糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:62

新世代ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneは2型糖尿病性腎臓病において心・腎イベントを軽減する(FIGARO-DKD研究)(解説:栗山哲氏)

心・腎臓障害の一因としてミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰発現が知られている。MR拮抗薬(MRA)が心血管系イベントを抑制し、生命予後を改善するとのエビデンスは、RALES(1999年、スピロノラクトン)やEPHESUS(2003年、エプレレノン)において示されている。そのため、実臨床においてもMRAは慢性心不全や高血圧症に標準的治療として適応症をとっている。2型糖尿病は、長期に観察すると高頻度(約40%)に腎障害(Diabetic Kidney Disease:DKD)を合併し、生命予後を規定する。DKDに対しては、ACE阻害薬やARBなどのRAS阻害薬が第一選択であるが、この根拠はLewis研究、MARVAL、RENAAL、IDNT、IRMA2など、多くの検証により裏付けされている。

イメグリミンが2型糖尿病治療の新薬として発売/大日本住友製薬・POXEL

 POXEL社および提携先の大日本住友製薬 株式会社は、2型糖尿病を適応症とする治療薬イメグリミン塩酸塩(商品名:ツイミーグ錠 500mg)を2021年9月16日に発売した。  イメグリミンは、2型糖尿病を治療するための、独自の2つの作用機序を有するファーストインクラスの薬剤。単剤および他の血糖降下療法レジメンへの追加療法として承認されている。 両社が共同で実施した “TIMES”(Trials of IMeglimin for Efficacy and Safety)プログラムを含む多数の前臨床試験および臨床試験の良好な結果に基づいて、今年6月に厚生労働省から承認されたことを受け 、今回の発売となった。

新世代MRAのfinerenone、DKDの心血管リスク減/NEJM

 2型糖尿病を合併する幅広い重症度の慢性腎臓病(CKD)患者の治療において、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneはプラセボと比較して、心血管死や非致死的心筋梗塞などで構成される心血管アウトカムを改善し、有害事象の頻度は同程度であることが、米国・ミシガン大学医学大学院のBertram Pitt氏らが実施した「FIGARO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月28日号で報告された。  本研究は、48ヵ国の施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化イベント主導型第III相試験であり、2015年9月~2018年10月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(Bayerの助成による)。

エンパグリフロジン、糖尿病の有無を問わずHFpEFに有効/NEJM

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、糖尿病の有無を問わず左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)患者の心血管死または心不全による入院の複合リスクを有意に低下させることが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のStefan D. Anker氏らが行った、世界23ヵ国622施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III試験「EMPEROR-Preserved試験」の結果、示された。SGLT2阻害薬は、左室駆出率が低下した心不全患者の心不全による入院リスクを低下させるが、HFpEF患者における有効性については不明であった。NEJM誌オンライン版2021年8月27日号掲載の報告。

米国の10代で糖尿病の有病率が増加/JAMA

 米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)のJean M. Lawrence氏らSEARCH for Diabetes in Youth Studyの研究グループは、2001~17年に、米国の20歳未満における糖尿病の推定有病率がどう推移したかを調査した。その結果、この16年間に19歳以下では1型糖尿病の有病率が1,000人当たり1.48から2.15へ、10~19歳では2型糖尿病の有病率が1,000人当たり0.34から0.67へと、それぞれ統計学的に有意に増加したことが明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌2021年8月24・31日号で報告された。

地球温暖化により増加している死亡とは?(解説:有馬久富氏)

疾患の発生には季節変動があることが知られている。最近も滋賀県全体で行なっている脳卒中登録事業より、脳卒中が気温の低い冬に増加することが報告されている(文献1)。逆に気温の高い夏に増加する疾患もある。このように、寒い気候も暑い気候も特定の疾患の発生に影響を与えうる。Global Burden of Disease Studyの成績と気象データを結びつけて、寒い気候と暑い気候が死亡に及ぼす影響を検討した結果がLancet誌に掲載された(文献2)。その結果は、寒い気候と暑い気候により、世界で毎年約170万人が死亡しているというものであった。

異常気温、世界中で死亡リスクに影響/Lancet

 米国・ワシントン大学のKatrin G Burkart氏らは、非最適気温への曝露による世界的・地域的負担の推定を目的に、欧州中期気象予報センター(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts:ECMWF)が作成したERA5再解析データセットから得られた気温推定値と死亡との関連について解析。異常低温や異常高温への曝露は多様な死因による死亡リスクに影響し、ほとんどの地域では低温の影響が大きいが、気温が高い地域では低温の影響をはるかに上回る高温の影響がみられることを明らかにした。著者は、「高温リスクの曝露が着実に増加していることは、健康への懸念が高まっている」とまとめている。気温の高低と死亡率および罹患率の増加との関連はこれまでにも報告されているが、疾病負担の包括的な評価は行われていなかった。Lancet誌2021年8月21日号掲載の報告。

COVID-19重症化リスク因子ごとの致死率、年代別では?/厚労省アドバイザリーボード

 COVID-19の重症化リスク因子ごとの致死率についてHER-SYSデータを集計し年代別に解析したところ、どの年代でも慢性腎臓病が独立したリスク因子として示された。8月25日に開催された「第49回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード」(厚生労働省に対し、新型コロナウイルス感染症対策推進に必要となる医療・公衆衛生分野の専門的・技術的な助言を行うもの)の資料として報告された。  本結果は、COVID-19重症化リスク因子(慢性閉塞性肺疾患、糖尿病、脂質異常症、高血圧症、慢性腎臓病、悪性腫瘍、肥満、喫煙、免疫抑制)を保有するCOVID-19患者の致死率について、2021年4月1日~6月30日(発生届ベース)のHER-SYSデータを集計し、年齢階級別(65歳以上、50~64歳、40~49歳)に解析したもの。

急性肝性ポルフィリン症治療薬ギボシランナトリウムを発売/アルナイラムジャパン

 アルナイラムジャパン株式会社は、急性肝性ポルフィリン症(AHP)の治療薬としてギボシランナトリウム(商品名:ギブラーリ皮下注)189mgを8月30日に発売した。本治療薬は、わが国における2成分目のRNA干渉(RNAi)治療薬で、同社が国内で上市・販売するパチシランナトリウム(同:オンパットロ)に続く、2番目の製品となる。  急性肝性ポルフィリン症は、遺伝子変異により肝臓内のヘム産生に必要な特定の酵素が欠如することで生じ、これによりヘム生成の途中段階で作られる神経毒性を持つ物質(ポルフィリン体など)が蓄積することで、重症かつ原因不明の腹痛、嘔吐および痙攣などの急性かつ消耗性の発作を特徴とする、遺伝性のまれな代謝性疾患。20~30代の女性に多く、発作中に麻痺や呼吸停止を引き起こす可能性もあることから、生命を脅かす危険もある。また、多くの患者で発作と発作の間も持続する疼痛などの持続症状を伴い、日常機能や生活の質(QOL)に悪影響を及ぼすとされている。急性肝性ポルフィリン症はその症状などから、婦人科疾患、ウイルス性胃腸炎、過敏性腸症候群(IBS)、虫垂炎などの他の疾患と診断されることもあり、他の疾患と診断された症例の約1/4で、急性肝性ポルフィリン症治療には必要のない、侵襲性の高い開腹手術などの処置が行われたとする国内データも報告されている。また、確定診断までの期間が10年以上に及ぶケースもあり、鑑別の難しさが課題となっている。

ダパグリフロジン、日本で初めて慢性腎臓病に承認取得/AZ・小野

 アストラゼネカと小野薬品工業は、すでに糖尿病の薬物治療で広く使用されているアストラゼネカの選択的SGLT2阻害剤ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)について2型糖尿病合併の有無にかかわらず、わが国で初めて「慢性腎臓病(CKD)」の効能または効果の追加承認を、8月25日に取得したと発表した。  なお、今回のダパグリフロジンの承認は、第III相DAPA-CKD試験の肯定的な結果に基づき、厚生労働省に指定された優先審査に則り行われたもの。  CKDは、腎機能の低下を伴う重篤な進行性の疾患。わが国では約1,300万人が罹患していると推定されている。CKDを発症する最も一般的な原因疾患は、糖尿病、高血圧、慢性糸球体腎炎で、最も重篤な状態は末期腎不全(ESKD)と呼ばれ、腎障害および腎機能低下が進行し、血液透析や腎移植を必要とする状態となる。CKD患者の多くはESKDになる前に心血管系の原因によって死亡している。