2016年7月28日(木)から3日間にわたって、第14回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立って、先月、日本臨床腫瘍学会(JSMO)のプレスセミナーが開かれ、がん治療の最新動向と、今回のJSMOで注目すべき各領域のトピックが紹介された。
このうち、就労支援とサバイバーについては清田 尚臣氏(神戸大学大学院医学研究科 腫瘍・血液内科 助教)が登壇した。なお、講演資料については高橋 都氏(国立がん研究センターがん対策情報センター がんサバイバーシップ支援部)の著作による。
【高橋 都氏コメント】
近年、「がんと就労」が社会的注目を集めている。仕事は収入の糧であるだけでなく、さまざまな意味を持ち、診断後の暮らし全般(がんサバイバーシップ)に大きく影響する。
働く世代へのがん対策の充実は、第2期がん対策推進基本計画に重点課題として盛り込まれ、「がん患者・経験者の就労支援のあり方に関する検討会」でも議論された。がん診療連携拠点病院における社会保険労務士やハローワークとの連携も始まり、さらに2016(平成28)年2月には、がんを含む長期有病者の治療と職業生活の両立支援に向けた企業向けガイドラインも厚生労働省から発出された。政策の展開とともに、健康経営やダイバーシティマネジメントなどの観点から、慢性疾患を持つ労働者への支援対応は企業の経営戦略の課題にもなりつつある。
国内の複数の調査では、診断時の有職者のうち、およそ1/3~1/4の患者の離職が報告されている。疾患や治療が患者の職業生活に及ぼす影響は医学的要因だけでは決まらず、個人の背景や治療の副作用の出方、心理社会面への影響、職種や職位、働く意欲などに影響される。がんの種類や治療が同じでも、職業生活への影響には大きな個人差があることがこのテーマの特徴である。
このように、多要因に影響される治療と職業生活の両立支援においては、治療を受ける本人を中心として、医療機関、職域、地域コミュニティの関係者間の連携が欠かせない。しかし、現状は、がん就労者や職場関係者が直面する課題が徐々に明らかになってきたものの、企業関係者、医療者、労働相談の専門家(社会保険労務士、キャリアコンサルタントなど)、行政などがそれぞれの立場からどのように動くべきか、支援と連携のかたちに関する試行錯誤が続いている。
【注目演題】
本学会で、就労支援とサバイバーに関連した注目演題は、以下のとおり。
教育講演
「がんサバイバーシップの概念と最近の展開―特に多領域の連携について」
「がん患者の就労支援の現状」
日時:7月28日(木)14:40~15:25
場所:Room4(神戸国際展示場2号館3F3A会議室)
シンポジウム
「がんサバイバーシップ支援とピアサポート―がんサバイバーができること、期待すること―」
日時:7月28日(木)15:30~17:00
場所:Room4(神戸国際展示場2号館3F3A会議室)
【第14回日本臨床腫瘍学会学術集会】
会期:2016年7月28日(木)~30日(土)
会場:神戸国際展示場・神戸国際会議場
会長:南 博信(神戸大学大学院医学研究科 腫瘍・血液内科 教授)
テーマ:Breaking through the Barriers:Optimizing Outcomes by Integration and Interaction
第14回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら
(ケアネット)