感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:31

途上国で最強、最適な治療(解説:岡慎一氏)

ケニアで行われた臨床試験である。途上国では2000年以降、非核酸系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)をKey drugとして、核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)2剤との3剤を合剤にしたGeneric薬が、治療の中心として用いられてきた。もちろん、これにより多くの命が救われた。しかし、NNRTIを中心とする治療は、治療に失敗した場合に薬剤耐性ウイルスが出やすい一方、薬の種類が少ないため、2回目以降の治療の選択肢は限られていた。その後、プロテアーゼ阻害薬(PI)がKey drugとなってから治療失敗による薬剤耐性の頻度はやや減ったが、PIは薬剤の相互作用が多く、脂質異常など副作用も多いため、すでに先進国ではあまり使用されていない。

秋接種、ファイザーとモデルナのXBB.1.5対応1価ワクチン購入合意/厚労省

 厚生労働省は7月28日、新型コロナワクチンの2023年秋開始接種に向けて、オミクロン株XBB対応1価ワクチンとして、ファイザーから2,000万回分、モデルナから500万回分を追加購入することについて、両社と合意したことを発表した。なお、必要に応じて追加購入することも合意している。  同日にファイザーが発表したプレスリリースによると、今回供給を予定しているのは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株XBB.1.5系統のスパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む1価ワクチンとなっている。本ワクチンは、同社が2023年7月7日に厚生労働省に承認事項一部変更申請を行っていた。

小学生のコロナ感染リスクに近隣の社会経済環境が関連―大阪市での研究

 自宅周辺の社会経済環境と、小学生の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染リスクとの関連が報告された。高学歴者の多い環境で暮らす小学生は感染リスクが低く、卸売・小売業の従事者が多い環境の小学生は感染リスクが高いという。同志社大学大学院スポーツ健康科学研究科の大石寛氏(大学院生)、同大学スポーツ健康科学部の石井好二郎氏らの研究の結果であり、詳細は「Children」に4月30日掲載された。  居住地域の社会経済環境とCOVID-19感染リスクとの間に有意な関連があることは、既に複数の研究から明らかになっている。ただしそれらの研究の多くは海外で行われたものであり、またCOVID-19重症化リスクの低い小児を対象とした研究は少ない。日本は子どもの相対的貧困率が高いこと、および、当初は低いとされていた子どものCOVID-19感染リスクもウイルスの変異とともにそうでなくなってきたことから、国内の子どもたちを対象とした知見が必要とされる。これを背景として石井氏らは、大阪市内の公立小学校の282校の「学区」を比較の単位とする研究を行った。なお、大阪市内には生活保護受給率が全国平均の3倍を上回る地区が複数存在している。

コロナによる医療中断で回避可能な入院リスク増/BMJ

 英国・リバプール大学のMark A. Green氏らは、同国7つの縦断研究のコホートデータを解析し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行中に医療へのアクセスが中断された人は、回避可能な入院をより多く経験していたとみられることを報告した。COVID-19流行中に医療サービスや治療へのアクセスがどの程度中断したかは、幅広い研究によって明らかとなっているが、この中断と健康への悪影響との関連を評価する研究が求められていた。著者は、「今回の調査結果は、パンデミックの短期的・長期的影響への対応や、将来のパンデミック時の治療・処置の保護のために、医療投資を増やす必要性を浮き彫りにしている」と述べている。BMJ誌2023年7月19日号掲載の報告。

亜鉛補給でコロナ死亡率低下~メタ解析

 亜鉛の補給によって、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の死亡リスクが有意に低下することが、米国・Patel College of Allopathic MedicineのSpencer Z. Rheingold氏らのメタ解析によって明らかになった。Cureus誌2023年6月10日号掲載の報告。  亜鉛は必須微量元素の1つで、炎症や感染症における免疫系の重要な調節因子であるとともに、直接的な抗ウイルス作用もあることが報告されている。COVID-19患者の予後を改善するために多くの研究グループが亜鉛補給に関する試験を実施しているが、その効果には議論の余地がある。そこで研究グループは、亜鉛を補給したCOVID-19患者と補給していないCOVID-19患者の死亡率と症状の関連についてメタ解析を行った。

コロナ再感染、高齢者よりも若年層で増加

 新型コロナウイルス感染症の流行が長期にわたり、再感染者も増えている。再感染は基礎体力が劣り、基礎疾患を持つ人が多い高齢者に多いのではと考えられるが、実際には若年・中年層の増加率が高齢者よりも高いことが明らかになった。米国疾病管理予防センター(CDC)が実施した研究結果は、Morbidity and Mortality Weekly Report(MMWR)誌2023年6月23日号に掲載された。  CDCは2021年9月5日~2022年12月31日に、米国の18の管轄区域から報告された18歳以上の成人のCOVID-19全症例、入院、死亡に占める再感染の割合を調査し、5つの期間(デルタおよびオミクロン[BA.1、BA.2、BA.4/BA.5、BQ.1/BQ.1.1]がそれぞれ優勢だった期間)と年齢層別に解析した。

XBB/XBB.1.5、ほかの変異株より再感染リスク高い

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の多様な変異の出現は、ワクチンと感染の両方による集団免疫を回避する能力の向上と関連している。米国・カリフォルニア大学バークレー校のJoseph A. Lewnard氏らの研究によると、現在主流となっているオミクロン株XBB/XBB.1.5系統は、ワクチン由来の免疫と感染由来の免疫とで回避傾向が異なり、同時期に流行しているほかの変異体と比較して、ワクチン接種回数が多い人ほど感染リスクや感染時の入院リスクが低減する一方で、過去に感染既往がある人はXBB/XBB.1.5への感染リスクが高いことが示された。Nature Communications誌2023年6月29日号に掲載の報告。  XBB/XBB.1.5系統は2023年1月下旬までに、ほかの変異体を追い抜き米国内で主流となった。本研究では、南カリフォルニアにおいて2022年12月1日~2023年2月23日の期間に、外来でSARS-CoV-2陽性と判定された3万1,739例のデータを解析した。これらの被験者において、XBB/XBB.1.5に感染した人と、ほかのBA.4/BA.5などに感染した人について、ワクチン接種歴と過去のSARS-CoV-2感染既往、および臨床転帰を比較した。

ダニは静電気の力を借りて宿主に付着か

 飛ぶことのできないマダニは、宿主となる人間や動物が自然に体表に蓄積している静電気を利用して宿主に付着することが、英ブリストル大学のSam England氏らの研究で示された。この研究結果は、「Current Biology」6月30日号に掲載された。  研究グループは、人間や動物に付着するマダニの能力を低下させることでもたらされる社会的および経済的なメリットは極めて大きいと指摘する。それは、マダニがライム病などのさまざまな病原菌を媒介し、人々の生活に混乱をもたらす可能性があるからだ。

コロナ禍において、5歳児に4ヵ月の発達遅れ/京大ほか

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより、学校や保育施設が閉鎖され、多くの乳幼児・子供が影響を受けた。これまで手薄だった未就学児を対象として、コロナ禍の影響を調査した京都大学医学研究科助教・佐藤 豪竜氏らによる研究結果が、JAMA Pediatrics誌オンライン版2023年7月10日号に掲載された。  研究者らは新型コロナ流行前から行っていた研究対象を再調査することで、コロナの影響を調べた。首都圏のある自治体の全認可保育所(小規模含む)に通う1歳または3歳の乳幼児887例に対し、2017~19年に1回目の調査、2年後に2回目の調査を行った。データは2022年12月8日~2023年5月6日に解析された。

アジア系研究者をもっと雑誌の編集委員に抜てきすべきだろう(解説:折笠秀樹氏)

論文査読の招待メールはたまに来ますが、「agree受諾」か「decline辞退」で答えます。どういった基準で答えているかというと、忙しさよりは、内容への興味かなと思います。この論文ですが、査読招待に関わる調査結果です。本研究の研究デザインは後ろ向きコホート研究です。査読招待メールをどなたに送り、受諾か辞退だったかというデータベースが保存されているのでしょう。BMJグループの21誌が対象でした。編集者を地域別で見ると、欧米が88%を占めており、アジアはわずか6%でした。論文の筆頭著者はというと、欧州42.1%、アジア28.2%、北米19.8%でした。アジアが結構多いのです。