日号掲載の報告。

糖尿病、脳卒中合併高血圧でも積極的降圧が有効―とはいうが、COVID-19ロックダウン下の中国で大規模臨床試験を強行したことに驚き(解説:桑島巌氏)

糖尿病や脳卒中既往を有する高血圧患者では、収縮期血圧の降圧目標値を140mmHg以下とするよりも120mmHg以下としたほうが心血管合併症の予防効果が有意に大きい、という中国で実施された大規模臨床試験の結果である。本試験の結果は、2015年に発表された米国のSPRINT試験に規模や目的などが似たプロトコールであり、結果としての積極的降圧群が心血管死を有意に抑制した点でも類似している。大きな違いは、SPRINTでは糖尿病症例や脳卒中既往例を除外しているのに対し、本試験ではこれらの疾患を合併した症例でも積極的降圧が有用であるとの結論を導いている点である。

重症の新型コロナ感染者の心臓リスクは心疾患既往者のリスクと同程度

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心筋梗塞や脳卒中、全死亡などの主要心血管イベント(MACE)リスクを高め、その程度はCOVID-19に罹患していないが心疾患の既往歴がある人のリスクとほぼ同程度であることが、米クリーブランドクリニック・ラーナー研究所心血管代謝学部長のStanley Hazen氏らによる新たな研究から明らかになった。この研究ではまた、重症度にかかわらず、COVID-19罹患は、その後3年間のMACEリスクを2倍に高めることも示されたという。この研究結果は、「Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology」に10月9日掲載された。  Hazen氏は、「この研究結果から、COVID-19は上気道感染症である一方で、さまざまな健康リスクを伴う疾患であり、心血管疾患の予防に関する計画や目標を策定する際には、COVID-19の既往歴を考慮すべきことを強く示したものだ」と述べている。

幸福感が脳卒中や心筋梗塞からあなたを守る

 幸福感が高い人ほど、脳卒中や心筋梗塞のリスクが低いことを示唆するデータが報告された。中国科学技術大学脳卒中センターのWen Sun氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association」に9月18日掲載された。  論文の上席著者であるSun氏は、「われわれの研究結果は、人々の精神的な健康を高めることが心臓や脳の病気の予防に不可欠な要素であることを意味しており、健康管理への総合的なアプローチの重要性を支持するものと言える」と述べている。さらに同氏は、「医療専門家は、患者の幸福を高める効果的な方法として、習慣的な身体活動、社会活動、ストレス管理テクニックを推奨するなど、生活満足度と幸福感を向上させる戦略を、日常のケアの一部として含めることを検討する必要があるのではないか」とも付け加えている。

新規3剤配合降圧薬GMRx2、2剤併用より有効/Lancet

 テルミサルタン、アムロジピン、インダパミドの新規3剤配合降圧薬GMRx2は、2剤併用薬と比較して臨床的に意義のある降圧をもたらし、忍容性も良好であった。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のAnthony Rodgers氏らが、オーストラリア、チェコ、ニュージーランド、ポーランド、スリランカ、英国および米国の83施設で実施した無作為化二重盲検実薬対照比較試験の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「GMRx2は血圧管理の新たな治療選択肢であり、臨床診療における血圧コントロールの大きな改善をもたらす可能性がある」とまとめている。Lancet誌2024年10月19日号掲載の報告。

心不全への五苓散、有効性は?

 本邦では、心不全患者に五苓散が用いられることがあるが、そのエビデンスは症例報告などに限られている。そこで、磯貝 俊明氏(東京大学大学院医学系研究科 ヘルスサービスリサーチ講座/東京都立多摩総合医療センター)らの研究グループは、DPCデータを用いた後ろ向き研究により、心不全に対する標準治療への五苓散併用の有用性を検討した。その結果、五苓散を併用しても1年以内の心不全による再入院リスクは低下しなかったが、腎疾患を有する患者では、再入院リスクが低下することが示唆された。Journal of Cardiology誌オンライン版2024年9月26日号掲載の報告。  本研究は、日本全国の急性期病院から収集されたDPCデータを用いて実施した。対象は、2016年4月~2022年3月の期間に心不全により初回入院し、心不全に対する標準治療を受けた後に退院した患者43万1,393例とした。対象患者を退院時の薬物療法に基づき、標準治療に五苓散を併用した群(併用群)と標準治療のみの群(非併用群)に分類し、1対4の傾向スコアマッチングを行った。主要評価項目は、1年以内の心不全による再入院とし、主要な副次評価項目は、1年以内の心不全による再入院と再入院中(入院理由は問わない)の死亡の複合とした。

携帯電話の頻用で、CVDリスクが高まる

 携帯電話を頻用することで睡眠障害と心理的ストレスが高まり、心血管疾患(CVD)リスク増加につながる可能性があることが、新たな研究で示された。中国・広州の国立腎臓病臨床研究センターのYanjun Zhang氏らによる本研究は、The Canadian Journal of Cardiology誌オンライン版2024年7月22日号に掲載された。  研究者らは50万例以上が参加する大規模コホートである英国バイオバンクのデータを用い、CVDの既往歴のない44万4,027例を対象とした。携帯電話の定期的な使用は、少なくとも週1回の通話・受信と定義した。携帯電話の使用時間は、過去3ヵ月間の週平均(5分未満、5〜29分、30〜59分、1〜3時間、4〜6時間、6時間以上)を自己申告によって得た。主要評価項目は新規CVD(冠動脈性心疾患[CHD]、心房細動[AF]、心不全[HF]の複合)発症、副次評価項目は新規脳卒中、個別のCHD、AF、HF発症、および頸動脈内膜中膜厚(cIMT)発症 だった。

降圧薬を減らすと認知機能の低下が抑制される!?

 中年期の高血圧は認知機能低下のリスクであるという報告があるが、日常生活動作(ADL)が低下している高齢者では血圧が高いほうが認知機能の低下が小さいという報告もある。このように、高齢者における降圧薬と認知機能の関係は複雑である。そこで、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のBocheng Jing氏らの研究グループは、長期介護施設に入居する65歳以上を対象として、target trial emulationの手法を用いた後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、降圧薬の減薬により認知機能の低下が抑制されることが示唆された。本研究結果は、JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年9月23日号で報告された。

ついに始まったTAV in TAV、見えてきた課題と新アプリの役割/日本心不全学会

 大動脈弁狭窄症(AS)の非侵襲的治療としてカテーテル大動脈弁植え込み術(TAVI)が日本で使用されるようになり、今年で11年目を迎える。従来TAVIの適応は80歳以上の高齢者や、バイパス術などの開胸術の既往を有するなどの高リスク症例が対象であったが、低リスク症例への適応拡大や世界的に平均寿命が延伸する昨今、弁機能不全を呈して再治療を必要とする患者が増加傾向にある。2023年には再治療の選択肢として本邦でもSAPIEN3(以下、S3)によるTAV in TAV(現在はS3 in S3に限定)が承認されたことで、TAV in TAVの課題理解は急務とも言える。一方で、外科的大動脈弁置換術(SAVR)の時点でも、将来のTAV in SAVの可能性を踏まえた弁選択が問われるところである。

1次予防のICD装着患者に抗頻拍ペーシングは有効/JAMA

 近年、植込み型除細動器(ICD)の新たなプログラミング・ガイドラインが策定され、ICDの新技術の開発が進んでいるため、1次予防のICD装着患者における心室頻拍(VT)を停止させる方法としての抗頻拍ペーシング(ATP)の再評価が求められている。米国・ロチェスター大学のClaudio Schuger氏らAPPRAISE ATP Investigatorsは「APPRAISE ATP試験」において、1次予防として最新の不整脈検出プログラムを使用したICDを装着した患者では、電気ショックによる治療のみを行う方法と比較してショック作動の前にATPを1回行うアプローチは、全原因による初回ショック作動までの時間の相対リスクを有意に減少させ、適切なショック作動や不適切なショック作動が発生するまでの時間を改善することを示した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年10月3日号に掲載された。