中国・武漢市を中心に世界規模で広がっている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)。これまでの研究では一般集団における感染ルートの検証が行われてきたが、妊婦のデータは限定的だ。武漢大学中南医院産婦人科のHuijun Chen氏らは、新型コロナウイルス陽性と確認された妊産婦について、臨床的特徴と垂直感染の可能性について検証した。Lancet誌オンライン版2月12日版に掲載。
本研究では、2020年1月20日~31日、武漢大学中南医院に入院した患者のうち、COVID-19と診断された妊産婦9例について、臨床記録、検査結果および胸部CT画像を後ろ向きにレビューした。垂直感染を裏付ける根拠として、羊水、臍帯血、新生児の咽頭スワブおよび母乳サンプルが採取された。
主な結果は以下のとおり。
・妊産婦9例は26歳~40歳で、いずれも持病はなく、全例が妊娠第3期に帝王切開で出産した。
・全例で出生が確認され、新生児仮死は見られなかった。
・新生児9例はいずれも1分後アプガースコア(AP)が8~9、5分後APが9~10で正常だった。
・妊産婦9例中7例で発熱が見られたほか、咳(4例)、筋肉痛(3例)、咽頭痛(2例)、倦怠感(2例)といった症状が確認された。
・2月4日の段階で、妊産婦9例についてCOVID-19重症例および死亡例は確認されていない。
・9例のうち6例について、羊水、臍帯血、新生児の咽頭スワブ、および母乳サンプルのウイルス検査が行われ、すべて陰性だった。
・2月6日の段階で、新生児1例について、出生36時間後にウイルス検査で陽性反応を示した。
・ただし、本症例については出生30時間後に採取されたサンプルであるため、子宮内感染が発生したかどうかは不明である。
本研究の9例は、妊婦が感染していたCOVID-19の母子感染リスクが不明であったため、帝王切開による分娩が選択されたという。著者らは、「この9例に限っては、妊娠後期にCOVID-19を発症した妊婦からの子宮内垂直感染を直接示すエビデンスがないことを示唆している」としながらも、「経腟分娩による母子感染リスクや、母体の子宮収縮がウイルスに及ぼす影響については、さらに調査する必要がある」と述べている。
(ケアネット 鄭 優子)