生体吸収性スキャフォールド2年の結果:ABSORB Japan試験 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2016/09/20 生体吸収性スキャフォールド(以下、BVS:Bioregradable Vascular Scaffold)Absorb BVSの日本人試験であるABSORB Japan研究の2年の結果が発表された。Euro Intervention誌オンライン版2016年7月6日号の掲載報告。筆頭著者は、エラスムス大学Thoraxcenterの小沼 芳信氏。 BVSには遠隔期の血管内腔拡大、プラーク減少といった長期的な利益が期待され、近年の4つのRCT試験(ABSORB II、III、Japan、China)でBVSはコバルトクロム製エベロリムス溶出ステント(以下、CoCr-EES)に対し、1年間の非劣性を示している。長期イベントについては1年を超えるエビデンスはほとんどないものの、ケースレポートなどで超遅発性ステント・スキャフォールド血栓(以下、VLST)が報告されている。 ABSORB Japan研究は、BVSとCoCr-EESを比較した日本での多施設無作為化単盲検比較非劣性試験。今回、筆者らは2年のBVSとCoCr-EESの臨床効果を比較するとともに、OCTとIVUSのイメージングサブスタディ(125例を無作為に割り付け)を実施し、VLSTのメカニズムなどを分析した。主要評価項目は、標的病変不全(以下、TLF:Target Lesion Failure)。 主な結果は以下のとおり。 ・被験者はBVS群266例とCoCr-EES群134例に2:1で無作為に割り付けられた。 ・2年間の追跡調査の対象はBVS群261例、CoCr-EES群130例であった。 ・TLF発生率はBVS群7.3%、CoCr-EES群3.8%とCoCr-EES群で低かったが、統計学的な有意には至らなかった(p=0.18)。 ・2年間のST発生率はBVS群3.1%、CoCr-EES群1.5%とCoCr-EES群で低かったが、統計学的な有意には至らなかった(p=0.51)。 ・1年後以降のVLST発現率はBVS群1.6%(4例)、CoCr-EES群ではみられなかった。 ・BVS群のVLST4例のうち1例は抗血小板治療が行われていなかった。残りの3例のOCT所見ではストラット断絶(discontinuity)、ステント不完全圧着(malapposition)、非被覆ストラット(uncovered strut)が観察された。4例ともに比較的大きな参照血管直径の部位で発生していた。 ・ストラットが被覆されステント不完全圧着が最小限な症例では2年後の血管治癒はBVS、CoCr-EESともにほぼ完全であった。 BVSの金属ステントとの比較、VLSTのメカニズムについてはさらなる研究が必要であると筆者らは述べている。 【訂正のお知らせ】 本文内の表記を一部訂正いたしました(2016年9月20日)。 (ケアネット 細田 雅之) 原著論文はこちらOnuma Y, et al. EuroIntervention. 2016;12:1090-1101. 関連医療ニュース 生体吸収性スキャフォールド(BRS)の現状と今後の期待 生体吸収性スキャフォールド、中長期の臨床成績 スキャフォールド血栓症の傾向と対策 生体吸収性スキャフォールド留置5年の追跡結果 生体吸収性スキャフォールドの1年転帰:4つのABSORBメタ解析/Lancet 生体吸収性スキャフォールド、ABSORB IIIの結果/NEJM 新たな生体吸収性ステントは金属ステントと同等/Lancet 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 新PCIデバイスbioadaptor、アウトカム改善の可能性/Lancet(2024/11/13) 糞便中ヘリコバクター・ピロリ抗原検査を用いた検診は胃がん予防に有効か(解説:上村直実氏)(2024/11/13) 市中肺炎の入院患者、経口抗菌薬単独での有効性(2024/11/13) 本邦初、がん患者の「気持ちのつらさ」のガイドライン/日本肺癌学会(2024/11/13) 乾癬への生物学的製剤、真菌感染症のリスクは?(2024/11/13) MCIの認知機能改善に、最適な運動とその量は?~ネットワークメタ解析(2024/11/13) 尿路上皮がん1次治療の更新は30年ぶり、ペムブロリズマブ+EV併用療法とは/MSD(2024/11/13) 米国成人の10人に6人は炎症誘発性の食生活(2024/11/13) 急性白血病の発症時点でさまざまな眼科所見が観察される(2024/11/13) [ あわせて読みたい ] Dr.林の笑劇的救急問答12<上巻>(2016/10/07) Dr.加藤の「これだけ眼科」(2016/10/07) イワケンの「極論で語る感染症内科」講義 (2016/08/07) 総合内科専門医試験対策 アップデート問題はココが出る!2016 (2016/07/29) フィーバー國松の不明熱コンサルト (2016/04/07) Dr.たけしの本当にスゴい症候診断2(2016/02/07) ナベちゃん先生のだれでも読める心エコー(2015/12/07) Dr.香坂のすぐ行動できる心電図 ECG for the Action! (2015/10/07) ナベちゃん先生のだれでも撮れる心エコー(2015/09/08) HDLの質に注目した新たなアプローチ ―脂質異常症患者における高純度EPA製剤の投与意義―(2015/07/10)