サイトカインのシグナルを伝達するヤヌスキナーゼ(JAK)の阻害が、接触皮膚炎のような炎症性皮膚疾患の治療手段となりうる可能性が報告された。京都大学の天野 渉氏らがマウスを用いた実験において、JAK阻害薬JTE-052は抗原特異的T細胞活性化とその後の接触過敏症のような皮膚の獲得免疫に対して抑制作用を示すことを明らかにした。Journal of Dermatological Science誌オンライン版2016年9月13日号掲載の報告。
研究グループは、炎症性皮膚疾患に対するJAK阻害薬の作用部位を明らかにする目的で、マウス皮膚炎モデル(接触過敏症、刺激性接触皮膚炎を含む)を用い、JAK阻害薬JTE-052の作用メカニズムを分析した。
耳組織またはリンパ節から分離した細胞をフローサイトメトリーで分析するとともに、培地のサイトカイン量をELISAまたはビーズアレイシステムで測定した。また、3Hチミジン取り込みの測定により、リンパ細胞の増加を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・JTE-052の経口投与は、感作相および惹起相のいずれにおいても接触過敏症を減弱したが、クロトンオイルで誘発された刺激性接触皮膚炎には影響を及ぼさなかった。
・JTE-052は、in vitroで、抗原提示によるT細胞の増殖と活性化を強く阻害し、T細胞移動を抑制することなく、感作リンパ球の移入モデルにおいて皮膚炎を軽減した。
・JTE-052は、ハプテンで誘発された流入領域リンパ節への樹状細胞の遊走、あるいはそれらの共刺激分子の発現には影響を及ぼさなかった。
(ケアネット)