人種による褐色脂肪細胞量の違いが糖尿病発症に関与

提供元:ケアネット

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公開日:2014/04/18

 

 南アジア人は白人に比べ2型糖尿病になるリスクが高いことが知られている。こうしたことから、オランダ・ライデン大学医療センターのLeontine E H Bakker氏らは、褐色脂肪細胞※(BAT)の量と活動を評価し、人種間での2型糖尿病の発生の違いについて調査した。その結果、褐色脂肪細胞量が少なく、基礎代謝の低い南アジア人のほうが2型糖尿病になるリスクが高いということが示された。The Lancet Diabetes & Endocrinology誌2014 年3月号(オンライン版2013年11月12日号)の掲載報告。
※褐色脂肪細胞(BAT):脂肪酸を燃焼させることによるエネルギー代謝や、グルコースによる熱生産の役割があるとされる。

 研究グループは南アジア人を祖先に持つオランダ人(南アジア人)と、白人について調査を行った。被験者は18~28 歳の肥満でない健常者で、みな同等のBMIであった。PETスキャンを用いBAT量とその活動を測定し、また安静時エネルギー消費量、非ふるえ熱産生、血清パラメータを評価した。2013年3月からの3ヵ月間に、南アジア人12人および白人11人について調査を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・常温時の安静時エネルギー消費量は、南アジア人は1日当たり1,297±123(平均±標準偏差)kcal、白人は1日当たり1,689±193 kcalとなり、南アジア人は白人に比べ32%低かった(p=0.0008)。
・寒冷曝露に対して、南アジア人患者のふるえ温度は2.0℃で白人患者よりも高かった。(p =0.0067)。また非ふるえ熱産生においては、白人で20%(p<0.0001)増加したが、南アジア人では増加はみられなかった。
・BAT量の平均と最大値それぞれに群間差は認められなかったが、総BAT量は、南アジア人が188±81(平均±標準偏差)mL、白人が287±169 mLであり、南アジア人のほうが34%低かった(p=0.04)。
・全体的にBAT量は、評価できたすべての個人における基礎安静時エネルギー消費量(β=0.44、p=0.04)と正の相関を示した。

 研究グループは、「南アジア人患者の低い安静時のエネルギー消費、非ふるえ熱産生、BAT量は、2型糖尿病や肥満といった代謝障害に対する高い罹病性の基礎となっている可能性があり、BAT量や活性の増加方法の確立はこれらの障害を予防し治療に役立つだろう」と述べている。

(ケアネット 加藤千恵)