感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:159

COVID-19血漿療法試験、中国103例の報告/JAMA

 重症/重篤の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の治療において、標準治療に回復期血漿療法を併用するアプローチは標準治療単独と比較して、28日以内の臨床的改善(生存退院、重症度の低減)を増加させなかったとの研究結果が、中国医学科学院のLing Li氏らによって報告された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2020年6月3日号に掲載された。回復期の患者の血漿を使用する回復期血漿療法は、これまでにもさまざまな感染症の治療に用いられており、COVID-19の治療選択肢となる可能性があるが、その使用を支持するエビデンスは十分でない。また、ドナーの選択や血漿の質の管理、レシピエントの適応などは標準化されておらず、これらについてもエビデンスに基づく根拠はないという。

COVID-19、回復期におけるうつ病と免疫反応に相関性

 これまで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染して重度の急性呼吸器症候群となった患者のうち、退院後に自己申告のうつ病とされた患者は観察されていたが、回復期からこの自己申告のうつ病が発症しているのかは不明だった。中国・深センSamii医療センター(SSMC)のBo Yuan氏らは、オンラインアンケートを利用して回復期のCOVID-19患者のメンタルヘルス状態を調べたうえで、定期的な血液および生化学データを含む患者の臨床的特徴を遡及的に分析し、うつ病と免疫反応との相関性を見た。Brain, Behavior, and Immunity誌オンライン版5月25日号掲載の報告。

acalabrutinib、新型コロナ重症例のサイトカインストーム改善/アストラゼネカ

 多施設無作為化非盲検国際共同試験のCALAVI試験において、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤acalabrutinib(国内未承認)が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症患者の炎症マーカーを低下させ、臨床転帰を改善したと示された。これを受け、アストラゼネカは2020年6月5日に本試験結果を発表。Science Immunology誌2020年6月5日号にも同時掲載された。  現在、ウイルス誘発性の過剰免疫反応(高サイトカイン血症、サイトカインストーム)がCOVID-19患者の呼吸器疾患の主な発症機序であると仮説が立てられている。そこで、本試験ではCOVID-19入院患者を対象とし、既存のベストサポーティブケアにacalabrutinibを追加した併用療法による効果について検証された。主要評価項目は治療後の生存患者数および呼吸不全を回避できた患者数。本試験は世界中で実施されており、米国、欧州、そして日本も参加している。

認知症患者におけるCOVID-19の影響

 認知症患者において、COVID-19による死亡リスクへの影響は不明である。イタリア・Istituto Clinico S.Anna HospitalのAngelo Bianchetti氏らは、COVID-19で入院した患者における認知症の有病率、臨床症状、その後のアウトカムについて評価を行った。The Journal of Nutrition, Health & Aging誌オンライン版2020年5月15日号の報告。  北イタリア・ブレシア県にある急性期病院のCOVID-19病棟にCOVID-19肺炎で入院した627例を対象に、認知症の診断、COVID-19の発症様式、病院での症状やアウトカムなどの診療記録をレトロスペクティブに分析した。

ACE2遺伝子発現の年齢依存的な増加はCOVID-19重症化と関連?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、小児では比較的重症化しにくいとされている。その要因の1つとして、小児の鼻上皮におけるアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)発現が成人より少ないことがあるかもしれない。米国・Icahn School of Medicine at Mount SinaiのSupinda Bunyavanich氏らの調査で、鼻上皮におけるACE2遺伝子発現が年齢とともに増加することが示された。JAMA誌オンライン版2020年5月20日号リサーチレターでの報告。  本研究は、2015~18年にMount Sinai Health System(ニューヨーク市)を受診した4~60歳の患者の鼻上皮を後ろ向きに調査した。サンプルは、喘息におけるバイオマーカー研究のため、喘息の有無にかかわらず収集されたもの。線形回帰モデルは、統計処理ソフトウェアR version 3.6.0(R Foundation)を使用して、ACE2遺伝子発現を100万当たりのlog2カウントで従属変数として、年齢層を独立変数として作成した。年齢層は、10歳未満(45例)、10〜17歳(185例)、18〜24歳(46例)、25歳以上(29例)の4群に分類した。

グラム陰性菌血症への抗菌薬、個別vs.7日間vs.14日間/JAMA

 合併症のないグラム陰性菌血症の成人患者において、抗菌薬の投与期間をC反応性蛋白(CRP)に基づいて個別に設定した場合および7日間固定とした場合のいずれも、30日臨床的失敗率は14日間固定に対して非劣性であることが示された。スイス・ジュネーブ大学病院のElodie von Dach氏らが、スイスの3次医療機関3施設において実施した無作為化非劣性臨床試験の結果を報告した。抗菌薬の過度の使用は抗菌薬耐性を引き起こす。グラム陰性菌血症は一般的な感染症で、十分な抗菌薬使用を必要とするが、投与期間で有効性に差があるかは十分に解明されていなかった。JAMA誌2020年6月2日号掲載の報告。

COVID-19、抗がん剤治療は死亡率に影響せず/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患したがん患者の死亡率は、主に年齢、性別、基礎疾患により上昇することが示された。また、細胞障害性抗がん剤または他の抗がん剤治療中のがん患者が、こうした積極的治療を受けていない患者と比べて、COVID-19による死亡リスクが高いというエビデンスを確認できなかったという。英国・Institute of Cancer and Genomic SciencesのLennard Y. W. Lee氏らが、UK Coronavirus Cancer Monitoring Project(UKCCMP)による前向きコホート研究の結果を報告した。がん患者、とくに全身薬物療法を受けている患者は、COVID-19による死亡リスクが高いと考えられていたが、この推測を支持する大規模な多施設共同研究のデータは乏しかった。Lancet誌オンライン版2020年5月28日号掲載の報告。

うつ病の発症、HHV-6が持つ遺伝子SITH-1が関与か:慈恵医大

 これまで、ヒト遺伝子の中にうつ病の原因となる有効な遺伝子は発見されていなかった。今回、東京慈恵会医科大学の近藤 一博氏らは、ヒトに寄生する微生物を含む遺伝子群(メタゲノム)に着目、ヒトに潜伏感染しているヒトヘルペスウイルス6B(HHV-6B)が持つ、うつ病の原因となる遺伝子SITH-1を発見したことを発表した。SITH-1は脳のストレスを亢進させることでうつ病を発症させる作用があり、うつ病と診断されない程度の軽いうつ症状にも影響していたという。iScience誌オンライン版2020年5月21日号掲載の報告。  HHV-6Bは小児期に突発性発疹として感染し、ほぼ100%のヒトが潜伏感染している。HHV-6Bは脳神経に親和性の高いウイルスで、さまざまな脳神経疾患や精神疾患との関係が予想されている。研究チームはHHV-6Bが嗅球で潜伏感染する際に発現するSITH-1遺伝子を発見、疾患との関係を調べた。

距離1m以上で感染リスク8割以上減少、マスクでも/Lancet

 ウイルス伝播の予防に、人との物理的距離(physical distance、フィジカルディスタンス)1m以上の確保、フェイスマスクおよび保護眼鏡の着用が有効であることが、カナダ・マックマスター大学のDerek K. Chu氏らによるシステマティック・レビューとメタ解析の結果、示された。解析は、6大陸・16ヵ国で行われた172件の観察研究など患者総数2万5,697例を含むデータを包含して行われ、フィジカルディスタンスが1m以上の場合、感染リスクは約82%減少、フェイスマスクの着用は約85%減少することが示されたという。COVID-19を引き起こす新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、人から人への感染が濃厚接触により拡大している。研究グループは医療機関および非医療機関(コミュニティなど)におけるウイルス伝播について、フィジカルディスタンス、フェイスマスク、保護眼鏡の影響を明らかにするため本検討を行った。Lancet誌オンライン版2020年6月1日号掲載の報告。

Withコロナの夏に5つの提言/日本感染症学会・日本救急医学会・日本臨床救急医学会・日本呼吸器学会

 本格的な夏の到来を控え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防でのマスク着用により、例年以上の熱中症被害が危惧されている。  そこで、日本救急医学会の呼びかけにより、日本感染症学会・日本救急医学会・日本臨床救急医学会・日本呼吸器学会の4学会で構成するワーキンググループが組織され、「『新型コロナウイルス 感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言』について」が発表された。  同提言では、感染対策としての換気やマスク着用の重要性、熱中症対策としてのエアコン使用やマスクを外す必要性との両立など、夏季を迎えて注意するポイントをまとめている。