内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:39

日本の社会経済的指標と認知症リスク

 生涯にわたる社会経済的指標(Socioeconomic status:SES)の推移が、認知症の発症リスクと関連するかどうかを調査した、日本発の研究結果が発表された。大阪大学の坂庭 嶺人氏らによる本研究結果はJAMA Network Open誌2024年5月1日号に掲載された。  2010年8月~2016年12月に実施されたこの前向きコホート研究では、日本老年学的評価研究のデータを使用し、日本の31地域の65歳以上の参加者を対象とした。参加者は介護保険や医療福祉サービスを使用しておらず、認知症の診断を受けていない人とされ、自記式質問票で回答した。データ解析は2022年4月~2023年4月に実施された。SES値欠落者、追跡不能者、ベースラインから1年以内の認知症発症者は除外された。主なアウトカムは認知症発症リスクと、それに伴う生涯にわたる認知症のない期間の減少または増加だった。認知症の発症は介護保険のデータによって特定された。

大腸内視鏡検査の陰性後の検査間隔は長くできる

 大腸がんの家族歴がなく、最初の大腸内視鏡検査で陰性所見が得られた人では、大腸内視鏡検査の実施間隔を長くすることは安全であり、不必要な大腸内視鏡検査を回避できるようだという研究結果が、「JAMA Oncology」に5月2日掲載された。  ドイツがん研究センター(ドイツ)のQunfeng Liang氏らは、最初の大腸内視鏡検査で大腸がんの陰性所見が得られた場合、何年後に2回目の大腸内視鏡検査を実施できるかを評価した。検査陰性(曝露)群には、大腸がんの家族歴がなく、1990年から2016年の間に45~69歳で最初の大腸内視鏡検査を受け、大腸がんの陰性所見が得られた人11万74人が含まれた。対照群は、曝露群と性別や誕生年、基準年齢が一致し、追跡期間中に大腸内視鏡検査を受けなかった、または大腸内視鏡検査を受けて大腸がんの診断に至った人198万1,332人が含まれた。

日本におけるベンゾジアゼピンと向精神薬の併用状況

 さまざまな精神疾患のガイドラインでは、少数のケースにおいてベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)単剤療法による短期介入が推奨されている。対照的に、BZD多剤併用療法は、いかなる場合でも推奨されていない。しかし実臨床では、BZD多剤併用療法が用いられることが少なくない。秋田大学の竹島 正浩氏らは、BZD多剤併用療法と向精神薬併用との関連を明らかにするため、本研究を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2024年7月4日号の報告。  JMDCの請求データを用いて、レトロスペクティブ横断的研究を実施した。2019年6月、BZD治療を行った健康保険加入者の医療情報を抽出した。BZD多剤併用療法の定義は、2種類以上のBZD使用とした。年齢、性別、保健者および睡眠薬、抗うつ薬、抗精神病薬の併用数(0、1、2以上)を共変量とし、BZD多剤併用療法と関連する因子を特定するため、二項ロジスティック回帰分析を用いた。

ドライフルーツは2型糖尿病リスクを上げる?下げる?

 ドライフルーツの摂取が2型糖尿病の発症に及ぼす影響については、議論が分かれている。そこで、中国・西安交通大学のJianbin Guan氏らはメンデルランダム化解析を用いた研究を実施した。その結果、ドライフルーツの摂取は2型糖尿病の発症リスク低下と関連することが示された。本研究結果は、Nutrition & Metabolism誌2024年7月10日号で報告された。  本研究では、ドライフルーツの摂取に関連する遺伝子データは、UKバイオバンクに登録された約50万例のうち、ドライフルーツの摂取に関するデータが得られた42万1,764例から取得した。2型糖尿病に関する遺伝子データは、IEU GWASデータベースに登録された2型糖尿病患者6万1,714例、対照59万3,952例から取得した。主な解析方法として、逆分散加重(IVW)法を用いて、ドライフルーツの摂取と2型糖尿病のリスクとの関連を検討した。

自転車通勤や徒歩通勤は心身の健康を向上させる

 自転車通勤は健康を大幅に改善し、あらゆる原因による死亡(全死亡)リスクを低減することが、新たな研究で明らかにされた。自転車通勤をしている人では、していない人に比べて全死亡リスクが47%低いのみならず、心臓病、がん、精神疾患の発症リスクも低いことが示されたという。英グラスゴー大学MRC/CSO Social and Public Health Sciences UnitのCatherine Friel氏らによるこの研究結果は、「BMJ Public Health」に7月16日掲載された。  Friel氏らは、スコットランドの人口の約5%が参加した全国健康調査の参加者から抽出した8万2,297人(16〜74歳)のデータを分析した。追跡期間は2001年から2018年までとし、この間のデータを入院、死亡、および治療薬処方の記録とリンクさせた。対象者を、学校や職場への通勤手段により、活動的な通勤者(自転車、または徒歩で通勤)と、それ以外の手段で通勤している非活動的な通勤者として分類し、両者間での健康リスクを比較した。

便秘薬を使用する人ほど排便満足度が低い

 便秘に悩む日本人を対象として、使用している便秘薬の種類や便秘薬に支払う金額などと排便に対する満足度との関連が検討された。その結果、便が硬い人、複数の便秘薬を使用している人、支払い金額の多い人ほど、排便満足度は低いことが明らかとなった。愛知医科大学消化管内科の山本さゆり氏、春日井邦夫氏らによる研究であり、「Journal of Clinical Medicine」に5月30日掲載された。  便秘は一般的な消化器疾患であるが、慢性便秘は睡眠やメンタルヘルス、生活の質(QOL)のみならず、仕事の生産性などにも悪影響を及ぼすことが報告されている。便秘の治療には、処方薬だけでなく市販薬も使用される。また、医師は便の性状や排便回数などから治療効果を客観的に評価する傾向があるが、患者の治療満足度には主観的評価も含まれ、便秘の問題とその治療については個人差が大きい。

JN.1系統対応コロナワクチン、一変承認を取得/ファイザー・ビオンテック

 ファイザーおよびビオンテックは2024年8月8日付のプレスリリースにて、生後6ヵ月以上を対象とした新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン株JN.1系統対応の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンについて、日本での製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  両社は2024年6月10日、オミクロン株JN.1系統のスパイクタンパク質をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)を含む1価ワクチンについて厚生労働省に承認事項一部変更を申請しており、今回、以下の製剤が承認された。

1年間のAChEI治療、認知機能が低下しやすい患者は?

 アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(AChEI)治療を1年間行ったアルツハイマー病患者の治療アウトカムについて、台湾・Kaohsiung Veterans General HospitalのPao-Yuan Ching氏らが、調査を実施した。Aging Medicine誌2024年6月18日号の報告。  2015年1月〜2021年9月の電子カルテデータを、台湾南部の医療センターより入手した。対象は、新たにアルツハイマー病と診断され、AChEIによる治療を行った60歳以上の患者。認知機能評価は、AChEI治療前および治療1年後のフォローアップ調査時に実施した。認知機能低下は、AChEI治療1年後のミニメンタルステート検査(MMSE)が3超低下または臨床的認知症尺度(CDR)1以上低下と定義した。ベースライン時とフォローアップ調査後の認知機能の関係は、潜在的な交絡因子で調整したのち、ロジスティック回帰分析を用いて検討した。

極端に暑い日や寒い日には診療予約のキャンセルが増加

 極端に高温や低温の日には、予約されている診療時間に来なかったり(ノーショー)、診療をキャンセルしたりする患者が増えることが明らかになった。こうした傾向は、65歳以上の高齢者と慢性疾患を有する人で顕著だったという。米ドレクセル大学医学部のNathalie May氏らによるこの研究の詳細は、「American Journal of Preventive Medicine」に6月20日掲載された。  この研究では、米フィラデルフィア市の13カ所の大学病院の外来患者(18歳以上)9万1,580人の間に、2009年1月から2019年12月31日の間に発生した診療予約104万8,575件の追跡が行われた。May氏らは、受診の有無に関するデータを米国海洋大気庁(NOAA)の国立環境情報センター(National Centers for Environmental Information;NCEI)が提供する気象データに基づいて寒い季節と暑い季節に分類し、極端な気温とプライマリケアの利用との関連を検討した。

アルツハイマー病の進行予測に役立つアプリを開発

 人により大きく異なるアルツハイマー病の進行を予測できるアプリの開発に関する研究成果を、オランダの研究グループが報告した。このモデルにより、軽度認知障害(MCI)患者と軽度認知症患者の認知機能がどのようなペースで低下するのかを予測できる可能性が示されたという。アムステルダム自由大学アルツハイマーセンター(オランダ)のWiesje van der Flier氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に7月10日掲載された。  Van der Flier氏らは、アミロイドβ(Aβ)の蓄積が検査で確認されているMCI患者310人と軽度認知症患者651人の計961人(平均年齢65±7歳、女性49%)のデータを用いて、認知症検査の一種として知られるミニメンタルステート検査(MMSE)の経時的な変化を予測するモデルを構築した。MMSEスコア(0〜30点)は、25点以上を正常、21〜24点を軽度認知症、10〜20点を中等度の認知症、10点未満を重度認知症と見なす。予測の際には、年齢、性別、ベースラインのMMSEスコア、アポリポタンパク質E4の有無、MRI検査で測定した全脳および海馬の体積、脳脊髄液中のバイオマーカー(Aβ1〜42およびリン酸化タウの濃度)のデータが考慮された。