統合失調症に対するベンゾジアゼピン、最新レビュー知見 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2012/12/03 統合失調症に対するベンゾジアゼピンの有効性と安全性について、システマティックレビューの結果、単独療法あるいは併用療法ともに投与に関する確実なエビデンスは現時点では確認できなかったことが、ドイツ・ミュンヘン工科大学付属病院Rechts der Isar ClinicのMarkus Dold氏らにより報告された。ベンゾジアゼピンの超短時間の鎮静効果、および急性期の興奮状態の統合失調症患者に対し鎮静のための投与を考慮すべきであるというエビデンスの質は低かったことが示されたという。Cochrane Library 2012年11月14日の発表報告。 研究グループは2011年2月に、以前に行った文献調査(2005年3月)のアップデートを行った。文献検索はCochrane Schizophrenia Groupの試験レジスターを対象とし(言語の規制なし)、関連研究の参考文献調査や、不明データを入手するため論文著者への連絡なども行った。選択適格基準は、統合失調症や統合失調症様精神病(両方またはどちらか)の薬物療法として、ベンゾジアゼピン(単独、併用含む)と抗精神病薬またはプラセボを比較した全無作為化試験とした。解析はMDとCLのレビュワーが独立的に行った。二分変数アウトカムについてリスク比(RR)と95%信頼区間(CI)を算出し、連続データを平均差(MD)と95%CIを用いて解析し、組み込んだ試験(バイアスリスクツール適用)からの事前選択アウトカムをそれぞれ評価した。 主な内容は以下のとおり。 ・レビューには、34試験(2005年解析より3試験増)、2,657例が組み込まれた。大半の試験は、サンプル数が少なく、短期試験で、アウトカムデータが不完全であった。 ・プラセボと比較したベンゾジアゼピン単独療法に関する試験は8試験であった。 ・重大臨床的効果がみられなかった被験者の割合は、ベンゾジアゼピン群とプラセボ群で有意な差はみられなかった(382例、6試験、RR:0.67、95%CI:0.44~1.02)。評価結果は、全身・精神状態のさまざまな評価スケールが用いられており整合性がなかった。 ・抗精神病薬単独療法とベンゾジアゼピン単独療法とを比較した試験は14試験であった。 ・重大臨床的効果の評価において、統計的に有意な差がみられた試験グループはなかった[(30分)44例、1試験、RR:0.91、95%CI:0.58~1.43、(60分)44例、1試験、0.61、0.20~1.86、(12時間)66例、1試験、0.75、0.44~1.30、(プール短時間試験)112例、2試験、1.48、0.64~3.46]。 ・抗精神病薬群と比べてベンゾジアゼピン群のほうが、20分、40分時点で至適な鎮静を得られた被験者が有意に多かった。全身・精神状態や副作用の発生について、有意な群間差は確認できなかった。 ・抗精神病薬+ベンゾジアゼピンを併用した増強療法と抗精神病薬単独療法とを比較した試験は20試験であった。重大臨床的効果があり統計的に有意な改善が示される可能性があったのは、併用療法での最初の30分だけであった[(30分)45例、1試験、RR:0.38、95%CI:0.18~0.80、(60分)45例、1試験、0.07、0.00~1.03、(12時間)67例、1試験、0.85、0.51~1.41、(プール短時間試験)511例、6試験、0.87、0.49~1.54]。 ・全身・精神状態の解析は、30分、60分時点での至適な鎮静を除いて、群間差は示されなかった[(30分)45例、1試験、RR:2.25、95%CI:1.18~4.30、(60分)45例、1試験、1.39、1.06~1.83]。 ・ベンゾジアゼピン治療に対する忍容性は、全体に漸減率が測定されたことで問題はないようであった。副作用は概してあまり報告がなかった。統合失調症でのベンゾジアゼピン治療(とくに長期的な併用戦略)のエビデンスを明らかにするために、さらなる質の高い規模の大規模な研究プロジェクトが求められる。 関連医療ニュース ・ベンゾジアゼピン系薬剤の使用で抗精神病薬多剤併用率が上昇?! ・アルツハイマー病の興奮、抗精神病薬をどう使う? ・ベンゾジアゼピンと認知症リスクの関連 (ケアネット) 原著論文はこちら Dold M et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Nov 14. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関連性が示唆された 医療一般(2018/11/20) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 薬物療法を要する院外心停止者の血管アクセス、骨髄路vs.静脈路/NEJM(2024/11/15) 自殺リスク、曜日や祝日との関連は?/BMJ(2024/11/15) 日本の頭痛外来受診患者、頭痛の種類や特徴は?(2024/11/15) EPA製剤など、重大な副作用に「心房細動、心房粗動」追加/厚労省(2024/11/15) 改訂GLに追加のNSCLCへのニボルマブ+化学療法+ベバシズマブ、OS・PFS最終解析結果(TASUKI-52)/日本肺癌学会(2024/11/15) 乳がん患者の妊娠・出産のためのタモキシフェン中断についてステートメント公表/日本がん・生殖医療学会(2024/11/15) 超低出生体重児の動脈管開存症に対するカテーテル治療の短期予後は外科手術よりわずかに良好(2024/11/15) 自宅で行う脳刺激療法がうつ病の症状を軽減(2024/11/15) [ あわせて読みたい ] Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07) 薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30) 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12) 「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24) 柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24) 松戸市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/20) シネマセラピー ~シネマにみるメンタルヘルス~(2013/04/26)