感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:47

eGFR30未満でもレムデシビルの安全性に影響なし―国内単施設での後方視的研究

 腎機能が低下している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対するレムデシビルの安全性を検討した研究結果が報告された。eGFR30mL/分未満と以上の患者群を比較した結果、死亡率や有害事象発生率に有意差はなかったという。公立陶生病院薬剤部の梅村拓巳氏らによる研究であり、詳細は「Healthcare」に11月17日掲載された。  レムデシビルはCOVID-19治療薬として世界的に使用されている抗ウイルス薬。ただし、添加剤のスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウム(SBECD)の尿細管への蓄積により、腎機能の低下が促される可能性があるとの理由で、重度の腎機能障害患者への投与は推奨されていない。レムデシビルを用いた臨床試験の対象者も多くの場合、腎機能が低下している患者が除外されているため、腎機能低下症例での安全性に関する情報はいまだ十分でない。しかし実臨床では、腎機能が低下しているCOVID-19患者であっても同薬が必要とされることが少なくない。このような背景のもと梅村氏らは、同院入院患者での後方視的症例対照研究により、同薬の安全性を検討した。

コロナ罹患後症状別、持続しやすい患者/国立国際医療研究センター

 国立国際医療研究センターの森岡 慎一郎氏らの横断研究により、COVID-19回復患者の4分の1 以上で、ほとんどが急性期に軽症にもかかわらず、COVID-19の発症または診断から6、12、18、24ヵ月後に1つ以上の症状を有していることがわかった。本研究では、各症状の持続と関連する因子も検討した。Public Health誌オンライン版2023年2月13日号に掲載。  2020年2月~2021年11月に、COVID-19から回復し国立国際医療研究センターで受診した患者に調査を実施した。人口統計学的データ、臨床データ、COVID-19罹患後症状の存在と期間に関するデータを取得し、多変量線形回帰分析を用いて、症状持続の関連因子を調べた。  主な結果は以下のとおり。

世界初のRSVワクチン誕生へ向けて、下気道疾患の予防効果80%超/NEJM

 多くの人は2歳までにRSウイルス(RSV)に感染する。生涯を通じて再感染することがあり、通常は症状が軽いもしくは無症状とされている。しかし、高齢者や合併症を有する患者では、下気道疾患が引き起こされ、基礎疾患の増悪、入院、死亡につながる可能性がある。先進国の60歳以上の成人においては、2019年にRSV感染が約520万例の急性呼吸器感染症、約47万例の入院、約3万3千例の院内死亡をもたらしたと推定されている。しかし、現在までに承認されているRSVワクチンは存在しない。そこで、宿主細胞との膜融合に関与するfusion(F)タンパク質について、立体構造を安定させた融合前(prefusion)Fタンパク質を含有するワクチンが開発され、60歳以上の成人を対象とした第III相試験において、RSVに関連する下気道疾患および急性呼吸器感染症の予防効果が示された。本研究はAReSVi-006 Study Groupによって実施され、結果はイタリア・フェラーラ大学のAlberto Papi氏らによって、NEJM誌2023年2月16日号で報告された。

コロナワクチン接種者と未接種者、死亡率の差は?/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、米国の24地域において、12歳以上に対する新型コロナウイルスワクチンの効果について、デルタ株からオミクロン株BA.4/BA.5流行期にかけて、接種者と未接種者の比較調査を行った。本結果によると、2価ワクチン接種者は、1価ワクチン接種者やワクチン未接種者と比べて、感染に対する予防効果が高く、とくに高齢者において、死亡に対する予防効果が未接種者の10.3~23.7倍と有意に高いことが示された。本結果はCDCのMorbidity and Mortality Weekly Report誌2023年2月10日号に掲載された。

5歳未満へのコロナワクチン、3回接種の発症予防効果73.2%/NEJM

 生後6ヵ月~4歳児に対する新型コロナウイルスワクチン「BNT162b2」3μgの3回接種は安全で免疫原性があり、症候性COVID-19に対し有効であることを、米国・Baylor College of MedicineのFlor M. Munoz氏らが、約4,500例を対象とした試験の結果を報告した。3回目接種後1ヵ月時点の、免疫ブリッジング成功基準も満たし、反応原性イベントの大部分が軽度~中等度で、Grade4のイベントは認められなかった。NEJM誌2023年2月16日号掲載の報告。  研究グループは、6ヵ月~11歳の健康な小児を対象にBNT162b2ワクチンの第I相用量設定試験を完了し、現在第II~III相の安全性・免疫原性・有効性試験を行っている。

ニルマトレルビル/リトナビル、オミクロン下の外来患者リアルワールドデータ

 ニルマトレルビル/リトナビル(商品名:パキロビッドパック)は、コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化リスクの高い患者において、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)デルタ株および初期のオミクロン株に対する重症化抑制効果が示されている。重症化リスクの高いワクチン未接種の成人を対象とした、ランダム化比較試験「EPIC-HR試験」では、重症化リスクを89%低下させたことが報告されている。しかし、EPIC-HR試験はデルタ株流行期に行われた試験であり、オミクロン株流行期に主流となったBA.4系統、BA.5系統などに対する効果は明らかになっていない。そこで、米国・コロラド大学医学部のNeil R. Aggarwal氏らは、コロラド州の医療システムの記録を用いて、オミクロン株流行期の実臨床におけるニルマトレルビル/リトナビルの外来患者に対する有用性を検討した。その結果、SARS-CoV-2検査陽性後28日間の入院、全死亡、救急受診を減少させ、SARS-CoV-2検査陽性後28日間の入院の減少は、ワクチン接種状況や年齢、感染時期などに関係なく認められた。Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年2月10日掲載の報告。

英国のコロナ水際対策は機能しなかった?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大阻止を目的に英国で実施された入国制限が、あまり機能していなかったことを示唆する研究結果が報告された。英国に到着する飛行機のトイレや到着ターミナルの下水を採取して分析した結果、ほとんどのサンプルから重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が検出されたという。  この研究は、英バンガー大学のDavey Jones氏らによるもので、詳細は「PLOS Global Public Health」に1月19日掲載された。同氏は、「英国政府は、COVID-19罹患者が英国に到着する航空機に搭乗することを防ぐために、さまざまな対策を講じた。それにもかかわらず、分析したほぼ全ての排水や下水からウイルスが検出された」と、大学発のリリースの中で述べている。水際対策がうまくいかなかった理由としては、「搭乗する前の検査結果では陰性だったがその後に発症し、入国制限を回避して入国できたケースや、それ以外の可能性もある」とのことだ。同氏は、「いずれにしてもわれわれの研究結果は、他国から患者が流入するのを抑え込むという対策が失敗だったことを示している」と語っている。

黄色ブドウ球菌感染症にプロバイオティクスが有効な可能性

 プロバイオティクスサプリメントが、重度の薬剤耐性菌感染症を引き起こすことのある黄色ブドウ球菌の体内からの排除に役立つ可能性が、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のMichael Otto氏らの研究で示された。今後さらなる研究は必要だが、専門家らは、今回の研究結果は黄色ブドウ球菌の感染を予防する方法に結び付くかもしれないとの見方を示している。詳細は、「The Lancet Microbe」に1月13日発表された。  黄色ブドウ球菌は健康な人の体にも存在する常在菌で、特に鼻や皮膚に多く存在している。皮膚の感染症の原因菌となることの多い黄色ブドウ球菌だが、血流に入り込むと重度の致死性疾患を引き起こすこともある。特に懸念されるのが、数多くの抗菌薬に耐性を示し、「スーパー耐性菌」とも呼ばれるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)だ。そのため研究者らは、入院患者や透析患者などの高リスクの人たちに対しては、局所抗菌薬や消毒薬を用いて鼻や皮膚の黄色ブドウ球菌を死滅させようとしてきた。

5歳未満でCOVID-19と他のウイルスに重複感染すると重症化しやすい

 米疾病対策センター(CDC)による新たな研究から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のために入院した5歳未満の子どもが他の呼吸器感染症に重複感染すると、重症化リスクが高くなることが明らかになった。5歳以上では有意なリスク上昇は認められないという。  子どもに多い呼吸器感染症の原因として、ライノウイルス、エンテロウイルス、RSウイルスなどがあり、これらは一般に「風邪」として扱われる。COVID-19パンデミックとともに、マスク着用、身体的距離の確保をはじめとする厳格な対策が実施されたことで、これらの感染症も一時は減少し、ほとんど患者が見られなくなったものもある。しかし規制緩和によって再び増加し、米国では通常のシーズン以上にRSウイルスの感染が拡大。子どもたちが、COVID-19とそれらのウイルス感染症に重複して罹患する可能性が高まっている。

米国では600人以上の医師がパンデミックで死亡

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの初期に、米国では600人を超える医師の超過死亡が発生していたことが報告された。米スタンフォード大学のMathew Kiang氏らの研究によるもので、「JAMA Internal Medicine」に2月6日、レターとして掲載された。著者らは、COVID-19との闘いの第一線にいた医師が多数亡くなったことは、一般市民のCOVID-19関連死の増加をもたらした可能性もあると述べている。  Kiang氏らはこの研究に、米国医師会の医師の死亡に関するデータを使用。準ポアソン回帰モデルという統計学的手法を用いて、過去の医師の死亡件数を基に、季節性などを考慮したパンデミック中の医師の推定死亡リスクを算出。その値と実際の死亡者数との差から、超過死亡者数を割り出した。なお、検討対象期間中の45歳未満の医師の死亡は月5人未満と少数であったため、解析対象の年齢を45歳以上84歳までとした。