腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:4

尿アルブミン/クレアチニン比の基準値、30mg/gCr未満は適切?

 尿アルブミン/クレアチニン比(UACR、単位:mg/gCr)の基準値は30未満とされているが、基準値範囲内であっても、全死亡および心血管疾患リスクに影響を及ぼすことが示唆された。イスラエル・ヘブライ大学のDvora R. Sehtman-Shachar氏らの研究グループは、UACR 30未満の範囲で、全死亡および心血管疾患との関連を調査した研究を対象として、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、UACRが基準値範囲内であっても正常高値では、心血管疾患および全死亡のリスクが上昇した。本研究結果は、Diabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2024年7月17日号に掲載された。

腎移植後の抗体関連型拒絶反応、抗CD38抗体felzartamabが有望/NEJM

 移植腎廃絶の主な原因である抗体関連型拒絶反応を呈した患者において、抗CD38モノクローナル抗体felzartamabは、許容可能な安全性および副作用プロファイルを示した。オーストリア・ウィーン医科大学のKatharina A. Mayer氏らが第II相二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果を報告した。先行研究で、移植腎障害を引き起こす同種抗体とナチュラルキラー(NK)細胞を抑制するため、CD38を標的とすることが治療選択肢となる可能性が示唆されていた。NEJM誌2024年7月11日号掲載の報告。

亜鉛の測定が推奨される症状・タイミングは?

 近年、健康維持に重要な栄養素として注目を浴びる亜鉛。小児の発育や味覚異常に影響することはよく知られているが、ここ数十年で国内外の研究報告からさまざまな生理作用に関与していることが明らかになっている。先般、国内レセプトデータを解析して日本人の亜鉛不足者の特徴を発表した横川 博英氏(順天堂大学医学部総合診療科学講座 先任准教授)が「一般集団・患者群の血清亜鉛濃度の実際と低亜鉛血症患者の頻度やその臨床像」と題し、日本人の亜鉛欠乏の現状や検査の必要性について、6月4日に開催されたノーベルファーマのプレスセミナーにおいて解説した。

SGLT2iはステージ5のDKDの予後も改善し得る

 腎機能が高度に低下した糖尿病患者であっても、SGLT2阻害薬(SGLT2i)によって予後が改善することを示すデータが報告された。Dr. Yen'sクリニック(台湾)のFu-Shun Yen氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に4月30日掲載された。SGLT2iの処方が、透析導入や心不全、急性心筋梗塞(AMI)、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)、急性腎障害(AKI)による入院リスクの有意な低下と関連しているという。  SGLT2iは血糖降下作用とともに腎保護作用や心保護作用を有することが明らかになっており、ガイドラインでも使用が推奨されている。しかし、そのエビデンスは腎機能が一定程度以上に保たれている患者を対象に行われた研究から得られたものであり、高度腎機能低下例でのエビデンスは数少ない。これを背景としてYen氏らは、台湾の国民健康保険研究データベース(NHIRD)を用いて、ステージ5(eGFR20mL/分/1.73m2未満で定義)の慢性腎臓病(CKD)を有する糖尿病患者でのSGLT2iの有用性を検討した。なお、同国は1995年に皆保険制度が施行され、国民の99%が国民健康保険に加入しており、NHIRDにはその医療行為が記録されている。

CKD-MBD治療の新たな方向性が議論/日本透析医学会

 日本透析医学会による『慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)の診療ガイドライン』の改訂に向けたポイントについて、2024年6月9日、同学会学術集会・総会のシンポジウム「CKD-MBDガイドライン 新時代」にて発表があった。  講演冒頭に濱野 高行氏(名古屋市立大学病院 腎臓内科・人工透析部)が改訂方針について、「CKD-MBDの個別化医療を目指して、さまざまなデータを解析して検討を積み重ねてきた。新しいガイドラインでは、患者の背景に合わせた診療の実現へつなげるためのユーザーフレンドリーな内容になるよう努めていきたい」とコメント。続いて、6人の医師が今後の改訂のポイントに関して解説した。

慢性腎臓病を伴う2型糖尿病に対するセマグルチドの腎保護作用 -FLOW研究から何を学ぶ-(解説:栗山哲氏)

GLP-1受容体作動薬は、LEADER/SUSTAIN-6/REWINDなど2型糖尿病の大規模研究において心血管主要アウトカムのリスク軽減が報告されている。一方、これらの研究で腎イベントは副次項目として設定されており、肯定論はあるものの正確な評価はされていない。今回のFLOW研究は、セマグルチドの効果を、腎疾患イベントを主要評価項目として評価した初の腎アウトカム研究である。慢性腎疾患(CKD)を有する2型糖尿病の成人を対象として、腎臓を主要評価項目とした。標準治療の補助療法として追加したセマグルチド1.0mg週1回皮下注とプラセボを比較した、無作為割り付け、二重盲検、並行群間、プラセボ対照試験のデザイン。両群のベースラインeGFRは、47mL/min/1.73m2である。

セマグルチド、CKDを伴う2型DMの腎機能低下や心血管死亡を抑制/NEJM

 慢性腎臓病(CKD)を伴う2型糖尿病患者は、腎不全、心血管イベント、死亡のリスクが高いが、GLP-1受容体作動薬セマグルチドによる治療がこれらのリスクを軽減するかは知られていない。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のVlado Perkovic氏らFLOW Trial Committees and Investigatorsは「FLOW試験」において、プラセボと比較してセマグルチドは、主要腎疾患イベントの発生が少なく、腎特異的イベントや心血管死、全死因死亡のリスクを低減することを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月24日号に掲載された。

抗ネフリン抗体、ネフローゼ症候群の活動性マーカーの可能性/NEJM

 成人の微小変化型と原発性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)、および小児の特発性ネフローゼ症候群は、ネフローゼ症候群を引き起こす免疫介在性のポドサイト障害(podocytopathy)とされる。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのFelicitas E. Hengel氏らは、循環血中の抗ネフリン抗体(自己抗体)は、微小変化型または特発性のネフローゼ症候群の患者に多くみられ、これらの疾患の活動性のマーカーと考えられるとともに、スリット膜でのこの抗体の結合がポドサイト(糸球体上皮細胞[足細胞])の機能障害とネフローゼ症候群を誘発し、これは病態生理学的な意義を示すものであることを明らかにした。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年5月25日号で報告された。

90%近くの米国成人が心血管・腎・代謝(CKM)症候群に該当

 米国の20歳以上の成人の10人中9人が、心血管・腎・代謝症候群(cardiovascular-kidney-metabolic syndrome;CKM症候群)の初期から後期の段階にあり、10%近くはすでに心血管疾患(CVD)を発症しているとする研究結果が報告された。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院とハーバード医学大学院のMuthiah Vaduganathan氏らによるこの研究は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に5月8日掲載された。  CKM症候群は、米国心臓協会(AHA)により新たに提唱された疾患概念で、肥満や糖尿病などの代謝リスク因子、慢性腎臓病(CKD)、および心不全・心房細動・冠動脈疾患・脳卒中・末梢動脈疾患などのCVDの関連に起因する健康障害と定義される。CKM症候群は、次の4つのステージに分けられる。

史上初の人工心臓植え込み手術+ブタ腎臓移植

 米国ニュージャージー州出身のLisa Pisanoさんは、人生の終わりを諦観していた。54歳の彼女は心不全と末期腎不全を患い、かつ、複数の慢性疾患があるため臓器移植の待機リストから外されていた。「リストに載らないことが分かった時には、自分に残された時間があまりないことを実感した」とPisanoさんは語っている。しかし彼女は、左室補助人工心臓(LVAD)の植え込みと遺伝子編集されたブタ腎臓の移植のおかげで、新たな命を手に入れた。  治療を担当した米ニューヨーク大学(NYU)ランゴン・ヘルスの外科医によると、このような大きく異なる二つの医療技術が1人の患者に対して用いられたのは、これが初めてのことであり、LVAD植え込み手術を受けた患者が、その後なんらかの臓器移植を受けた例は記録がないという。さらに、遺伝子編集されたブタ腎臓の移植成功例は、今年3月に米国で行われた症例に続き、今回が2例目とのことだ。NYU移植研究所のRobert Montgomery氏は、「Pisanoさんの命を救うことを可能にした科学的な進歩は驚異的であり、それを支えた人々の信念は計り知れないほどの大きさだ」と述べている。