感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:29

出生前母体ステロイド投与、児の重篤な感染症のリスク大/BMJ

 出生前ステロイド投与1コースが行われた母親から生まれた児は、生後12ヵ月間、重篤な感染症のリスクが有意に高いことが、台湾・長庚記念病院のTsung-Chieh Yao氏らによる全国コホート研究の結果で示された。新生児の死亡率および罹患率の減少における出生前ステロイド投与の有益性が多くの研究で報告されているが、小児の重篤な感染症に対する出生前ステロイド曝露の潜在的な有害性に関するデータは乏しく、とくに地域住民を対象とした大規模なコホートに基づく厳密なエビデンスは不足していた。著者は今回の結果について、「治療を開始する前に、出生前ステロイド投与による周産期の有益性と、まれではあるが重篤な感染症の長期的リスクについて慎重に比較検討する必要がある」とまとめている。BMJ誌2023年8月2日号掲載の報告。

あらゆる動物で新型コロナ感染が確認できる検査法を開発

 あらゆる動物種に対して使用可能な新型コロナウイルスの検査法の開発に成功したことを、米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校病理生物学分野教授のYing Fang氏らが報告した。研究グループは、「野生動物や家畜での新型コロナウイルス変異株の追跡に役立てることができる成果だ」と述べている。この研究の詳細は、「mSphere」に7月6日掲載された。  現在用いられている新型コロナウイルスの主な検査は、PCR検査と抗体検査である。PCR検査はウイルスの核酸を標的とし、採取した検体の中にウイルスが存在するかどうかを調べるものだ。これに対して抗体検査は、ウイルス曝露により産生される抗体の有無を調べるもので、一般に感染歴の有無の指標とされている。

国内コロナ入院患者の精神症状の実態―不眠やせん妄は重症度と相関

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院患者では、ほかの呼吸器疾患患者よりも精神症状発現率が高く、また一部の症状はCOVID-19重症度と相関することが明らかになった。九州大学大学院医学研究院精神病態医学の中尾智博氏らの研究によるもので、詳細は「Brain, Behavior, & Immunity - Health」5月号に掲載された。  COVID-19の後遺症、いわゆるlong COVIDでは倦怠感などの身体症状に加えて、抑うつや不安などの精神症状が高頻度に現れることが知られている。一方、COVID-19急性期の精神症状については大規模研究の報告が限られている。これを背景として中尾氏らは、福岡県内の9病院のDPC(診療報酬包括評価)データおよび精神科カルテデータを用いた解析から、COVID-19入院患者に発生する精神症状の実態の把握を試みた。

新型コロナ、住民への注意喚起のタイミングの目安を発表/厚労省

 厚生労働省は8月9日の事務連絡にて、感染拡大する新型コロナウイルス感染症の早期対応のため、各都道府県に向けて住民等に注意喚起を行う際の検討の参考となるタイミングの目安を発表した。  なお、本目安は、新型コロナ流行時において医療への負荷が主たる課題となることから、感染拡大が継続したとしても医療提供体制を確保するために設定されたものであり、感染症サーベイランスにおける感染症の流行の程度に関する注意報・警報レベルとは考え方が異なる。また、本目安は暫定的に設定されたもので、今後の流行状況等を踏まえ、変更される可能性もあるという。

わが国の平均寿命、コロナの影響などで男女とも低下/厚生労働省

 厚生労働省は、7月28日に令和4年の簡易生命表の概況を発表した。これによると男性の平均寿命は81.05歳、女性の平均寿命は87.09歳となり、前年と比較し男性は0.42年、女は0.4年下回ったほか、平均寿命の男女差は6.03年で前年より0.07年縮小した。  平均寿命の前年との差を死因別に分解すると、男性は悪性新生物(腫瘍)などの死亡率の変化が平均寿命を延ばす方向に働いていたが、男女とも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、心疾患(高血圧性を除く)、老衰などの死亡率の変化が平均寿命を縮める方向に働いていた。

迅速抗原検査での新型コロナ感染の除外には2回以上の検査が必要

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック中に、医師は患者に、自宅での迅速抗原検査で陰性の結果が出ても、48時間後に再検査するよう伝えてきたが、どうやらこの助言は正しかったようだ。新たな研究により、症状の有無にかかわらず、迅速抗原検査で新型コロナウイルス感染を除外するには、陰性判定から48時間後の再検査が必要であることが示された。米マサチューセッツ大学(UMass)チャン医科大学のCarly Herbert氏らによるこの研究の詳細は、「Annals of Internal Medicine」に7月4日掲載された。

長時間作用型の抗HIV薬は患者を問わず有効な可能性

 HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症患者では、30年近く前から、抗レトロウイルス薬の毎日の服用が、AIDS(後天性免疫不全症候群)発症を抑える上で非常に効果的な方法となっている。しかし患者の中には、薬物中毒や精神疾患などの理由で毎日の服薬が困難な者もいる。こうした中、新たな研究で、長時間作用型の抗レトロウイルス薬の注射により、ほぼ全ての患者が完全な防御を得られる可能性が示された。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)ベイエリア・エイズ研究センター(CFAR)のMonica Gandhi氏らによるこの研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に7月4日掲載された。

コロナ異種ワクチンによる追加接種を支持するエビデンス/BMJ

 オミクロン株が優勢な時期における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種では、プライマリ接種スケジュール(2回接種)や同種ブースター接種(3回)と比較して、異種ブースター接種(3回)はCOVID-19による入院や死亡の予防効果が優れていたことが、デンマーク・Statens Serum InstitutのNiklas Worm Andersson氏らの調査で明らかとなった。研究の成果は、BMJ誌2023年7月24日号に掲載された。

不要な抗菌薬処方、60歳以上の医師に多く特定の医師に集中か

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を含むウイルス感染症には、抗菌薬が無効であるにもかかわらず、抗菌薬が処方されている実態が報告されている。ただし、抗菌薬処方に関連する医師や患者の特徴については明らかになっていない。そこで、東京大学大学院医学系研究科の宮脇 敦士氏らは、本邦の一般開業医を対象としたデータベース(Japan Medical Data Survey:JAMDAS)を用いて、COVID-19の外来受診データを分析した。その結果、本邦のCOVID-19のプライマリケアにおいて、抗菌薬の処方は少数の診療所に集中していた。また、60歳以上の医師は抗菌薬の処方が多かった。本研究結果は、JAMA Network Open誌2023年7月25日号のリサーチレターで報告された。

HIV感染者からパートナーへの性感染、低ウイルス量ならほぼゼロ/Lancet

 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者では、ウイルス量が低レベル(1,000コピー/mL未満)であれば、パートナーへのHIV性感染のリスクはほぼゼロであることが、米国・Global Health Impact GroupのLaura N. Broyles氏らの調査で示された。これにより、医療資源が限られた環境でHIVと共に生きる人(people living with HIV)のウイルス量検査へのアクセスが促進される可能性があるという。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年7月23日号で報告された。  研究グループは、HIVと共に生きる人やそのパートナー、医療従事者、より広く一般の人々へのメッセージの発信にとって有益な情報を提供するために、HIVのさまざまなウイルス量におけるHIV性感染のリスクに関するエビデンスを要約する目的で、系統的レビューを行った(ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成を受けた)。