脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:101

『てんかん診療ガイドライン2018』発刊

 前回のガイドライン発刊から約8年。その間に、新規治療薬の登場や適応追加、改正道路交通法など、てんかんを取り巻く環境は大きく変化している。2018年7月2日、大塚製薬株式会社が主催したプレスセミナー「てんかん診療ガイドライン2018」にて、てんかん診療ガイドライン作成委員会委員長の宇川 義一氏(福島県立医科大学 神経再生医療学講座教授)が登壇し、日本神経学会が監修したガイドラインの主な改訂点について語った。  本ガイドラインは、2部で構成されている。第1部は診療ガイドライン、第2部では3つのクリニカルクエスチョン(CQ)に対してシステマティック・レビュー(SR)を行っている。また、エビデンスの質の評価は、GRADE working groupが提唱する方法で行い、「高(high)」「中(moderate)」「低(low)」「非常に低(very low)」にグレーディングされている。

経済レベルの異なる国々における脳卒中診療パターンと転帰(中川原譲二氏)-883

低・中所得国では脳卒中が人々にもたらす影響にはばらつきがある。高所得国では、脳卒中の診療と転帰における改善が報告されているが、低・中所得国での診療の状況と転帰についてはほとんど知られていない。著者ら(英国・グラスゴー大学のPeter Langhorne氏ら)は、経済レベルの異なる国々における実施可能な診療のパターンと患者転帰との関係を比較検討した。

気管切開の事故防止に向け提言 医療安全調査機構

 気管切開チューブ挿入患者のケアには常に注意を要するが、とくに気管切開術後早期*のチューブ交換時に、再挿入が困難になるリスクが高いことから、日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)では、この時期のチューブ逸脱・迷入による事故防止のための提言(医療事故の再発防止に向けた提言 第4号)を公表している(6月5日)。逸脱を防ぐための移動・体位変換時の注意事項や、逸脱・迷入が生じてしまったときの具体的対応などについて、以下の6つの提言が示された。

ダビガトランが非心臓手術後心筋障害の合併症リスク抑制/Lancet

 非心臓手術後心筋障害(MINS:myocardial injury after non-cardiac surgery)を呈した患者に対し、ダビガトラン(商品名:プラザキサ)110mgの1日2回投与が、重大出血の有意な増大を認めることなく主要血管合併症(血管死、非致死的心筋梗塞など)のリスクを抑制することが、カナダ・マックマスター大学のP J Devereaux氏らによる国際無作為化プラセボ対照試験「MANAGE試験」の結果、明らかにされた。ダビガトランは周術期静脈血栓塞栓症を予防するが、MINS患者の血管合併症に有用であるかはこれまで検討されていなかった。MINS患者は世界で年間800万人に上ると推計され、術後2年間に心血管合併症や死亡リスクの増大が認められている。著者は今回の結果を受けて、「ダビガトラン110mgの1日2回投与により、それら患者の多くを助ける可能性が示された」とまとめている。Lancet誌2018年6月9日号掲載の報告。

気持ちはわかるがもったいない臨床試験!(解説:後藤信哉氏)-878

世の中の活動には、税金を使うpublic sectorと個人の投資によるprivate sectorがある。特許が切れていない新薬、医療デバイスなどを用いた試験は、試験の結果により大儲けするスポンサーがあるのでprivate sectorである(日本のAMEDにはpublicとprivateの混同があると筆者は思う)。スポンサーは投資であるから、儲けにつながる結果を得たい。その気持ちはすごくわかる。ランダム化比較試験による仮説検証は、巨大なビジネスであるとともに大切な臨床科学でもある。本試験の仮説は臨床的にきわめて重要である。スポンサーの気持ちもわかるし、試験のルールもわかるけれども、本研究は仮説が魅力的であるだけに最後まで施行してほしかった。

地中海食は心血管イベントを抑制する/NEJM

 心血管リスクが高い集団を対象とした試験で、低脂肪食事療法に割り付けた群よりも、エキストラヴァージンオリーブオイル(EVOO)またはナッツを一緒に補充する地中海式食事療法に割り付けた群のほうが、主要心血管イベントの発生率は低いことが、スペイン・バルセロナ大学のRamon Estruch氏らによる多施設共同無作為化試験「PREDIMED試験」の結果、示された。これまで行われた観察コホート研究や2次予防試験では、地中海式食事療法の順守状況と心血管リスクについて負の相関が示されている。PREDIMED(Prevencion con Dieta Mediterranea)試験の結果は2013年にジャーナル発表されたが、無作為化割り付けに関する分析方法の不備から著者らが同論文を取り下げ、今回あらためて修正解析の結果を発表した。NEJM誌オンライン版2018年6月13日号掲載の報告。

発症時間不明の脳梗塞、MRIミスマッチを根拠とするrt-PA静注療法で転帰改善か(中川原譲二氏)-871

現行ガイドラインの下では、アルテプラーゼ静脈療法は、発症から4.5時間未満であることが確認された急性脳梗塞だけに施行されている。ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのGotz Thomalla氏らは、発症時間が不明だが、MRIによって発症が直近の脳梗塞と示唆された患者について、アルテプラーゼ静脈療法にベネフィットがあるかを検討した(多施設共同無作為化二重盲険プラセボ対照試験「WAKE-UP試験」)。その結果、発症時間不明の急性脳卒中患者において、脳虚血領域のMRIによる拡散強調画像(DWI)とFLAIR画像のミスマッチを根拠に行ったアルテプラーゼ静脈療法は、プラセボ投与と比べて、90日時点の機能的転帰は有意に良好であることが示された。ただし、頭蓋内出血は数的には多く認められた(NEJM誌オンライン版2018年5月16日号)。