TAVRの大動脈弁置換術の5年転帰/NEJM

手術リスクが中等度の重症大動脈弁狭窄症患者において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)と外科的大動脈弁置換術(SAVR)の5年後では、死亡または後遺障害を伴う脳卒中の発生率に有意差は確認されなかった。米国・シダーズ・サイナイ医療センターのRaj R. Makkar氏らが、無作為化試験「Placement of Aortic Transcatheter Valves(PARTNER)2コホートA試験」の結果を報告した。重症大動脈弁狭窄症で手術リスクが中等度の患者における、TAVR後の長期的な臨床転帰や生体弁機能については、SAVRと比較したデータが不足していた。NEJM誌オンライン版2020年1月29日号掲載の報告。
中等度リスクの重症大動脈弁狭窄症患者約2,000例でTAVR vs.SAVR
研究グループは2011年12月~2013年11月の期間に、57施設において中等度の手術リスクがある重症の症候性大動脈弁狭窄症患者2,032例を登録した。予定された経大腿動脈アクセスまたは経胸腔アクセス(それぞれ76.3%と23.7%)で患者を層別化し、TAVR群またはSAVR群のいずれかに無作為に割り付け、臨床アウトカム、心エコーおよび健康状態の転帰について5年間追跡調査を行った。主要評価項目は、全死亡または後遺障害を伴う脳卒中(修正Rankinスコア2点以上で、ベースライン時から脳卒中後30日/90日までに1点以上の上昇)とした。統計解析はintention-to-treat集団を対象とし、log-rank検定とKaplan-Meier法を用いた。
TAVR群とSAVR群で死亡や後遺障害を伴う脳卒中の発生率に有意差なし
5年時において、全死亡または後遺障害を伴う脳卒中の発生率にTAVR群とSAVR群との間で有意差は確認されなかった(47.9% vs.43.4%、ハザード比[HR]:1.09、95%信頼区間[CI]:0.95~1.25、p=0.21)。経大腿動脈アクセスのコホートでは同様の結果であったが(44.5% vs.42.0%、HR:1.02、95%CI:0.87~1.20)、死亡または後遺障害を伴う脳卒中の発生率は、経胸腔アクセスのコホートにおいてはTAVR群がSAVR群よりも高率であった(59.3% vs.48.3%、1.32、1.02~1.71)。
5年時点では、TAVR群がSAVR群と比較して、軽度以上の弁周囲大動脈弁逆流の割合が高値であった(33.3% vs.6.3%)。施術後の再入院率はTAVR群がSAVR群よりも高く(33.3% vs.25.2%)、大動脈弁の再介入率もTAVR群がSAVR群よりも高かった(3.2% vs.0.8%)。5年時点の健康状態の改善は、TAVR群とSAVR群で類似していた。
なお、本試験で使用された医療機器(SAPIEN XT)は、現在は臨床使用されていない。
(医学ライター 吉尾 幸恵)
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コメンテーター : 許 俊鋭( きょ しゅんえい ) 氏
東京都健康長寿医療センター センター長
J-CLEAR評議員