男性型脱毛症に対してフィナステリドによる治療は安全であることが2件のメタ解析において示されたが、安全性に関する報告の質は評価されていなかった。米国・ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のSteven M. Belknap氏らはレビューを行い、男性型脱毛症に関するフィナステリドの臨床成績から得られた安全性に関する情報は非常に限られており、質が低く、系統的な偏りがみられることを報告した。著者は、「男性型脱毛症の日常診療でフィナステリドを処方された男性の多くは、FDAが男性型脱毛症の適応症を承認する根拠となったピボタル試験では除外基準に該当すると思われる。発表された臨床試験成績では、男性型脱毛症の治療におけるフィナステリドの安全性プロファイルを確立するには情報が不十分である」とまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2015年4月1日号の掲載報告。
研究グループは、MEDLINE、ClinicalTrials.govおよび大学病院の臨床データリポジトリをデータソースとして、男性型脱毛症に対するフィナステリドの臨床試験について安全性に関する報告を評価した。
試験ごとに、有害事象に関する報告の質を評価するとともに、治療群およびプラセボ群における有害事象の発現例数と種類、安全性評価期間および盲検化の適切性を評価した。
データの抽出は2人の研究者が独立して行ったうえでコンセンサスを取った。安全性に関する報告の質は、「十分」「部分的」「不十分」「有害事象に関する記載なし」で判定し、バイアスはハザード比のファンネルプロットを用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・34試験が解析に組み込まれた。安全性に関する報告が「十分」と判定されたものはなく、19試験が「部分的」、12試験が「不十分」、3試験は「有害事象に関する記載なし」だった。
・ファンネルプロットは非対称性で、性機能/生殖有害事象に関するオッズ比が低い試験が多かった。このことは、性機能/生殖有害事象の発現が過小評価されていることを示唆している。
・盲検化の適切性を評価した報告はなかった。18試験(53%)が利害関係を開示しており、19試験(56%)は製薬メーカーから資金の提供を受けていた。
・34試験中26試験(76%)は、安全性の評価期間が1年以下であった。
・臨床データリポジトリにおいて、男性型脱毛症の治療にフィナステリド(1.25mg/日以下)が用いられていた5,704例中、ピボタル試験の選択基準を満たすのはわずか31%で、33%はフィナステリドを1年以上服用していた。
(ケアネット)