感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:32

スタチン、ゾコーバなど、重大な副作用追加で添付文書改訂/厚労省

 厚生労働省は7月20日、HMG-CoA還元酵素阻害薬を含有する医薬品(スタチン)、エンシトレルビルなどの添付文書について、使用上の注意改訂指示を発出した。  国内副作用症例において、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が認められた。また、公表文献において、スタチンの再投与で重症筋無力症の症状が再発した症例、スタチンの中止で重症筋無力症の症状が消失した症例など、スタチンと重症筋無力症との因果関係が否定できない症例が報告されていることを踏まえ、改訂が適切と判断された。

ウイルス感染時の発熱による重症化抑制、腸内細菌叢が関係か/東大ほか

 これまで、ウイルスに感染した場合に外気温や体温が重症度に及ぼす影響は明らかになっていない。そこで、東京大学医科学研究所の一戸 猛志准教授らの研究グループは、さまざまな温度条件で飼育したマウスに対し、ウイルスを感染させた場合の重症度を解析した。その結果、体温の上昇によりウイルスに対する抵抗性が高まり、血中胆汁酸レベルが上昇した。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の血液についても解析した結果、軽症患者は中等症患者と比較して血中胆汁酸レベルが高かった。これらのことから、発熱により腸内細菌叢が活性化し、2次胆汁酸産生を介してウイルス感染症の重症化が予防されることが示唆された。本研究結果は、Nature Communications誌2023年6月30日号に掲載された。

コロナ罹患後症状における精神症状の国内レジストリ構築、主なリスク因子は?/日本精神神経学会

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行はすでに3年以上経過しているが、流行が長期化するほど既感染者が増加し、コロナ後遺症(コロナ罹患後症状、Long COVID)のリスクも上がる。コロナ後遺症は、倦怠感や認知機能障害といった精神神経障害が年単位で持続する場合もある。  国立精神・神経医療研究センターの高松 直岐氏らの研究チームは、こうしたコロナ後遺症の病態解明と新規治療法開発につなげるため、COVID-19感染後の精神症状を有する患者レジストリの構築を実施している。中間解析の結果、コロナ後遺症による有意な心理社会的機能障害の予測因子は、退職経験、主婦層、COVID-19罹患への心配や抑うつが中等度以上、ワクチン接種2回以下であることが示された。6月22~24日に横浜にて開催された第119回日本精神神経学会学術総会にて、高松氏が発表した。

感染防御対策が徹底した職場ほど独身者の恋愛活動が活発

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で、感染防止対策をより厳格に行っていた職場ほど、独身の人の恋愛活動が活発に行われていたことが明らかになった。産業医科大学環境疫学研究室の藤野善久氏らの研究によるもので、詳細は「Frontiers in Public Health」に2月16日掲載された。  COVID-19パンデミック発生後、外出自粛などのために社会的交流が少なくなり、「孤独」が公衆衛生上の問題としてクローズアップされてきた。若年者や独身者において、より孤独感が強まったとする研究報告も見られる。独身者では、新たな恋愛関係を構築することで孤独感が抑制されると考えられるが、パンデミックによりそのハードルがより高くなったとも言える。例えば、労働者の場合は職場がパートナーとの出会いの場となることが少なくないが、在宅勤務の奨励をはじめとするさまざまな対策によって、出会いの機会が減った。

COVID-19罹患前の睡眠状態が長期的な罹患後症状に影響

 多くのCOVID-19生存者が長期にわたる罹患後症状を経験しており、公衆衛生上の深刻な問題となっている。これまでのところ、COVID-19罹患後症状の状態に影響を及ぼすリスク因子の特定はあまり進んでいない。イタリア・ラクイラ大学のFederico Salfi氏らは、COVID-19の長期的な罹患後症状の発生に対する感染前の睡眠の質や時間、不眠症の重症度の影響について評価を行った。その結果、感染前の睡眠の質/量および不眠症重症度には、罹患後症状の発生数と用量依存的な関連性があることが示唆された。著者らは、「睡眠の健康状態の予防的な改善がCOVID-19の罹患後症状を軽減できるかを判断するためには、さらなる研究が必要である」としている。Brain, Behavior, and Immunity誌8月号の報告。

COVID-19関連の嗅覚・味覚障害はパンデミック初期の6%に減少

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの初期には、嗅覚や味覚の障害が罹患時の特徴的な症状の一つとして位置付けられていた。しかし、もはやそうではないことが明らかになった。現在ではCOVID-19罹患者に嗅覚・味覚障害を生ずる割合は、パンデミック初期のわずか約6~7%だという。米バージニア・コモンウェルス大学のEvan Reiter氏らの研究によるもので、詳細は「Otolaryngology—Head and Neck Surgery」に5月26日掲載された。

COVID-19罹患後症状の追跡調査(解説:小金丸博氏)

COVID-19に罹患した一部の患者にさまざまな罹患後症状(いわゆる後遺症)を認めることがわかってきたが、その原因やメカニズムはまだ解明されておらず、効果的な介入方法も確立していない。罹患後症状はpost COVID-19 condition、long COVID、post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection(PASC)などと呼ばれ、WHOは「新型コロナウイルスに感染した人にみられ、少なくとも2ヵ月以上持続し、他の疾患による症状として説明できないもの」と定義している。罹患後症状の種類や有病率、長期経過の把握は、治療方法や介入方法を検討するための臨床試験の設計につながる有益な情報となる。

オミクロン株(XBB.1.5)に対応した追加免疫に関する承認事項一部変更申請/モデルナ

 メッセンジャーRNA(mRNA)治療薬とワクチンのパイオニアであるバイオテクノロジー企業 Moderna(米国)の日本法人モデルナ・ジャパンは2023年7月7日、「スパイクバックス筋注」において、12歳以上を対象にオミクロン株(XBB.1.5)に対応した追加免疫用1価ワクチンとして厚生労働省に承認事項一部変更申請を行ったことを発表した。  Modernaは、6月に開催された米国食品医薬品局(FDA)の諮問会議VRBPACにおいて、オミクロン株の派生型であるXBB.1.5、XBB.1.16およびXBB.2.3.2などのXBB亜系統に対して免疫応答を示すXBB.1.5対応の1価ワクチンに関する予備的な臨床データを発表している。

ワクチン別、デルタ/オミクロン期の重症化抑制効果/BMJ

 米国退役軍人の集団において、デルタ株およびオミクロン株の優勢期で、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染して30日以内の人を対象に、ワクチン接種の回数や種類と、入院や死亡などの重症アウトカムとの関連性を調べた後ろ向きコホート研究が、米国・Lieutenant Colonel Charles S. Kettles VA Medical CenterのAmy S. B. Bohnert氏らにより実施された。本研究の結果、ワクチンの種類にかかわらず、未接種者よりも接種者のほうが重症化率や死亡率の低下が認められた。また、mRNAワクチンに関しては、ファイザー製よりもモデルナ製のほうが高い効果が得られることが示唆された。BMJ誌2023年5月23日号に掲載の報告。

近年の流行性耳下腺炎のアウトブレイクは免疫減弱が原因

 免疫減弱モデルが、流行性耳下腺炎(ムンプス、おたふくかぜ)ワクチン接種率が高い国で近年観察されたアウトブレイク再燃と強く合致しているとの研究結果が、「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」1月9日号に掲載された。  米ジョージア大学Odum School of EcologyのDeven V. Gokhale氏らは、流行性耳下腺炎ワクチン接種率の高い複数の国での同疾患のアウトブレイク再燃を踏まえ、この傾向の促進因子として、2つのワクチン効果不全のメカニズムを提示した。それらは、(1)免疫の段階的な減弱、(2)ワクチン免疫を回避する新規ウイルス遺伝子型の登場、である。米国の、年齢構造化した疫学、人口統計学的属性、およびワクチン接種に関する時系列データを基に、伝播メカニズムモデルを用いて尤度に基づく仮説検定を実施した。