冬季の心血管疾患による死亡率増加の原因の1つに、寒冷曝露によって引き起こされる血圧上昇がある。寒冷曝露を減らすよう、医師が家庭での暖房使用を指導することは実現可能な選択肢であるが、有効性は不明である。奈良県立医科大学の佐伯 圭吾氏らは、その有効性を調査するため、冬季にオープンラベル単純無作為化比較試験を実施した。その結果、暖房使用の指導により室内温度が有意に上昇し、高齢者の自由行動下血圧が有意に低下した。このことから、家庭の暖房に関する指導が冬季の心血管系疾患発症予防に短期的に有効であることが示唆された。Journal of hypertension誌オンライン版2015年9月12日号に掲載。
介入群の参加者には、予想される起床時刻の1時間前に、居間の暖房機器の設定温度を24℃にセットして起動することと、起床後2時間までは居間でできるだけ長く過ごすように要請した。自由行動下血圧、身体活動、起床後4時間までの室温について、ランダム切片のマルチレベル線形回帰モデルを用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・合計359人の適格な参加者(平均年齢±SD:71.6±6.6歳)を、対照群(n=173)と介入群(n=186)に無作為に割り付けた。
・年齢、性別、降圧薬、世帯収入、身体活動などの交絡因子を調整し評価したところ、介入により居間の温度は有意に上昇し(2.09℃、95%CI:1.28~2.90)、収縮期血圧および拡張期血圧は有意に減少した(4.43/2.33mmHg、95%CI:0.97~7.88/0.08~4.58mmHg)。
(ケアネット 金沢 浩子)