直腸がん患者の急性放射線障害、SNPで予測可能か

提供元:ケアネット

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公開日:2015/09/21

 

 プラスミノーゲン活性化阻害因子1型(PAI-1)およびプロテアーゼ活性化受容体-1(PAR-1)遺伝子の一塩基多型(SNP)は、骨盤照射治療を受けた直腸がん患者の急性障害と関連性があることを、中国、上海にある復旦大学上海がんセンターのHui Zhang氏らが明らかにした。OncoTargets and Therapy誌2015年8月27日号の掲載報告。

 PAI-1およびPAR-1は、腸内微小環境の重要なメディエーターであり、放射線誘発性の急性・慢性障害に関与している。PAI-1およびPAR-1の遺伝子多型が、直腸がん患者の放射線誘発性障害の予測因子であったのかどうかを評価するために、著者らは、骨盤照射治療を受けた直腸がん患者356例をレトロスペクティブに評価し、放射線治療後の急性毒性とPAI-1およびPAR-1の遺伝子多型との関連性を解析した。

 皮膚炎、便失禁(肛門毒性)、血液毒性、下痢、嘔吐といった急性有害事象をスコア化し、急性毒性を解析するため、患者をグレード2以上の毒性グループと、グレード0-1の毒性グループに分類した。PAI-1およびPAR-1の6つあるSNPの遺伝子型判定は、Taqmanアッセイにより行った。ロジスティック回帰モデルは、オッズ比と95%信頼区間を評価するために使用された。

 主な結果は以下のとおり。

・356例中264例(72.5%)がグレード2以上の毒性グループであり、65例(18.3%)は、グレード3以上の毒性に達していた。

・354例中69例(19.5%)が下痢、352例中130例(36.9%)が便失禁といったグレード2以上の毒性に至った。

PAI-1におけるrs1050955のGG変形遺伝子型は、下痢や便失禁のリスクと負の関連(p<0.05)がみられたのに対し、PAI-1におけるrs2227631のAGおよびGG遺伝子型は便失禁リスクの増加と関連していた。

PAR-1におけるrs32934のCT遺伝子型は、CC対立遺伝子と比較して、総毒性のリスク増加と関連していた。

 著者らは、今後の研究で検証された場合、これらのSNPが直腸がん患者における急性放射線障害を予測するための有用なバイオマーカーとなりうるかもしれない、また、個々に合わせた治療戦略(モニタリング、治療、毒性回避)となるよう放射線治療を受ける前に、重篤な副作用を発症する可能性のある患者を同定するうえで有用かもしれないとまとめている。

(ケアネット 佐藤 駿介)