糖尿病・代謝・内分泌科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:64

デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideの血糖降下作用および体重減少作用は基礎インスリン デグルデクより優れている(解説:住谷哲氏)

SURPASS-3はデュアルGIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideの臨床開発プログラムSURPASS seriesの一つであり、基礎インスリンであるデグルデクとのhead-to-head試験である。2018年にADA/EASDの血糖管理アルゴリズムがGLP-1受容体作動薬を最初に投与すべき注射薬として推奨するまでは、経口血糖降下薬のみで目標とする血糖コントロールが達成できない場合には基礎インスリンの投与がgold standardであった。特に持効型インスリンであるグラルギンの登場後は、BOT(basal-supported oral therapy)として広く一般臨床でも用いられるようになっている。

男性の抑うつ症状や肥満の改善に対するeHealthプログラムの影響

 肥満とうつ病は、男性において相互に関連する健康上の問題であるにもかかわらず、これらの問題を管理するためのサポートは十分に行われていない。オーストラリア・ニューカッスル大学のMyles D. Young氏らは、セルフガイドのeHealthプログラム(SHED-IT:Recharge)が過体重または肥満の改善および抑うつ症状の改善に寄与するかについて、検討を行った。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌2021年8月号の報告。

人種項目除外で、より正確な新eGFR算定式を構築/NEJM

 米国タフツ・メディカルセンターのLeseley A. Inker氏ら研究グループが、推算糸球体濾過量(eGFR)の算出に、血清クレアチニンとシスタチンCを組み込み人種項目を除外した新たなeGFR算定式を構築した。同算定式は、血清クレアチニンまたはシスタチンCのいずれかのみを用いて人種項目を除外した新eGFR算定式よりも、予測がより正確で、黒人と非黒人との差も小さかったという。従来のeGFR算定式は、黒人か否かの項目を含んでいるが、人種は社会的要素で生物学的要素ではなく、人種内の多様性を無視するとして、算定式を精査する必要性が高まっていた。NEJM誌オンライン版2021年9月23日号掲載の報告。

新世代ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneは2型糖尿病性腎臓病において心・腎イベントを軽減する(FIGARO-DKD研究)(解説:栗山哲氏)

心・腎臓障害の一因としてミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰発現が知られている。MR拮抗薬(MRA)が心血管系イベントを抑制し、生命予後を改善するとのエビデンスは、RALES(1999年、スピロノラクトン)やEPHESUS(2003年、エプレレノン)において示されている。そのため、実臨床においてもMRAは慢性心不全や高血圧症に標準的治療として適応症をとっている。2型糖尿病は、長期に観察すると高頻度(約40%)に腎障害(Diabetic Kidney Disease:DKD)を合併し、生命予後を規定する。DKDに対しては、ACE阻害薬やARBなどのRAS阻害薬が第一選択であるが、この根拠はLewis研究、MARVAL、RENAAL、IDNT、IRMA2など、多くの検証により裏付けされている。

イメグリミンが2型糖尿病治療の新薬として発売/大日本住友製薬・POXEL

 POXEL社および提携先の大日本住友製薬 株式会社は、2型糖尿病を適応症とする治療薬イメグリミン塩酸塩(商品名:ツイミーグ錠 500mg)を2021年9月16日に発売した。  イメグリミンは、2型糖尿病を治療するための、独自の2つの作用機序を有するファーストインクラスの薬剤。単剤および他の血糖降下療法レジメンへの追加療法として承認されている。 両社が共同で実施した “TIMES”(Trials of IMeglimin for Efficacy and Safety)プログラムを含む多数の前臨床試験および臨床試験の良好な結果に基づいて、今年6月に厚生労働省から承認されたことを受け 、今回の発売となった。

新世代MRAのfinerenone、DKDの心血管リスク減/NEJM

 2型糖尿病を合併する幅広い重症度の慢性腎臓病(CKD)患者の治療において、非ステロイド型選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneはプラセボと比較して、心血管死や非致死的心筋梗塞などで構成される心血管アウトカムを改善し、有害事象の頻度は同程度であることが、米国・ミシガン大学医学大学院のBertram Pitt氏らが実施した「FIGARO-DKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年8月28日号で報告された。  本研究は、48ヵ国の施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化イベント主導型第III相試験であり、2015年9月~2018年10月の期間に参加者のスクリーニングが行われた(Bayerの助成による)。

エンパグリフロジン、糖尿病の有無を問わずHFpEFに有効/NEJM

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジンは、糖尿病の有無を問わず左室駆出率が保たれた心不全(HFpEF)患者の心血管死または心不全による入院の複合リスクを有意に低下させることが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のStefan D. Anker氏らが行った、世界23ヵ国622施設で実施された国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III試験「EMPEROR-Preserved試験」の結果、示された。SGLT2阻害薬は、左室駆出率が低下した心不全患者の心不全による入院リスクを低下させるが、HFpEF患者における有効性については不明であった。NEJM誌オンライン版2021年8月27日号掲載の報告。

米国の10代で糖尿病の有病率が増加/JAMA

 米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)のJean M. Lawrence氏らSEARCH for Diabetes in Youth Studyの研究グループは、2001~17年に、米国の20歳未満における糖尿病の推定有病率がどう推移したかを調査した。その結果、この16年間に19歳以下では1型糖尿病の有病率が1,000人当たり1.48から2.15へ、10~19歳では2型糖尿病の有病率が1,000人当たり0.34から0.67へと、それぞれ統計学的に有意に増加したことが明らかとなった。研究の詳細は、JAMA誌2021年8月24・31日号で報告された。

地球温暖化により増加している死亡とは?(解説:有馬久富氏)

疾患の発生には季節変動があることが知られている。最近も滋賀県全体で行なっている脳卒中登録事業より、脳卒中が気温の低い冬に増加することが報告されている(文献1)。逆に気温の高い夏に増加する疾患もある。このように、寒い気候も暑い気候も特定の疾患の発生に影響を与えうる。Global Burden of Disease Studyの成績と気象データを結びつけて、寒い気候と暑い気候が死亡に及ぼす影響を検討した結果がLancet誌に掲載された(文献2)。その結果は、寒い気候と暑い気候により、世界で毎年約170万人が死亡しているというものであった。

異常気温、世界中で死亡リスクに影響/Lancet

 米国・ワシントン大学のKatrin G Burkart氏らは、非最適気温への曝露による世界的・地域的負担の推定を目的に、欧州中期気象予報センター(European Centre for Medium-Range Weather Forecasts:ECMWF)が作成したERA5再解析データセットから得られた気温推定値と死亡との関連について解析。異常低温や異常高温への曝露は多様な死因による死亡リスクに影響し、ほとんどの地域では低温の影響が大きいが、気温が高い地域では低温の影響をはるかに上回る高温の影響がみられることを明らかにした。著者は、「高温リスクの曝露が着実に増加していることは、健康への懸念が高まっている」とまとめている。気温の高低と死亡率および罹患率の増加との関連はこれまでにも報告されているが、疾病負担の包括的な評価は行われていなかった。Lancet誌2021年8月21日号掲載の報告。