これまで、アジア人集団で経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の安全性と有効性を十分に評価した無作為化試験や観察研究は報告されていない。アジア人での解剖学的特徴からTAVRの安全性と有効性が懸念されていたが、今回、日本を含むアジアTAVRレジストリで臨床アウトカムを評価したところ、既報の試験や観察研究と比べて良好な結果が得られたことを、韓国・アサン医療センターのSung-Han Yoon氏らが報告した。JACC Cardiovascular interventions誌2016年5月9日号に掲載。
本研究は、アジア5ヵ国でTAVRを受けた大動脈弁狭窄症患者を登録した、アジアTAVRレジストリによる国際多施設共同研究である。
主な結果は以下のとおり。
・5ヵ国11施設で2010年3月~2014年9月に計848例が登録され、STSスコアの平均は5.2±3.8%であった。
・患者の64.7%にEdwards社のSapien、また35.3%にMedtronic社のCoreValveがそれぞれ移植された。
・手技成功率は97.5%であった。
・30日および1年死亡率はそれぞれ2.5%と10.8%であった。
・デバイス間の1年死亡率に差はなかった(Sapien 9.4%、CoreValve 12.2%、log-rank p=0.40)。
・脳卒中、致死的な出血、主要な血管合併症、急性腎障害(ステージ2~3)の発生率は、それぞれ3.8%、6.4%、5.0%、3.3%であった。
・中等度または重度の弁周囲漏出はCoreValveがSapienより有意に多かった(14.4% vs.7.3%、p=0.001)。
・多変量モデルによる解析では、「より高いSTSスコア」「より低いBMI」「NYHA心機能分類III~IV」「糖尿病」「脳血管障害の既往」「ベースライン時の低い平均圧較差」「中等度または重度の弁周囲漏出」が生存率の低下と有意に関連していた。
(ケアネット 金沢 浩子)