良性本態性眼瞼痙攣患者や片側顔面痙攣患者の中には、感覚トリックを利用して症状を緩和させている患者もいることが知られている。感覚トリックの利用と重症度およびボツリヌス毒素療法との関連はわかっていなかったが、英国・St Mary's HospitalのCaroline L. S. Kilduff氏らによる前向き横断観察研究の結果、患者の半数は感覚トリックを利用しており、それは重症度と関連していたがボツリヌス毒素療法とは関連していないことが明らかとなったと報告した。今回の研究について著者は、「今後、たとえば感覚トリックの使用についてアドバイスしたり装置を作ったり、治療方針を考えるうえで役に立つかもしれない」とまとめている。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2016年9月8日号の掲載の報告。
対象は、2014年1月~6月に、Moorfields Eye Hospitalの附属クリニックで登録された良性本態性眼瞼痙攣患者連続74例および顔半側痙攣患者連続56例。アンケート調査および臨床評価を行い、2015年12月に解析を行った。
主要評価項目は、眼瞼痙攣および片側顔面痙攣の症状を緩和させるために感覚トリックを利用している患者の割合と種類、ジストニアの重症度およびボツリヌス毒素療法の用量や頻度であった。
主な結果は以下のとおり。
・感覚トリックの使用率は、眼瞼痙攣患者74例中39例52.7%(平均±標準偏差[SD]70.4±9.1歳)、片側顔面痙攣患者56例中25例44.6%(66.5±12.7歳)であった。
・最もよく使用されていた方法は「顔をさわる」(54.7%、35/64例)、次いで「眼を覆う」(9.4%、6/64例)、「歌をうたう」(7.8%、5/64例)、「口を大きく開ける」(7.8%、5/64例)であった。
・眼瞼痙攣患者において、感覚トリック使用患者は非使用患者より、Jankovic評価スケールのスコアが高く(スコア中央値:5 vs.4、群間差のホッジス-レーマン推定値中央値:1[95%CI:0~2]、p=0.01)、眼瞼痙攣障害指数重症度スコアも高かった(同:11 vs.4、4[95%CI:1~7]、p=0.01)。
・片側顔面痙攣患者において、感覚トリック使用患者は非使用患者より、7項目片側顔面痙攣QOL評価スケールのスコアが高く(スコア中央値:7 vs.3、群間差のホッジス-レーマン推定値中央値:4[95%CI:1~7]、p=0.01)、SMC重症度評価スケールのスコアも高かった(同:2 vs.2、0[95%CI:0~1]、p=0.03)。
・ジストニアの重症度は、眼瞼痙攣患者および片側顔面痙攣患者ともに、ボツリヌス毒素療法と相関した(それぞれr=0.23、p=0.049、およびr=0.45、p=0.001)。
・感覚トリック使用患者と非使用患者との間で、眼瞼痙攣患者(150 vs.125単位、群間差のホッジス-レーマン推定値中央値:20[95%CI:-10~70]、p=0.15)、および片側顔面痙攣患者(58 vs.60単位、同:0[95%CI:-15~20]、p=0.83)のいずれも、ボツリヌス毒素療法に差はみられなかった。
(ケアネット)