神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:11

世代を超えた自閉スペクトラム症と認知症との関係

 自閉スペクトラム症(ASD)患者は、認知機能低下や認知症のリスクが高いことを示唆するエビデンスが報告されている。この関連性が、ASDと認知症の家族的因子によるものかは不明である。スウェーデン・カロリンスカ研究所のZheng Chang氏らは、ASD患者の親族における認知症リスクを調査した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2025年5月14日号の報告。  スウェーデンのレジスターにリンクさせた家族研究を実施した。1980〜2013年にスウェーデンで生まれた個人を特定し、2020年までフォローアップを行い、ASDの臨床診断を受けた人を特定した。このASD患者と両親、祖父母、叔父/叔母をリンクさせた。ASD患者の親族における認知症リスクの推定には、Cox比例ハザードモデルを用いた。認知症には、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、その他の認知症を含めた。親族の性別およびASD患者の知的障害の有無で層別化し、解析を行った。

身体活動量が十分でも座位時間が長いと認知機能は低下する?

 身体活動を毎日していてもソファで過ごす時間が長い高齢者は、アルツハイマー病(AD)を発症しやすい可能性があるようだ。新たな研究で、高齢者における長い座位時間は、認知機能の低下やADの発症に関連する脳領域の萎縮と関連していることが明らかになった。米ピッツバーグ大学神経学分野のMarisssa Gogniat氏らによるこの研究結果は、「Alzheimer’s & Dementia」に5月13日掲載された。  Gogniat氏らは、50歳以上の成人404人(平均年齢71±8歳、男性54%)を対象に、座位時間とADの関係を調査した。試験参加者は、腕時計型の活動量計を7日間装着して活動量を測定したほか、神経心理検査と脳の3T MRI検査を受けた。試験開始時の活動量計での測定時には、79%の参加者で認知機能に障害は見られなかった。また、87%が米疾病対策センター(CDC)が推奨する身体活動量(中〜高強度の運動〔MVPA〕を1週間当たり150分以上)を満たしており、1日当たりのMVPAの時間は平均61分だった。

レカネマブによる治療はメモリークリニックでも可能

 レカネマブ(商品名レケンビ)は、アルツハイマー病(AD)の進行抑制に有効な初めての抗アミロイドβ抗体薬として、2023年に米食品医薬品局(FDA)に承認された。しかし、承認前の臨床試験で、この薬剤は脳浮腫や脳出血などの副作用を伴うことが示されたことから、実用化には懸念の声も寄せられていた。こうした中、レカネマブに関する新たなリアルワールド研究により、記憶に関する専門クリニック(メモリークリニック)でも副作用をコントロールしながら安全にレカネマブによる治療を行えることが示された。論文の上席著者である米ワシントン大学医学部神経学教授のBarbara Joy Snider氏らによるこの研究結果は、「JAMA Neurology」に5月12日掲載された。

ミニストローク後に持続的な疲労感を経験する人は多い

 一過性脳虚血発作(TIA)を経験した人では、その後、最長で1年間にわたり疲労感が持続する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。オールボー大学病院(デンマーク)のBoris Modrau氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に5月14日掲載された。  TIAでは、脳への血流が一時的に途絶えるが、本格的な脳卒中のように永久的な脳障害には至らない。このため、TIAはしばしば「ミニストローク」とも呼ばれる。Modrau氏は、「TIAを発症すると、顔面や腕の筋力低下や麻痺、言語不明瞭などの症状が現れることがあるが、通常は24時間以内に回復する。しかし、生活の質(QOL)の低下、思考障害、抑うつ、不安、疲労感などの問題となる症状が持続していることを報告する人もいる」と話す。

神経線維腫症1型の叢状神経線維腫、成人にもセルメチニブ有効/Lancet

 手術不能な症候性の叢状神経線維腫(PN)を有する神経線維腫症1型(NF1)の成人患者を対象とした初めての国際共同無作為化プラセボ対照試験において、セルメチニブはプラセボと比較して奏効率(ORR)が有意に高く、新たな安全性に関する懸念は認められなかった。米国国立がん研究所のAlice P. Chen氏らKOMET study investigatorsが、13ヵ国(オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ポーランド、ロシア、スペイン、英国、米国)の33施設で実施した第III相国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験「KOMET試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「さらに、16サイクル時までの腫瘍容積の減少、慢性疼痛および突出痛の軽減、鎮痛薬使用の減少、ならびに疼痛支障度の減少が示されており、PNを有する成人NF1患者の治療にセルメチニブは有効である」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年6月2日号掲載の報告。

日本人高齢者の脳Aβ沈着に対するDHAの保護効果

 アルツハイマー病は、アミロイドベータ(Aβ)プラークの蓄積により引き起こされるが、そのメカニズムはいまだに解明されていない。オメガ3(ω3)脂肪酸、とくにドコサヘキサエン酸(DHA)には、保護作用があるといわれているが、Aβ蓄積との関係は、完全に解明されているとはいえない。米国・ピッツバーグ大学の関川 暁氏らは、ω3脂肪酸の摂取量が多いことで知られている日本人において、認知機能が正常な日本人高齢者を対象に画像診断の6〜9年前に測定した血清DHAおよびエイコサペンタエン酸(EPA)濃度が、脳Aβ沈着と逆相関を示すかを調査しました。PETに基づくAβ陽性と判定されたアルツハイマー病進行リスクの高い高齢者に焦点を当て、DHAが早期アミロイド病変を軽減する可能性を評価した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年5月8日号の報告。

うつ病合併片頭痛に対するフレマネズマブの有効性〜UNITE試験

 片頭痛とうつ病は併発することが多いものの、両疾患を合併した患者における片頭痛予防に関する有効性を評価したエビデンスは限られている。米国・Albert Einstein College of MedicineのRichard B. Lipton氏らは、うつ病を合併した成人片頭痛患者におけるフレマネズマブの有効性および安全性を評価するため、二重盲検プラセボ対照並行群間ランダム化試験であるUNITE試験を実施した。JAMA Neurology誌オンライン版2025年5月5日号の報告。  UNITE試験は、4週間のスクリーニング期間、12週間の二重盲検期間および12週間の非盲検継続試験により構成され、2020年7月9日〜2022年8月31日に12ヵ国、55施設で実施した。対象患者は、スクリーニング前12ヵ月以上にわたりDSM-V基準に基づくうつ病歴があり、スクリーニング時に活動性の抑うつ症状を呈した反復性片頭痛(EM)または慢性片頭痛(CM)の成人患者。フレマネズマブ225mgを月1回投与したフレマネズマブ群とプラセボ群に1:1でランダムに割り付けられた。継続試験に参加した患者には、フレマネズマブ675mgを四半期ごとに投与した。主要アウトカムは、12週間の二重盲検期間中における1ヵ月当たりの片頭痛日数のベースラインからの変化量とした。

眠気の正体とは?昼間の眠気は異常?/日本抗加齢医学会

 突然襲いかかる眠気。実はこの正体、いまだに明らかになっていないらしい―。睡眠学の世界的権威である柳沢 正史氏(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 WPI-IIIS)が、日本抗加齢医学会主催のメディアセミナーにて「睡眠の謎に挑む~基礎研究から睡眠ウェルネスへ~」と題し、現時点でわかっている眠気の正体、われわれが誤解している睡眠の実態などについて解説した。

糖尿病患者の認知症リスク低減、GLP-1薬とSGLT2阻害薬に違いは?

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)およびSGLT2阻害薬と2型糖尿病患者のアルツハイマー病およびアルツハイマー病関連認知症(ADRD)のリスクを評価した結果、両剤はともに他の血糖降下薬と比較してADRDリスクの低下と関連しており、GLP-1薬とSGLT2阻害薬の間には有意差は認められなかったことを、米国・University of Florida College of PharmacyのHuilin Tang氏らが明らかにした。JAMA Neurology誌2025年4月7日号掲載の報告。  GLP-1薬およびSGLT2阻害薬とADRDリスクとの関連性はまだ確認されていない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1薬およびSGLT2阻害薬に関連するADRDリスクを評価するために、2014年1月~2023年6月のOneFlorida+ Clinical Research Consortiumの電子健康記録データを使用して、無作為化比較試験を模倣するターゲットトライアルエミュレーションによる検証を実施した。対象は50歳以上の2型糖尿病患者で、ADRDの診断歴または認知症治療歴がない者とした。ADRDは臨床診断コードを用いて特定した。

FUS-ALSの治療、jacifusenが有望/Lancet

 融合肉腫(fused in sarcoma:FUS)の病原性の変異体に起因する筋萎縮性側索硬化症(FUS -ALS)において、FUS pre-mRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤であるjacifusenは、安全で有効性が期待できる治療薬となる可能性があることが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのNeil A. Shneider氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月22日号で報告された。  研究グループは、FUS-ALSの治療におけるjacifusenの安全性、薬物動態、バイオマーカー、臨床データ、病理所見などの評価を目的に、医師主導型の多施設共同非盲検症例集積研究を行った(ALS Associationなどの助 融合肉腫(fused in sarcoma:FUS)の病原性の変異体に起因する筋萎縮性側索硬化症(FUS -ALS)において、FUS pre-mRNAを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチド製剤であるjacifusenは、安全で有効性が期待できる治療薬となる可能性があることが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのNeil A. Shneider氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年5月22日号で報告された。