2016年3月19日、宮城県仙台市にて開催された第80回日本循環器学会学術集会の「Late Breaking Clinical Trials/Cohort Studies III」にて、長時間作用型ニフェジピンの薬剤溶出ステント(DES)留置後の冠動脈に対する保護効果を検討した無作為化前向き試験“NOVEL study”の結果が、東北大学 循環器内科学の圓谷 隆治氏より発表された。
同氏の研究グループはこれまでに、第1世代のDESによる冠動脈過収縮反応を、長時間作用型ニフェジピンの慢性投与が抑制することが動物実験で示されたことを報告している。本試験では、現在主に臨床で使用されている第2世代のDESであるエベロリムス溶出ステントを用いて、ヒトにおける同様の効果について検討された。
対象は、左冠動脈へのDES留置を予定している146例の安定狭心症患者であった。被験者を、スタチン、レニン・アンジオテンシン系阻害薬、アスピリン、クロピドグレルによる一般的な薬物治療を実施する対照群と、それらに長時間作用型ニフェジピンを追加投与する群に無作為に割り付けた。ニフェジピン群57例および対照群53例に対し、ステント留置から8~10ヵ月後、冠動脈造影のフォローアップ検査を実施し、アセチルコリン負荷試験による冠動脈の収縮反応の確認が行われた。
その結果、冠動脈過収縮反応は、非治療血管に比べ、ステントの遠位部において顕著であった(p<0.001)。また、対照群と比較して、ニフェジピン投与群においてその反応は有意に抑制された(p<0.01)。さらには、血液検査により、炎症反応に関してもニフェジピン群のみにおいて改善が認められた(p<0.05)。
圓谷氏は、本試験の対象患者は、基礎疾患などのベースライン時の特徴から、比較的高リスクであったことを説明した。そのような患者においては、血管に対するストレスが減少したとされる第2世代のDESを用いた場合でも、血管の異常反応である過収縮が認められ、それに対して長時間作用型のニフェジピンの抗炎症作用が有益な効果に関連していることを述べた。
同発表のコメンテーターである岐阜大学 循環病態学・呼吸病態学・第二内科の西垣 和彦氏は、ニフェジピンの抗炎症作用が「クラスエフェクトとしてほかのカルシウム拮抗薬にもあるのか」、また、「ステントを留置した患者の長期予後へどのような影響を及ぼすのか」、という2点が、今後のさらなる研究で明らかになることに期待を寄せた。
(ケアネット 後町 陽子)