国立精神・神経医療研究センターの松尾 淳子氏らは、成人発症精神障害患者における自閉症的特性/症状の存在について検討を行った。その結果、成人発症精神障害患者(大うつ病性障害[MDD]寛解例を除く)の約半数で高レベルの自閉症様特性/症状を有する割合が認められること、双極性障害および統合失調症患者では重症度と関係なく自閉症様特性/症状を認める割合が高かったこと、MDD患者ではうつ症状の重症度と自閉症様特性/症状の発生に関連を認めることなどを報告した。結果を踏まえて著者は、「最適な治療のためには、成人発症精神障害の背景にある自閉症様特性/症状を評価することの重要性が示された。前向きデザインの大規模集団によるさらなる研究が必要である」と述べている。PLoS One誌オンライン版2015年4月2日号の掲載報告。
自閉スペクトラム症は、しばしば他の精神疾患との同時発症がみられる。正常知能の小児精神疾患集団において自閉症様特性/症状が高頻度に発現することが確認されているが、成人精神疾患集団における報告はない。本研究では、成人発症のMDD、双極性障害、統合失調症等の精神障害患者において自閉症的特性/症状が高頻度に認められるか否か、そしてこうした関連が症状の重症度と独立してみられるのか否かを検討した。
対象は、25~59歳の正常知能の成人290例である(MDD125例、双極性障害56例、統合失調症44例、健常対照65例)。自閉症様特性/症状は成人用対人応答性尺度(Social Responsiveness Scale:SRS)を用いて評価した。症状の重症度は陽性・陰性症状評価尺度(Positive and Negative Symptoms Scale)、ハミルトンうつ病評価尺度(Hamilton Depression Rating Scale)やヤング躁病評価尺度(Young Mania Rating Scale)を用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・MDD寛解患者を除いた被験者の約半数は、自閉スペクトラム症の診断閾または診断閾下レベルの自閉症様特性/症状を示した。
・さらに、精神疾患患者において自閉症様特性が高レベルを示した者の割合は健常対照と比べ有意に多く、双極性障害あるいは統合失調症の寛解または非寛解であるかによる差異はなかった。
・一方、MDD寛解患者において、自閉症様特性が高レベルを示した者の発生率または程度において、健常対照と差はなかった。
・双極性障害および統合失調症成人患者ではかなりの割合で、重症度と関係なく自閉症様特性/症状が認められたが、これは自閉スペクトラム症とこれら精神疾患との間に共通の病態生理が存在することを示唆するものである。
・これに対し、MDD患者における自閉症様特性は、うつ症状の重症度と関連がみられた。
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