米国・アーカンソー大学のDinesh Mittal氏らは、新規抗精神病薬の服用を開始した高齢者認知症における代謝系有害事象を検討するため、米国退役軍人省のデータを用いて後ろ向きコホート解析を行った。その結果、精神障害のない認知症患者、認知症のない精神障害患者ともに、代謝系有害事象について十分なモニタリングが行われていない状況が明らかになったことを報告した。Psychiatric Services誌オンライン版2013年5月15日号の掲載報告。
本研究は、新規抗精神病薬の服用を開始した高齢の外来認知症患者において、代謝系有害事象を検討することであった。2005年10月1日~2011年9月30日までの米国退役軍人省のデータについて後ろ向きにコホート解析を行い、米国糖尿病学会/米国精神医学会が推奨する方法で代謝系有害事象をモニタリングした。
対象は、精神障害のない60歳以上の認知症外来患者3,903例、および新規抗精神病薬を処方された認知症のない外来精神障害患者5,779例であった。認知症患者は、年齢をはじめ、あらゆる患者背景が精神疾患患者と異なっていたため、認知症患者の代謝パラメータは外来精神病患者の傾向スコアをマッチさせたサンプルと比較することとした(同じ傾向スコアをもつペア1,576例)。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時(処方日±30日)において、体重測定が行われたのは、マッチさせた認知症患者では68%、精神病患者は63.7%であった(オッズ比[OR]:1.28、95%信頼区間[CI]:1.03~1.48)。
・またモニタリング率は、血糖あるいは糖化ヘモグロビン(HbA1c)については41%対44%、低比重リポ蛋白(LDL)は24%対27%で、群間で有意な差は認められなかった。
・3ヵ月時点(±30日)において、3つの代謝パラメータすべてにおいて、認知症患者群で有意にモニタリング率が低かった。すなわち、体重のORが0.86(95%CI:0.75~0.99)、血糖またはHbA1cは0.83(同:0.71~0.97)、LDLは0.69(同:0.57~0.85)であった。
・認知症患者群および精神障害患者群ともに代謝系有害事象のモニタリング率は低く、追跡期間において認知症患者群でより低かった。
・とくに認知症患者でのモニタリング率の向上を図るべく、質の改善努力が求められることが判明した。
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(ケアネット)