感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:117

まれだが致死的な血栓症への対応・事前説明はきわめて難しい(AZワクチン)(解説:後藤信哉氏)-1407

新型コロナウイルス対策としてワクチンの普及は切り札になれると期待している。ワクチンに限らず、すべての医療介入にはメリットとデメリットがある。新型コロナウイルスワクチンの場合には、ワクチン接種によりウイルス感染の広がりを阻止できるとの社会的期待がある。しかし、個別症例にはデメリットもある。本研究は医療従事者における13万例の接種に合併した5例の血栓症の報告である。対象となった医療従事者は32~54歳で特段の疾病の既往はなかった。いずれの症例も接種後7~10日にイベントが起こっている。アナフィラキシーは接種現場で起こる。対応の準備もできる。接種後7~10日に頭痛、背部痛、腹痛などにて救急搬送されている。いずれの症例も静脈血栓が確認されている。血栓の形成部位は脳静脈洞など普通遭遇しない部位である。本研究では臨床イベントのみでなく血液検査を詳細に施行している。いずれの症例もHIT抗体と呼ばれる血小板第4因子・ポリアニオンの高い抗体価を呈した。著者は、これらの症例をワクチンによる免疫性の血小板減少・血栓症としての自発的な(ヘパリンを使用していないとの意味)ヘパリン惹起血小板減少・血栓症(HITT:heparin-induced thrombocytopenia・thrombosis)としている。HITは時に致死的な病態である。ワクチンにまったくの健常者に、ワクチン接種の1~2週に発症する。

COVID-19入院患者へのトシリズマブを緊急使用許可/FDA

 中外製薬は6月25日、同社創製の関節リウマチ治療薬トシリズマブ(商品名:アクテムラ)について、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬として米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用を許可したと発表した。コルチコステロイドの全身投与を受けており、酸素補給、非侵襲的もしくは侵襲的な人工呼吸、またはECMOが必要な入院中の成人および2歳以上小児がその対象となる。  今回の緊急使用許可は、4つのランダム化比較試験におけるCOVID-19入院患者、計5,500例超の成績に基づいており、酸素補給または呼吸補助を必要とするコルチコステロイド投与中の患者の転帰を改善する可能性があることが示唆された。

妊婦、子供は?各学会のワクチン接種に対する声明まとめ

 新型コロナワクチンの接種が進む中、疾患等を理由として接種に対して不安を持つ人を対象に、各学会が声明を出している。主だったものを下記にまとめた。 ■日本感染症学会 「COVID-19ワクチンに関する提言(第3版)」 対象:全般 要旨:ワクチンの開発状況、作用機序、有効性、安全性等の基本情報 ■日本小児科学会 「新型コロナワクチン~子どもならびに子どもに接する成人への接種に対する考え方~」 対象:子供(12歳以上) 要旨:まずは子どもの周囲への成人の接種を進める。そのうえで、12歳以上の子供へのワクチン接種は本人と養育者が十分に理解したうえで進めることが望ましく、個別接種を推奨する。

コロナワクチン後に心筋炎、CDCが接種との関連性を指摘

 米国疾病予防管理センター(CDC)は6月23日、新型コロナワクチンを接種した若年層において、心筋炎などの副反応と見られる症状が、ワクチン有害事象報告システム(VAERS)に1,000件以上報告されていることを明らかにした。CDCは接種と関連している可能性を指摘し、さらなる調査を進めるとしている。ただ、これまでに投与されたワクチン総量と比しても発症はまれであり、COVID-19のリスクおよび関連合併症を考慮した上で、ワクチン接種を引き続き推奨する方針だ。

新型コロナ感染のアスリート、無症候性心筋炎に注意

 心筋炎はアスリートの突然死の主な原因であり、新型コロナウイルスが原因で発症することも示唆されている。今回、Big Ten COVID-19 Cardiac Registry InvestigatorsのメンバーであるCurt J Daniels 氏らは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したすべての米国アスリートを対象に、心臓MRI検査(CMR)を実施して心筋炎の発症有無を調べた。その結果、37例(2.3%)が臨床症状を有する心筋炎または無症候性心筋炎と診断された。今回の研究では、大学間で有病率にばらつきが見られたものの、検査プロトコルは心筋炎の検出と密接に関連していた。JAMA Cardiology誌オンライン版2021年5月27日号掲載の報告。

新型コロナ感染者の7割が症状持続:系統的レビュー

 COVID-19で長期持続する症状の頻度や種類、重症度についてはまだよくわかっていない。米国・スタンフォード大学のTahmina Nasserie氏らは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染後の持続的な症状の頻度と多様性を調べた研究の系統的レビューを実施した結果、COVID-19の症状は一般的に感染急性期が過ぎても持続し、健康関連機能とQOLに影響を与えることがわかった。少なくとも1つの持続的な症状を経験している患者の割合は72.5%(中央値)であった。JAMA Network Open誌2021年5月26日号に掲載。

新型コロナのα株、30代から重症化リスク増/BMJ

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のB.1.1.7変異株(α株[英国株]としても知られる)の感染者は、SARS-CoV-2野生株感染者と比較して、入院リスクが高く、症状もより重症となる可能性が高いことが示唆された。さらに、重症化は30歳以上に特異的な可能性も示されたという。英国・ケンブリッジ大学のTommy Nyberg氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。B.1.1.7変異株は、2020年11月に英国で発見され、野生株よりも感染力が高いため、その後は優勢な系統となった。これまで、B.1.1.7変異株は重症化しやすいことを示唆するエビデンスはあったが、死亡率との相関を示した報告は交絡因子により研究の限界があったと考えられる。BMJ誌2021年6月15日号掲載の報告。

コロナワクチンで注目される有害事象、ワクチンなしでの発生率は?/BMJ

 新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチン関連の、とくに注目される15種の有害事象(AESI)のバックグラウンド発生率を8ヵ国のデータベースを基に調べたところ、年齢や性別によりばらつきがあることが、英国・オックスフォード大学のXintong Li氏らによる検討で明らかにされた。データベース間でも差が認められたという。ワクチン有害事象のバックグラウンド率は、ワクチン接種者の間で観察された割合のベースラインコンパレータとして機能することで、ワクチンの安全性を監視するうえで歴史的に重要な役割を果たしているが、研究結果を踏まえて著者は、「バックグラウンド率をサーベイランス目的で用いる場合は、同一のデータベースを使い比較する必要性が示唆された。事前に年齢や性別による差を考慮し、階層化や標準化が必要だ」と述べている。BMJ誌2021年6月14日号掲載の報告。

小児で新型コロナが重症化する3つの因子~日本含む観察研究

 日本、中国、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、パキスタンのアジア7ヵ国における小児の新型コロナウイルス感染例の観察研究から、小児における重症化の危険因子として、1歳未満、併存疾患の存在、診察時の咳症状が特定された。シンガポール・KK Women's and Children's HospitalのJudith Ju Ming Wong氏らが報告した。The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene誌オンライン版2021年6月15日号に掲載。  7ヵ国の研究者グループは、小児のCOVID-19重症化の危険因子を特定するため、Pediatric Acute and Critical Care COVID-19 Registry of Asia(PACCOVRA)にデータ提供している病院の小児COVID-19の観察研究を実施した。主要アウトカムは、世界保健機関(WHO)の定義によるCOVID-19の重症度(軽症、中等症、重症、重篤)とした。単変量および多変量ロジスティック回帰モデルを使用し、重症/重篤なCOVID-19の危険因子を検討した。

新型コロナ抗体薬bamlanivimab、単剤投与で発症予防効果/JAMA

 介護付き有料老人ホームの入居者と職員を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「BLAZE-2試験」において、bamlanivimab単剤療法は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生を低下させることが認められた。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のMyron S. Cohen氏らが報告した。介護福祉施設でCOVID-19が発生した場合、入居者および職員をCOVID-19から守るために予防的介入が必要である。モノクローナル抗体薬のbamlanivimabは、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19発症に対し速やかな予防効果を発揮することが期待されていた。JAMA誌オンライン版2021年6月3日号掲載の報告。