糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:16

CRP・LDL・リポ蛋白(a)測定、30年後のCVDを予測/NEJM

 健康な米国人女性の高感度C反応性蛋白(CRP)値、LDLコレステロール値、リポ蛋白(a)値の単回組み合わせ測定が、その後30年間の心血管イベントの発症を予測したことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のPaul M. Ridker氏らによる検討で示された。高感度CRP値、LDLコレステロール値、リポ蛋白(a)値は、5年・10年の心血管リスクの予測に寄与し、薬理学的介入法を明確にすることが知られている。より若い時期での介入はリスク軽減にとって重要となるため、女性の長期にわたる心血管リスクを予測するこれらのバイオマーカーの有用性について、さらなる情報が必要とされていた。NEJM誌オンライン版2024年8月31日号掲載の報告。

体重増加による血管への悪影響、年齢で異なる

 歳とともに体重が増えることによる血管への悪影響は60歳未満で顕著であり、60歳を超えると有意なリスク因子でなくなる可能性を示唆するデータが報告された。名古屋大学大学院医学系研究科産婦人科の田野翔氏、小谷友美氏らの研究結果であり、詳細は「Preventive Medicine Reports」7月号に掲載された。  BMIで評価される体重の増加が、動脈硬化性疾患のリスク因子であることは広く知られている。しかし、体重増加の影響力は人によって異なり、体重管理により大きなメリットを得られる集団の特徴は明らかでない。田野氏らは、動脈硬化の指標である心臓足首血管指数(CAVI)とBMIの変化との関連を検討することで、体重増加の影響が大きい集団の特定を試みた。

人間なら死んでしまうほどの高血糖にコウモリはどう対応している?

 コウモリの中には、人間なら死に至るほどの高血糖状態で生存している種がいる。これは、コウモリがどんな環境でも生き延びられるように適応してきた結果と考えられ、このような変化は糖尿病治療に役立つ可能性があるという。米ストワーズ医学研究所のJasmin Camacho氏らの研究の結果であり、詳細は「Nature Ecology & Evolution」に8月28日掲載された。同氏は、「ある種のコウモリの血糖値が、自然界でこれまで見られた中で最も高いことが分かった。その血糖値は哺乳類にとっては致命的で昏睡を引き起こすレベルだ。われわれは、これまであり得るとは思いもよらなかった事実を目にしている」と語っている。

セマグルチドを使用しても自殺リスクは上昇せず

 肥満症治療薬であるGLP-1受容体作動薬のセマグルチドの人気が急上昇する一方で、その潜在的な副作用に対する懸念も高まりを見せている。しかし、新たな研究により、そのような懸念の一つが払拭された。米ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院ペン自殺予防センター所長のGregory Brown氏らによる研究で、セマグルチドの使用により抑うつ症状や自殺念慮、自殺行動のリスクは増大しないことが示されたのだ。セマグルチドを有効成分とするオゼンピックやウゴービを製造するノボ ノルディスク社の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「JAMA Internal Medicine」に9月3日掲載された。  2型糖尿病治療薬として開発されたセマグルチドは、臨床試験で肥満症治療薬としての有効性が明らかにされて以降、大きな注目を集め、今や医師が患者に週1回のセマグルチドの皮下注射を処方することは珍しいことではなくなっている。実際に、2023年には500万人もの米国人がセマグルチドを処方されており、そのような人の10人に4人は体重管理のために同薬を使用しているという。

米国の2型糖尿病有病率が過去10年で2割近く上昇

 米国では過去10年間で2型糖尿病有病率が約20%上昇したとする論文が、「Diabetes, Obesity and Metabolism」に7月18日掲載された。論文の筆頭著者である、米ジョージア大学のSulakshan Neupane氏は同大学発のリリースの中で、「米国では糖尿病患者数が日々増加していて、今後数年間でさらに増加するだろう。糖尿病のために発生する経済的負担は、直接的な医療費のほかに生産性の低下などの間接的なものも含めれば、約4120億ドルに上る。既に莫大な額だが、糖尿病患者の増加を背景に、今後さらに増大するだろう」との予測を述べている。

IGTからの糖尿病発症を4年防げば長期予後が改善する

 耐糖能異常(IGT)該当者が食事・運動療法によって糖尿病未発症の状態を4年間維持できれば、長期予後が改善することを示すデータが報告された。ただし、未発症期間が4年よりも短い場合、この効果は得られないという。中国医学科学院・北京協和医学院(中国)のXin Qian氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Medicine」に7月9日掲載された。  IGTなどの糖尿病予備群の状態から生活習慣を改善し糖尿病発症を防ぐことで、将来の合併症リスクが低下することは、既に複数の研究によって示されている。しかし、糖尿病発症を何年先延ばしにすればそのような効果を期待できるのかは、これまで明らかにされていない。そこでQian氏らは、中国・大慶市(Da Qing)在住のIGT該当者に対する6年間の食事・運動介入による糖尿病抑制効果を検討した「大慶糖尿病予防研究(DQDPS)」のデータを事後解析し、この点を検討した。

SGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬、食事や体重の変化の違い

 2型糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬によるエネルギー摂取量や糖尿病関連指標に対する影響の違いは不明である。今回、奈良県立医科大学附属病院臨床研究センターの五十川 雅裕氏らがカナグリフロジンとテネリグリプチンによるエネルギー摂取量と体重の変化を比較した結果、エネルギー摂取量への影響は逆で、体重についてはカナグリフロジンでのみ有意に減少した。BMC Endocrine Disorders誌2024年8月19日号に掲載。

降圧薬の服用タイミング、5試験のメタ解析結果/ESC2024

 8月30日~9月2日に英国・ロンドンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2024(ESC2024、欧州心臓病学会)のホットラインセッションで、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のRicky Turgeon氏が降圧薬の服用タイミングに関する試験のメタ解析結果を報告し、服用タイミングによって主要な心血管イベント、死亡の発生率や安全性に差はみられなかったことを明らかにした。

セマグルチド、心不全で過体重/肥満ASCVDのMACE低下/Lancet

 アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)で過体重または肥満の患者において、GLP-1受容体作動薬セマグルチドはプラセボと比較し、心不全の有無やそのサブタイプにかかわらず、主要有害心血管イベント(MACE)と心不全複合エンドポイントの発生を減少させることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJohn Deanfield氏らSELECT Trial Investigatorsが実施した「SELECT試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年8月24日号に掲載された。  SELECT試験は、41ヵ国804施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2018年10月~2021年3月に参加者の無作為化を行った(Novo Nordiskの助成を受けた)。

イモガイの毒が糖尿病治療につながる可能性

 巻貝の一種で、地球上で最も有毒な生物の一つである「イモガイ」の毒素が、糖尿病や内分泌疾患の治療に役立つ可能性のあることが新たな研究で示された。イモガイの毒素である「コンソマチン」が、血糖値やホルモンの分泌を調節するヒトのホルモンである「ソマトスタチン」に似た働きをするのだという。米ユタ大学のHo Yan Yeung氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Communications」に8月20日掲載された。論文の筆頭著者であるYeung氏は、「イモガイはまるで優れた化学者のようだ」と、冗談交じりに語っている。