循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:27

重症コロナ患者に対するスタチンとビタミンCの治療効果、対照的な結果に

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者を対象に、広く使用されている安価なスタチン系薬のシンバスタチンとビタミンCのそれぞれの有効性を調べた2件の臨床試験で、大きく異なる結果が示された。これらの試験は感染症の患者を対象とした進行中の国際共同研究「REMAP-CAP(Randomised, Embedded, Multi-factorial, Adaptive Platform Trial for Community-Acquired Pneumonia)」の一環で実施され、スタチン系薬に関する試験の詳細は「The New England Journal of Medicine(NEJM)」、ビタミンCに関する試験の詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」にいずれも10月25日掲載されるとともに、欧州集中治療医学会(ESICM 2023、10月21~25日、イタリア・ミラノ)でも発表された。

日本人統合失調症患者の院内死亡率と心血管治療との関連性

 統合失調症は、心血管疾患(CVD)リスクと関連しており、統合失調症患者では、CVDに対する次善治療が必要となるケースも少なくない。しかし、心不全(HF)により入院した統合失調症患者の院内予後およびケアの質に関する情報は限られている。京都府立医科大学の西 真宏氏らは、統合失調症患者の院内死亡率および心不全で入院した患者の心血管治療との関連を調査した。その結果から、統合失調症は心不全により入院した非高齢患者において院内死亡のリスク因子であり、統合失調症患者に対する心血管治療薬の処方率が低いことが明らかとなった。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌2023年10月18日号の報告。

アルコール摂取が心臓などの異所性脂肪と関連

 2杯目のアルコールに手を出す前に、新たに報告された研究結果について、少し考えてみた方が良いかもしれない。飲酒量が多い人ほど、心臓の周りの脂肪蓄積が多いという。米ウェイクフォレスト大学のRichard Kazibwe氏らによる研究の結果であり、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に9月8日掲載された。同氏は、「このような心臓への異所性脂肪は、成人の主な死亡原因である冠動脈性心疾患だけでなく、心不全や心房細動などの心臓病のリスク上昇と関連している」と話している。  エネルギーの貯蔵庫である脂肪は、通常であれば皮下脂肪を中心とする脂肪組織に蓄積される。しかし、食べ過ぎや運動不足が続いていると、内臓周囲や筋肉、肝臓など、本来は脂肪がたまりにくい所にも脂肪が蓄積されるようになる。そのような脂肪は「異所性脂肪」と呼ばれる。アルコールも異所性脂肪の蓄積を増やすリスク因子の一つである可能性があるが、これまでのところ飲酒量と異所性脂肪の関連は十分検討されていない。これを背景としてKazibwe氏らは、「アテローム性動脈硬化症の多民族研究(MESA)」のデータを用いた横断研究を行った。

脂質低下療法の効果にストロングスタチン間の違いはあるのか?(解説:平山篤志氏)

動脈硬化性疾患の2次予防にLDL-コレステロール(LCL-C)低下の重要性が明らかにされているが、ガイドラインにより、LDL-Cの管理目標値を達成するアプローチ(Treat to Target)と目標値を設定せず病態に応じたスタチンを投与するアプローチ(Fire and Forget)がある。韓国で行われたLODESTAR試験は、この2種のアプローチでOutcomeが異なるかを検討した試験で、すでに報告されたように管理目標値を達成できれば両者に優劣はなかった。本試験ではさらに、エントリーされた患者はTreat to Target群とFire and Forget群に分けられると同時に、2種のストロングスタチン、すなわちロスバスタチン群とアトルバスタチン群に割り付けられ、今回はスタチンの相違についての検討が報告された。

心不全患者における前立腺肥大症・前立腺がんが増加~日本のリアルワールドデータ

 前立腺肥大症および前立腺がんは心血管疾患リスクを上昇させる可能性がある。しかし、心血管疾患患者における前立腺肥大症や前立腺がんの有病率はわかっていない。今回、佐賀大学の兼田 浩平氏らが全国規模のリアルワールドデータで調査したところ、心血管疾患、とくに心不全による入院患者において、前立腺肥大症・前立腺がんの有病率が増加していることがわかった。Frontiers in Cardiovascular Medicine誌2023年10月19日号に掲載。

血圧の大きな変動が認知症や動脈硬化リスクを高める?

 血圧変動は認知症や心血管疾患のリスク増加を知らせるサインである可能性が、オーストラリアの研究グループによる研究で示唆された。24時間以内に、あるいは数日にわたって認められた大きな血圧変動は認知機能の低下と関連し、さらに、収縮期血圧(上の血圧)の大きな変動は動脈硬化と関連することが示されたという。南オーストラリア大学(オーストラリア)Cognitive Ageing and Impairment Neuroscience LaboratoryのDaria Gutteridge氏らによるこの研究結果は、「Cerebral Circulation - Cognition and Behavior」に9月1日掲載された。

冬季入浴での突然死、気温の影響は?/鹿児島大学

 冬季に向かい入浴する機会が増えてきている。わが国では入浴関連死が諸外国に比べて頻度が高いという報告もある。そこで、その疫学的特徴を明らかにし予防につなげるために、鹿児島大学大学院医歯学総合研究科法医学分野の勝山 碧氏らの研究グループは、鹿児島県における入浴関連死の検案記録を調査した。その結果、入浴関連死の90%以上が65歳以上の高齢者であり、16~20時と通常の入浴時間の死亡が約半数を占めていた。Scientific Reports誌2023年2月8日に掲載。

心原性ショック治療の難しさ:リスク評価と個別治療の重要性(解説:香坂俊氏)

1999年のSHOCK試験まではよかった。この試験では、心原性ショックを合併した急性心筋梗塞症例でも、72時間以内にPCI/CABGを実施したほうが、長期的な予後が改善することが初めて証明された。しかし、心原性ショックのマネージメントについては、その後20年間、長い長い停滞期を迎えることとなる:・2012年 IABP-SHOCK2:IABPの使用で予後改善せず・2017年 CULPRIT-SHOCK:多枝病変であっても責任病変のみのPCIで十分・今回(2023年) ECLS-SHOCK:PCPSの使用で予後が改善せず

STEMI、中医薬tongxinluoの上乗せで臨床転帰改善/JAMA

 中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのYuejin Yang氏らは、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)におけるガイドライン準拠治療への上乗せ補助療法として、中国伝統医薬(中医薬)のTongxinluo(複数の植物・昆虫の粉末・抽出物からなる)は30日時点および1年時点の両方の臨床アウトカムを有意に改善したことを、大規模無作為化二重盲検プラセボ対照試験「China Tongxinluo Study for Myocardial Protection in Patients With Acute Myocardial Infarction(CTS-AMI)試験」の結果で報告した。Tongxinluoは有効成分と正確な作用機序は不明なままだが、潜在的に心臓を保護する作用があることが示唆されている。中国では1996年に最初に狭心症と虚血性脳卒中について承認されており、心筋梗塞についてはin vitro試験、動物実験および小規模のヒト試験で有望であることが示されていた。しかし、これまで大規模無作為化試験では厳密には評価されていなかった。JAMA誌2023年10月24・31日合併号掲載の報告。

STEMI-PCIへの長期的有効性、BP-SES vs. DP-EES/Lancet

 初回経皮的冠動脈インターベンション(プライマリPCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、生分解性ポリマー・シロリムス溶出ステント(BP-SES)は耐久性ポリマー・エベロリムス溶出ステント(DP-EES)と比較して、5年の時点での標的病変不全の発生が少なく、この差の要因は虚血による標的病変の再血行再建のリスクがBP-SESで数値上は低いためであったことが、スイス・ジュネーブ大学病院のJuan F. Iglesias氏らが実施した「BIOSTEMI ES試験」で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2023年10月25日号で報告された。  BIOSTEMI ES試験は、STEMI患者に対するプライマリPCIにおけるBP-SES(Orsiro、Biotronik製)とDP-EES(Xience Prime/Xpedition、Abbott Vascular製)の有用性を比較した前向き単盲検無作為化優越性試験「BIOSTEMI試験」の、医師主導型延長試験である(Biotronikの助成を受けた)。BIOSTEMI試験では、2016年4月~2018年3月にスイスの10施設で患者の無作為化を行った。