GLP-1RAによる肥満治療が食品ロスを増やしている

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/12/24

 

 減量目的で使用されているGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が、食品の廃棄を増やしているとする、米オハイオ州立大学のBrian Roe氏と同パデュー大学のJamil Mansouri氏による論文が、「Nutrients」に9月27日掲載された。このような問題が示された一方で、GLP-1RAによる減量を開始後に、人々が摂取する食品が健康的なものにシフトする傾向も認められたという。

 この研究では、GLP-1RAの新規使用者505人を対象に、食品廃棄状況の調査を行った。その結果、GLP-1RAの使用を開始後に「食べ物を無駄にする量が増えたか」という問いかけに否定した人が60.8%(強い不同意が26.7%、やや不同意が34.1%)いた一方で、同意した人が25.3%(強い同意が6.7%、やや同意が18.6%)を占めていた。ただし、GLP-1RAの使用開始から時間がたつほど食品の廃棄が減る傾向も認められた。

 この結果についてRoe氏は、「GLP-1RA使用開始後に増加した食品廃棄が、薬剤使用の影響に患者が慣れるにつれて減るという事実は、この問題に対する簡単な解決策が存在する可能性を示唆している。つまり、GLP-1RAを新たに使い始める人たちに対してあらかじめ、食生活が変化するために食品廃棄が増加する可能性があることをアドバイスしておけば、使用開始後初期の食品廃棄を減らせ、出費も抑えられるだろう」と述べている。

 GLP-1RAは、消化管ホルモンに作用して血糖値を下げるほかに、胃の内容物の排出を遅らせたり、脳に満腹感を伝えたりする働きを持つ。研究グループによると、米国では2024年春の時点で成人の6%がGLP-1RAを使用しているという。本調査の回答者の中で、GLP-1RAを1年以上継続使用していた人の減量幅は約20%だった。ただし、1年以上継続使用していたのは全体の4分の1程度だった。

 調査データを詳しく解析した結果、同薬の使用に伴う吐き気が、人々が食べ物を廃棄する主な原因となっていることが示された。ただしそればかりでなく、GLP-1RA使用開始後に、人々が特定の食べ物をあまり好まなくなる傾向のあることも分かった。具体的には、GLP-1RA使用開始後は、アルコール、パスタなどの炭水化物、揚げ物、菓子、乳製品を避け、代わりに野菜、タンパク質食品、魚、健康的な脂質を食事に取り入れるような変化が見られるという。また野菜の消費量が増え始めるとともに、通常は最も廃棄されやすい食品である野菜の廃棄量は減る傾向が見られた。

 では、GLP-1RAを使用している人に見られるこのような食習慣の変化は、食料品への出費を減らすことにつながるだろうか?

 この質問に対してRoe氏は、「おそらくそうだろう」と答え、実際にGLP-1RA使用による家計への影響を調査する研究を計画していることを明らかにした。また同氏は大学発のリリースの中で、「これらの薬剤を使用している人は、おそらく食費が減るだろう。その食費の削減効果がGLP-1RAの薬剤費によって相殺されてしまう可能性については、現時点では何とも言えない」と述べている。

[2024年11月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら