双極性障害I型およびII型は、現在の標準治療が行われている場合でも、うつ病を認める患者の割合が著しく高い。双極性障害I型患者では、病気の経過中または発症時から治療を受けていてもフォローアップ期間の50%において有症状を認め、未解決の症状の75%はうつ病である。一方で、典型的な双極性うつ病の特徴として、抗うつ薬治療への反応が不良で治療抵抗性うつ病(TRD)を呈したり、抗うつ薬による躁病の発症リスクがきわめて高いこと、などが広く認識されている。しかし、このことは、利用可能な研究報告で一貫した支持を得ているわけではない。米国・マクリーン病院のLeonardo Tondo氏らは、双極性障害において高頻度に認められるTRDについて、関連研究を調べた。その結果、比較試験はわずか5件であったが、無比較試験10件も含めた利用な可能な研究から、双極性障害のTRDは必ずしもすべての治療に抵抗性ではなく、抗うつ薬は有効である可能性が示唆されたという。また、抗うつ薬により躁転リスクが高まるとの懸念に対しては、その程度はさほど大きくないとの見解を示した。Current Psychiatry Reports誌2014年2月号の掲載報告。
研究グループは、TRDは単極性の気分障害と比較して双極性障害でより高頻度に認められること、また、単極性うつ病の特徴と治療については比較的強い関心が向けられているが双極性障害のTRDに関する研究は少ないことから、同関連研究について調査した。
主な結果は以下のとおり。
・わずかに5件の比較試験と、10件の無比較試験が存在しただけであった。
・それら試験から計13薬剤の治療データが得られた。各薬剤とも1~2件の試験が実施されていた。87%が併用療法への追加効果をみたものであり、無比較試験であった。
・2件の比較試験において、ケタミンのプラセボに対する優越性が示されたが、同薬は短時間作用性であり、経口投与の場合はうつ病に対する活性は示されなかった。
・1件の比較試験で、プラミペキソールがプラセボと比較して若干優れていることが示された。
・3つのその他製剤は、コントロールに比べて優れているという結果は得られなかった。
・その他の薬物療法については適切な評価が行われておらず、非薬物療法に関しては双極性障害のTRDに対する実質的な検討は行われていなかった。
・入手可能な研究から次のような見方が裏付けられた。
1)双極性うつ病に対して抗うつ薬が有効である可能性がある
2)抗うつ薬に伴う躁転リスクは特発性の躁病リスクと比べればさほど大きくない
3)双極性障害のTRDは必ずしもすべての治療に抵抗性ではない などである。
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