内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:95

静脈血栓塞栓症での長期投与の安全性、DOAC vs.ワルファリン

 静脈血栓塞栓症(VTE)に対する経口抗凝固薬の投与期間は、海外では初回3~6ヵ月の治療期間からの延長が推奨される場合があるが、直接経口抗凝固薬(DOAC)またはワルファリンの臨床アウトカムの違いは明らかにされていない。そこで、米国・カルフォルニア大学のMargaret C. Fang氏らが急性VTE患者を対象にDOACまたはワルファリンの抗凝固療法の6ヵ月以上の延長による「VTEの再発」「出血による入院」および「全死因死亡の割合」への影響を比較した。その結果、DOAC治療はVTEの再発リスク低下と関連し、臨床アウトカムの観点からVTEの長期治療にDOACの使用を支持すると報告した。JAMA Network Open誌2023年8月1日号掲載の報告。

ワクチン接種者でCOVID-19が重症化しにくいのはなぜか

 周知のように、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン(以下、新型コロナワクチン)を接種することで、感染リスクがなくなるわけではないが感染後の重症化リスクは低下する。しかし、それはなぜなのか。その理由の解明につながる研究結果を、米コロラド大学コロラド公衆衛生大学院のAlison Abraham氏らが、「The Lancet Microbe」に8月7日発表した。この研究によると、COVID-19罹患者のうち、ワクチン接種を受けていた人では未接種の人に比べて、炎症マーカーの値が低かったことが示されたという。

アルツハイマー病関連遺伝子の保有者では認知機能に先立ち嗅覚が低下か

 アルツハイマー病に関連するApoE遺伝子のε4アレル(ApoE ε4)を保有する人は、記憶や思考に問題が生じるはるか前に嗅覚が低下している可能性のあることが、米シカゴ大学のMatthew GoodSmith氏らによる研究で示唆された。GoodSmith氏は、「においを感知する能力の検査が、後年になって認知機能に生じる問題を予測する上で有用な可能性がある」と述べている。研究の詳細は、「Neurology」に7月26日掲載された。  ApoEはアミロイドβの蓄積や凝集に関わるタンパク質である。ApoEには、3つの主要なアイソフォーム(ApoE2、ApoE3、ApoE4)が存在し、それぞれ、ε2、ε3、ε4の3種類のアレルによりコードされている。ε4アレルを保有する人ではアルツハイマー病発症のリスクが大幅に上昇することが知られている。

アルツハイマー病治療薬レカネマブ、厚労省専門部会が薬事承認を了承/エーザイ・バイオジェン

 2023年8月21日、lecanemab(一般名:レカネマブ、商品名:レケンビ点滴静注200mg/同500mg、以下「レカネマブ」)は、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において製造販売承認が了承された。今回の了承に際して、エーザイとBiogen(米国)は共同ステートメントを発表し、「厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において、レカネマブの早期アルツハイマー病治療薬としての製造販売承認が了承されたことは、わが国のアルツハイマー病治療における大きな前進であると受け止めている」とした。

飲酒で発症リスクが上がるがん、下がるがん~女性80万人の前向き研究

 アルコール摂取は一部のがん発症リスクの増加や減少に関連していると考えられている。今回、英国・オックスフォード大学のSarah Floud氏らが、前向き研究であるUK Million Women Studyで調査したところ、アルコール摂取量が増えると、上部気道・消化管がん、乳がん、大腸がん、膵臓がんのリスクが増加し、甲状腺がん、非ホジキンリンパ腫、腎細胞がん、多発性骨髄腫のリスクが低下する可能性が示された。また、この関連は、上部気道・消化器がんを除いて、喫煙、BMI、更年期ホルモン療法による変化はなかった。BMC Cancer誌2023年8月16日号に掲載。

新型コロナなど呼吸器系ウイルスの重複感染率はどの程度か

 米国で、2022年後半に実施された2万6,000件以上の呼吸器系ウイルスの検査結果を調べたところ、陽性結果の1%以上で新型コロナウイルス、インフルエンザウイルス、RS(呼吸器合胞体)ウイルスの重複感染が認められたとする研究結果が報告された。重複感染は、21歳以下の若年者の間で多く認められたという。米クエスト・ダイアグノスティックス社のテクニカルディレクターを務めるGeorge Pratt氏らによるこの研究結果は、米国臨床化学会年次総会(2023 AACC、7月23〜27日、米アナハイム)で発表された。

家庭での血圧測定はCVDの発症抑制や医療費削減につながる

 家庭用血圧計による血圧測定は、長期的には人種や民族に関わりなく脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患(CVD)の発症を抑制し、医療費削減につながることが、上海交通大学(中国)医学部公衆衛生学分野教授のYan Li氏らによる研究で示された。Li氏は、「家庭での血圧モニタリングにより、早期発見、適時の介入、合併症の予防が容易になり、血圧コントロールの改善と健康転帰の改善につながる」と話している。詳細は、「American Journal of Preventive Medicine」に5月12日掲載された。  今回の研究でLi氏らは、まず米国で実施された電話調査である行動リスク因子サーベイランスシステム(Behavioral Risk Factor Surveillance System;BRFSS)の2019年のデータと、公表されている文献データを用いて、高血圧を持つ米国成人の健康および人口統計学的特性を抽出し、CVDのマイクロシミュレーションモデルで使用するパラメーターを推定した。その上で、このモデルにより、家庭用血圧計によるモニタリングが、心筋梗塞や脳卒中の発症と医療費削減に与える長期的な影響を、通常の血圧に対するケア(診療所での血圧モニタリング)との比較で検討した。

高血圧への第1選択としての利尿薬vs.他の降圧薬~コクランレビュー

高血圧患者における死亡率、心血管イベントの発生率、有害事象による中止率などについて、第1選択薬としてのサイアザイド系利尿薬と他のクラスの降圧薬を比較したシステマティックレビューの結果を、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のMarcia Reinhart氏らがThe Cochrane Database of Systematic Reviews誌2023年7月13日号に報告した。  2021年3月までのCochrane Hypertension Specialized Register、CENTRAL、MEDLINE、Embase、および臨床試験登録が検索された。対象は1年以上の無作為化比較試験で、第1選択薬としての利尿薬と他の降圧薬の比較、および死亡率とその他のアウトカム(重篤な有害事象、総心血管系イベント、脳卒中、冠動脈性心疾患[CHD]、うっ血性心不全、有害作用による中止)が明確に定義されているものとした。

毎日の運動でも週末だけの運動でも心臓への影響は同じ

 毎日運動するのも週末にまとめて運動するのも、心臓への影響は変わらないようだ。米マサチューセッツ総合病院(MGH)のShaan Khurshid氏らが実施した研究で、「中強度〜高強度の運動(moderate to vigorous physical activity;MVPA)を週150分以上」というガイドラインの推奨を満たしていれば、どのようなスケジュールで運動を行っても、心臓に同様のベネフィットがもたらされることが明らかになった。この研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」7月18日号に掲載された。  この研究では、UKバイオバンクのデータを用いて、ガイドラインで推奨されている運動量を短期間で集中的に行う場合と、より均等に(定期的に)行う場合とで、心血管イベント(心房細動、心筋梗塞、心不全、脳卒中)の発生リスクに違いがあるのかどうかが調査された。対象は、2013年6月8日から2015年12月30日までの間に加速度計で測定した1週間の運動量のデータがそろっていた8万9,573人(平均年齢62歳、女性56%)。このうちの42.2%(3万7,872人)は週150分以上のMVPAの50%以上を1〜2日で消化する「週末戦士(weekend warrior;WW)」(WW群)、24.0%(2万1,473人)はWWよりも定期的な運動習慣で推奨運動量を満たしていた(定期的な運動群)。残りの33.7%(3万228人)はガイドラインでの推奨運動量を満たしていなかった(推奨量未達成群)。追跡期間中央値は6.3年だった。

外来・入院・集中治療別マネジメントを記載、COVID-19診療の手引き第10.0版/厚労省

 厚生労働省は8月21日、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第10.0版」を公開し、全国の自治体や関係機関に通知した。2023年2月に公開された第9.0版以来、5類移行後初めての改訂となる本版は、オミクロン株に置き換わって以降の国内外の知見が反映され、よりコンパクトな内容になっている。とくに外来診療にも役立てられるよう、第4章では、前版までは重症度別に記載されていたマネジメントが、「外来診療」「入院診療」「集中治療」別にまとめなおされている。また、本手引きを基に作成された「COVID-19 外来診療の基礎知識」の表も公開された。