うつになったら、休むべきか働き続けるべきか 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2014/09/16 うつ病を有する就業者について、疾病休業(absenteeism)と継続出勤による労働遂行能力低下(presenteeism)のコストおよび健康アウトカムについて比較した結果、サービス利用費を除くと両者間に有意な差はみられなかったことが示された。ただし、仕事によっては有意性に違いがみられた。オーストラリア・タスマニア大学のFiona Cocker氏らが、マルコフモデルを使用したコホート・シミュレーションの結果、報告した。うつ病で働き続けていてもメンタルヘルス改善は可能だが、集中力の低下や疲労感、仕事中のパフォーマンス低下によるリスクおよびコストをもたらす。しかし、出勤についてエビデンスに基づく推奨はなく、出勤が個人と事業者にもたらす有益性に関するデータは不足していた。PLoS One誌オンライン版2014年9月2日号の掲載報告。 検討では、大うつ病が報告されているオーストラリア人労働者において、一時的な休業vs. 働き続けることのコストと健康アウトカムを比較した。状態変化マルコフモデルを用いたコホート・シミュレーションで、生涯大うつ病を報告した仮定的労働者コホートについて、質の高い疫学データソースおよび既存の臨床論文から見込まれた過去1年と過去5年の間の健康状態の変化をシミュレートした。モデルアウトカムは、健康サービス、雇用に関するコスト、質を調整した生存年(QALY)で、疾病休業者と継続出勤者について算出して比較を行った。また、職業(ブルーカラーvs. ホワイトカラー)で層別化した検討も行った。 主な結果は以下のとおり。 ・うつ病の従業員当たりでみた1年間と5年間の平均コストは、疾病休業者のほうが継続出勤者よりも高額だった。たとえば5年間の平均コストは、疾病休業者が4万2,573ドル、継続出勤者は3万7,791ドルであった。 ・しかしながら、信頼区間の重複により、有意差は認められなかった。 ・雇用関連コスト(生産時間の喪失、離職者)、抗うつ薬コストおよびサービス利用コストは、疾病休業者と継続出勤者とも、ホワイトカラーで有意に高かった。 ・疾病休業者と継続出勤者との健康アウトカムの差は、ホワイトカラーにおいてのみみられた。 ・以上を踏まえて著者は、「今回の所見は、仕事に特異的なコストについて初となるエビデンスであった。これを用いて臨床医、従業員、事業者は、うつ病に関連した出勤のマネジメントを検証することが可能である。また、本所見は、従業員に働き続けることを奨励する根拠ともなるだろう」とまとめている。 関連医療ニュース 職場のメンタルヘルス、効果的な方法は:旭川医大 仕事のストレスが大きいほど、うつ病発症リスクは高い:獨協医科大学 うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Cocker F, et al. PLoS One. 2014; 9: e105430. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] HDLの質に注目した新たなアプローチ ―脂質異常症患者における高純度EPA製剤の投与意義―(2015/07/10) Dr.たけしの本当にスゴい症候診断(2015/07/07) Dr.小川のアグレッシブ腹部エコー 肝臓編(2015/05/08) 新興再興感染症に気を付けろッ!(2015/04/13) 高血圧治療を再考する ~L/N型Ca拮抗薬/ARB配合錠の選択~(2015/04/06) 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) Dr.長尾の症候から学ぶ呼吸器教室(2015/03/06)