下肢静脈瘤は世界的にみられる疾病だが日本における有病率およびリスク因子は明らかになっていない。島根大学医学部皮膚科学教室の河野 邦江氏、同教授の森田 栄伸氏らは、島根県の農村部における静脈瘤患者の実態を調査した。結果、有病率は約20%で、欧州諸国で報告されている有病率と類似しており、長時間の立ち仕事と過体重が静脈瘤を悪化させる要因になっていることなどを明らかにした。結果を踏まえて著者は、「下肢静脈瘤の予防戦略を開発していくうえで役立つ知見が得られた」とまとめている。Journal of Dermatology誌オンライン版2014年10月9日号の掲載報告。
調査は2012年、島根県の伝統的な農村地帯において健診で集めた45歳以上の男性113例、女性205例を対象としたものであった。
超音波検査で、大小伏在静脈の血流状態(逆流、閉塞)を調べ下肢静脈瘤を定義し、リスク因子をロジスティック回帰モデルで分析した。また、立ち仕事と過体重の考えられる相互作用を調べ、相乗作用指数を算出した。
主な結果は以下のとおり。
・下肢静脈瘤は被験者の20.1%で認められた(男性12.4%、女性24.4%)。
・既知のリスク因子である長時間にわたる直立姿勢の立ち仕事、BMI高値、女性、そして年齢も有意な因子であった。
・過体重(BMI 25以上)と長時間にわたる直立姿勢の立ち仕事の複合的な影響は有意であった(補正後オッズ比:3.42、95%信頼区間[CI]:1.07~10.89)。ただし、相乗作用指数の有意性は認められなかった(1.3、95%CI:0.2~8.7)。
・島根県の伝統的な農村部での下肢静脈瘤有病率は、欧州諸国で報告されている有病率と類似していた。
以上、長時間にわたる立ち仕事と過体重が、下肢静脈瘤の悪化要因であることが確認された。
(ケアネット)