EGFR-TKI耐性肺がんの再生検 その現状

提供元:ケアネット

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公開日:2015/12/01

 

 EGFR-TKI耐性非小細胞肺がん(以下、NSCLC)に有効な第3世代EGFR-TKIの登場で、耐性獲得後の遺伝子変異が治療方針に大きな影響を及ぼすこととなり、同時に耐性獲得時の再生検も重要性が増すことになる。再生検は、診断時生検に比べ手技的難易度が高いといわれるものの、その実施状況についての情報は少ない。そのような中、2015年11月26日から開催された第56回日本肺癌学会において、EGFR-TKI耐性NSCLCの再生検が大きく取り上げられた。

細胞診が半数を占める先進5施設の成績
 ワークショップ「再生検」(座長:大阪府立成人病センター 今村文生氏、ディスカサント:兵庫県立がんセンター 里内美弥子氏)では、5人の演者(がん研究会有明病院 小栗知世氏、倉敷中央病院 横山俊秀氏、埼玉県立がんセンター 福泉 彩氏、大阪市立総合医療センター 津谷あす香氏、鹿児島大学 隈元朋洋氏)が、再生検の現状の研究結果を発表。5つの演題を総括して、里内美弥子氏は以下のように解説した。
 第3世代EGFR-TKI、AZD9291(osimertinib)は、本邦でも早期に臨床の舞台に現れると予想される。AZD9291の使用にあたっては、コンパニオン診断薬cobas EGFR Mutation Test v2でのEGFR変異の確認が必要である(FDA、第3世代TKI(AZD9291)を承認 参照)。
 5つの演題をまとめると、再生検の部位は、診断時と比べ原発巣からの採取が大きく減って3割程度となり、脊髄液や胸水からの採取が増えている。再生検時の手技は、診断時に比べ気管支鏡が大幅に減り、胸水および腹水穿刺が増加し半分以上を占める。また、いずれの施設も組織検体を採る難易度が高いためか、細胞診が半数程度であった。
 T790M陽性率は全体で4割程度。採取部位によって陽性率は異なり、髄液での陽性率は低かった(髄液を除くと5割程度となった)。
 EGFR変異の検査法については、今後使われるであろうCobas法での実施は少なく、発表施設中1施設のみ、他の施設はPCR Invader法であった。AZD9291のコンパニオン診断薬であるCobas法では細胞診検体は指定外であり、再生検で多くなると予想される細胞診検体に対し、どう対応していくか検討が必要となるだろう。

ハイボリュームセンターにおける再生検の現状
 次に、九州がんセンター 瀬戸 貴司氏らによる、本邦最大規模となる再生検の実態調査結果がポスターセッションで発表された。この調査は、再生検の経験がある国内の30施設における進行NSCLCの再生検の実態を調査した多施設共同後ろ向き観察研究である(胸水を用いた再生検例は対象から除外)。主要評価項目は再生検成功率(がん細胞が採取できた症例数/再生検症例数)であった。
 調査の結果、成功率は79.5%(314例/395例)であった。再生検時の検体採取部位は原発巣55.7%、転移巣30.6%であった。転移巣は診断時の9.1%と比べ大きく増加していた。再生検の採取方法は経気管支アプローチが62.0%、経皮的アプローチが29.1%で、経皮的アプローチは診断時の7.6%から大幅に増加していた。採取部位と採取方法による成功率の差はみられなかった。再生検時の合併症は5.8%であった。

 里内氏はワークショップの中で、現状の再生検の実施状況はばらつきが多いが、AZD9291の登場により、再生検は避けて通ることができないものになるだろう、と述べた。

(ケアネット 細田 雅之)