発見者ピーター ピオットが語るエボラの今

提供元:ケアネット

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公開日:2014/11/03

 

 2014年10月30日、都内にて公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)メディアセミナーが開催され、エボラウイルス発見者の1人であるロンドン大学衛生熱帯医学大学院学長 ピーター・ピオット氏が「エボラ出血熱やその他の感染症への対応と課題」について講演した。記事の続編はこちら(エボラ熱“最後の1人まで終わらない”と発見者ピオット氏)。

予測できなかった今回のアウトブレイク
 エボラ出血熱は、1976年に発見されて以来25の集団発生を起こしているが、すべて数ヵ月で完全に封じ込められている。その多くはコンゴ、ウガンダなどの中央アフリカでの発生であった。今回の西アフリカで起こった最大の集団発生はすべてが異なっており、誰も予測できなかったという。

 今回のアウトブレイクの始まりは、昨年(2013年)12月 。その3ヵ月となる3月25日、WHOがギニアでエボラ集団発生が報告されたとの声明を発表。国際NGO、国境なき医師団などが急遽、発生地ギニアに入り、隔離ユニットによる診療を開始した。しかし、ギニアにおける状況はさらに悪化し6月には首都でも発生。この時点で流行は加速し、隣国リベリア、シエラレオネでも発生している。その後、さまざまな拡大防止策を実行しているが、今日に至っても集団発生は継続しており、シエラレオネ、リベリアそしてギニアの一部で発生が多い。

西アフリカの制圧が唯一の予防策
 発生地から遠く離れたスペイン、米国でもエボラによる死者が出ている。グローバルな時代の今日、流行を防止する策として国境閉鎖、渡航者のスクリーニングがあるが、科学的には有効とはいえない。唯一の予防策は、西アフリカで封じ込めることであると、ピオット氏はいう。
 しかし、ここにきて国際的な動きが始まった。今回の初めての集団発生の報告から5ヵ月を要しているものの、8月にはWHOがPublic Health Emergency of International Concern(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)を宣言した。それに伴い、各国政府も活動を開始。米・英国も軍、関係者を派遣し、発生地における病院の建設、物流サポートを開始した。

アウトブレイク制圧は初動がカギ
 この予想外の流行の背景には、初動の対応の不備があるという。ナイジェリアの数十年にわたる内戦、ギニアの政治腐敗、リベリアの医療サービスの崩壊(多くの医師が国外に去り、2010年には10万人に1人以下の医師しかいない)。これらのことが対応を遅らせ、流行がコントロールできない状態に陥らせてしまった。
 このようななか、明るい兆しもある。セネガル、ナイジェリア、コンゴでは自国でエピデミックを制圧している。これは隔離、ケア提供、接触者の検疫という非常に単純な方法によるものである。つまり、初期対応が良ければ制圧は難しくないのである。

 今日のようなグローバル世界では、いや応なく感染症の流行は台頭する。日本のような感染症の少ない国でも、流行の危険にさらされている。そのため、感染症には今後も注目し続けて欲しいと、ピオット氏は述べた。

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(ケアネット 細田 雅之)