長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬(AP)は、経口薬と比較し、いくつかの利点を有するが、日本国内で市販後初期の警戒すべき時期に起こった死亡例の報告により、安全性に対する懸念が広がってしまった。藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らは、LAI-APが統合失調症患者の死亡率に影響を与える可能性を評価するため、メタ解析を行った。Schizophrenia bulletin誌オンライン版2016年4月16日号の報告。
複数のランダム化比較試験(RCTs)において、LAI-APs vs.プラセボ、LAI-APs vs.経口抗精神病薬(OAPs)、LAI-APs単独の直接比較による3つのカテゴリーにおけるメタ解析を行った。主要評価項目である全死因死亡と合わせて、自殺による死亡も評価した。リスク比(RRs)と95%CIを算出した。
主な結果は以下のとおり。
・52報のRCTsが抽出された(53件の比較、総患者数:1万7,416例、LAI-APs:1万1,360例、OAP:3,910例、プラセボ:2,146例)。LAI-APs vs.プラセボの平均試験期間は28.9週、LAI-Aps vs.OAPsは64.5週だった。
・単独もしくは複数のLAI-APs(アリピプラゾール、フルフェナジン、オランザピン、パリペリドン、リスペリドン)の全死因死亡(RR:0.64、p=0.37)、および自殺による死亡(RR:0.98、p=0.98)ともにプラセボとの差は認められなかった。
・しかし、短期間のRCTs(13週以下)サブグループ解析のみで、LAI-APsの全死因死亡がプラセボよりも低い傾向を示した(RR:0.29、p=0.08)。
・LAI-APs(アリピプラゾール、フルフェナジン、ハロペリドール、オランザピン、パリペリドン、リスペリドン、zuclopenthixol)の全死因死亡(RR:0.71、p=0.30)、および自殺による死亡(RR:0.94、p=0.91)ともにOAPsとの差は認められなかった。
・各LAI-APsとOAPsの死亡リスクは同様であった。
・LAI-APsの直接比較のデータは不十分であった。
結論として、全死因死亡、自殺による死亡ともに、LAI-APsとプラセボもしくはOAPsとの間に有意な差は認められなかった。
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(鷹野 敦夫)