神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:9

認知機能の低下抑制、マルチビタミンvs.カカオ抽出物

 市販のマルチビタミン・ミネラルサプリメント(商品名:Centrum Silver、以下「マルチビタミン」)の連日摂取が高齢者の認知機能に与える影響を詳細に調査したCOSMOS-Clinic試験の結果、マルチビタミンを摂取した群では、プラセボとしてカカオ抽出物(フラバノール500mg/日)を摂取した群よりも2年後のエピソード記憶が有意に良好で、サブスタディのメタ解析でも全体的な認知機能とエピソード記憶が有意に良好であったことを、米国・Massachusetts General HospitalのChirag M. Vyas氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌2024年3月号掲載の報告。

塩分摂取と認知症リスク~メンデルランダム化研究

 観察研究では、食事による塩分摂取と認知症の発症リスクに潜在的な関連性があることが示唆されている。しかし、これらの研究では、逆因果関係や残留交絡因子の課題が発生しやすいことに注意を払う必要がある。中国・山西医科大学のKe Shi氏らは、塩分摂取と認知症リスクとの因果関係を調査するため、2サンプルメンデルランダム化(MR)研究を実施した。Genes & Nutrition誌2024年3月15日号の報告。  食事による塩分摂取と認知症リスクとの因果関係を調査するため、MR研究にサマリー統計を組み込んだ。塩分摂取と全体的な認知症、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症など、さまざまなタイプの認知症リスクとの因果関係を推定した。主要なMR分析として、逆分散加重法を用いた。感度分析には、MR-PRESSO法、Leave-one-out法を採用した。多面性および異質性の検証には、MR-Egger intercept、コクランQ検定をそれぞれ用いた。

日本人高齢者、高感度CRPと認知症が関連

 血清高感度C反応性蛋白(CRP)とアルツハイマー病などの認知症との関連についての報告は一貫していない。今回、愛媛大学の立花 亜由美氏らが全国8地域の高齢者約1万人を調査したところ、血清高感度CRP値の上昇が認知症全体やアルツハイマー病と関連し、側頭皮質萎縮のリスクの増加とも関連することが示唆された。Scientifc Reports誌2024年3月28日号に掲載。

高齢入院患者のせん妄、認知症リスクが増加/BMJ

 認知症がなく、せん妄のエピソードを少なくとも1回経験している65歳以上の入院患者が初発の認知症の診断を受けるリスクは、せん妄のない患者のほぼ3倍に達し、せん妄のエピソードが1回増えるごとにリスクが20%増加することが、オーストラリア・クイーンズランド大学のEmily H. Gordon氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年3月27日号で報告された。  研究グループは、認知症のない高齢患者におけるせん妄と認知症発症との関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(オーストラリア国立保健医療研究評議会[NHMRC]の助成を受けた)。

3つのプロゲストーゲン、髄膜腫の新たなリスク因子に/BMJ

 高用量プロゲストーゲン(nomegestrol acetate、クロルマジノン、cyproterone acetate)は、頭蓋内髄膜腫のリスク因子として知られているが、他の多くのプロゲストーゲンのリスクの評価はなされていなかった。French National HealthのNoemie Roland氏らは、今回、新たにmedrogestone、メドロキシプロゲステロン酢酸エステル、promegestoneの長期使用が髄膜腫の過剰なリスクと関連し、プロゲステロン、ジドロゲステロン、子宮内レボノルゲストレル放出システムにはリスクの上昇はみられず安全であることを示した。研究の成果は、BMJ誌2024年3月27日号に掲載された。

米国頭痛学会声明、片頭痛に対するCGRP標的療法の位置付け

 これまで第1選択治療として考えられてきたすべての片頭痛の予防的治療は、他の適応症のために開発され、その後片頭痛予防にも採用されている。これらの治療法は、有効性および忍容性の問題によりアドヒアランス低下が懸念されていた。前臨床および臨床エビデンスよりカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が片頭痛発症に重要な役割を果たしていることが示唆され、いくつかの片頭痛特異的な治療法が開発された。これらのCGRPをターゲットとした治療法は、片頭痛のマネジメントに革新的な影響を及ぼしたものの、第1選択治療として広く普及しているとはいえない。米国・UCLA Goldberg Migraine ProgramのAndrew C. Charles氏らは、米国頭痛学会から表明された片頭痛予防に対するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)をターゲットとした治療法に関する最新情報を報告した。Headache誌オンライン版2024年3月11日号の報告。

アトピー性皮膚炎は小児の学習・記憶に影響するか?

 米国で行われた横断研究において、アトピー性皮膚炎を有する小児は、学習障害と記憶障害が報告される割合が高いことが示唆された。ただし、その関連性は、主に注意欠如・多動症(ADHD)や限局性学習症といった神経発達症を併存する子供に限定されることも示された。米国・メリーランド大学医学校のEmily Z. Ma氏らが、JAMA Dermatology誌オンライン版2024年3月6日号で報告した。先行研究でアトピー性皮膚炎は小児の認知機能障害と関連することが示唆されているが、それらの研究では認知機能の評価を、症状ではなく神経発達の診断で代用している。したがって、アトピー性皮膚炎の小児が、認知機能障害のリスクが高いかは不明であった。著者は、「今回の結果から、アトピー性皮膚炎を有する小児の認知機能障害に関するリスク分類を改善できる可能性があり、アトピー性皮膚炎と神経発達症がある小児では認知機能障害の評価を優先すべきであることが示唆された」と述べている。

85歳以上のアルツハイマー病患者の認知機能に関連する因子と脳画像の特徴

 85歳以上の超高齢者のアルツハイマー病における認知機能低下の根底にある病態生理学は、これまで明らかになっていない。総合東京病院 認知症疾患研究センターの羽生 春夫氏らは、超高齢者のアルツハイマー病における認知機能に関連する因子と脳画像の特徴を明らかにするため、本研究を実施した。Journal of the Neurological Sciences誌2024年3月15日号の報告。  対象は、アルツハイマー病の可能性のある連続した外来患者456例(男性:145例、女性:311例、年齢範囲:51~95歳)。対象者は、74歳以下、75~84歳、85歳以上のサブグループに分類した。人口統計学的要因(教育レベル、初診時の罹病罹患、BMI、併存疾患、フレイル、余暇活動など)、画像検査の特徴(内側側頭葉の萎縮、白質病変、梗塞の重症度、脳低灌流の頻度など)の違いをサブグループ間で比較した。

空間ナビゲーション機能の障害はアルツハイマー病の初期兆候か

 バーチャル空間でのナビゲーションが困難な中高年は、将来、アルツハイマー病(Alzheimer disease;AD)を発症するリスクが高まる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)認知神経科学研究所のCoco Newton氏らによるこの研究の詳細は、「Alzheimer's & Dementia: The Journal of the Alzheimer's Association」に2月29日掲載された。  嗅内皮質はADで最初に神経変性が現れる皮質領域であり、その変性は嗅内皮質のグリッド細胞の機能不全と関連することが知られている。グリッド細胞は、経路統合(path integration;PI)能力をベースにした空間行動に関与している。PI能力とはナビゲーション機能の一形態で、自分の運動を手がかりに環境での位置を推定する能力のことである。

新型コロナウイルス感染症の認知機能障害は徐々に軽症化している(解説:岡村毅氏)

イングランドで80万例を対象にした、新型コロナウイルス感染症と認知機能の大規模調査である。まだよくわかっていないことの全体像をつかむための研究であり、規模が大きく、情報の確度も高く、適切な時期に適切な報告がなされたと思う。対象者は、期間(無症状/4週以内に完治/12週以内に完治/12週以上かかったが完治/12週以上かかってまだ症状がある)、感染株(オリジナル/アルファ/デルタ/オミクロン)、医療(救急受診/入院/集中治療室)などで分類している。認知機能は、直後再生、空間記憶、語義、抽象思考、空間操作、遅延再生などをみっちりとられる。なかなか大変である。まず、認知機能の全体を見ると、2020年1月に始まった世界的流行であるが、それから時間がたてばたつほどに感染者の認知機能低下は軽くなっている。古い株ほど、また症状の期間が長いほど、認知機能低下は重度である。常識的な結果といえる。