農薬によるパーキンソン病発症リスクの高い遺伝子多型は

提供元:ケアネット

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公開日:2014/02/20

 

 環境毒物によるパーキンソン病発症機序を考えるうえで、アルデヒド脱水素酵素(以下ALDH)の阻害が、とくに遺伝的に脆弱な集団において重要であることが、米国・UCLAデイヴィッド・ゲフィン医科大学院のArthur G Fitzmaurice氏らによって明らかとなった。Fitzmaurice氏らは今回の結果から、パーキンソン病の発症率を減らす、もしくはその進行を遅らせるための潜在的な介入の可能性を示唆している。Neurology誌2014年2月4日号掲載の報告。
 本研究の目的は、環境もしくは遺伝による神経細胞ALDHの変化が、疫学的研究においてパーキンソン病発症リスクの増加に関連しているかどうかを検討することであった。

 神経細胞のALDH活性を阻害しうる農薬を同定するために、生体外(ex vivo)で実施する新しい分析法が開発された。同定された農薬は、集団ベースの症例対照研究であるParkinson's Environment & Genes (PEG) Studyにおいて、パーキンソン病との関連を調べるために用いられた。ミトコンドリアALDH2遺伝子における共通変異は、遺伝子多型による農薬の影響をみるための効果測定の調節(統計的な相互作用)を評価するための遺伝子型として用いられた。

 ※PEG研究:UCLAを中心とした複数の研究グループが共同で実施している、農業用の化学物質とパーキンソン病との関連を調べるための臨床試験
http://www.ph.ucla.edu/peg/index.html

 主な結果は以下のとおり:

・試験対象となった金属配位性ジチオカルバミン酸化合物のすべて(例:maneb、ziram)、2-イミダゾール化合物(benomyl、triflumizole)、2-ジカルボキシミド化合物(captan、folpet)、および1-有機塩素系化合物(dieldrin)が、おそらく代謝副産物(例:二硫化炭素、チオホスゲン)を経て、ALDH活性を阻害した。

・スクリーニングした15種類の農薬は、ALDHを阻害しなかった。

・ALDHを阻害する農薬への曝露は、パーキンソン病発症のリスクを2倍から6倍に増加させ、とくにALDH2の遺伝的変異をもつ群では、パーキンソン病発症リスクが高かった。

(ケアネット 岸田有希子)