日本メドトロニック株式会社から低侵襲の植え込み型心臓モニタReveal LINQ(リビール リンク)が2016年9月発売された。この機器は、体積比で従来品から87%小型化しており、皮下挿入型長時間心電計(以下、ICM)ともいわれる。原因が特定できない失神と潜在性脳梗塞の診断に適応を持ち、胸部皮下に挿入することで最長3年間の持続的な心電図モニタリングが可能である。また、データの自動的送信機能により遠隔からでも医師がイベントを確認できる。Reveal LINQの発売にあたり開催されたメディアセミナーにて「失神診療への貢献が期待される皮下挿入型心電計」と題し、産業医科大学 不整脈先端治療学 安部治彦氏が講演した。
ICMを失神患者の診断に使用する頻度は米国に比べきわめて少ない
失神で医療機関を受診する患者は年間で80万人と多い。これは、医療機関入院患者の1~3%、救急外来受診者の3~5%を占める。失神の原因は多様だが、原因疾患により予後は大きく異なる。なかでも、心臓突然死の原因となるなど、生命予後が非常に悪い心原性失神は失神全体の15%を占める。この心原性失神の危険因子として、基礎心疾患と共に不整脈は重要な所見である。
失神の治療は原因疾患によって異なる。とはいえ、失神は瞬間に起こる症状であり、画像所見など形としての異常が残らないため、発作の瞬間を捉える必要がある。そのため、さまざまな検査をしても原因疾患の特定に至らないことが多いのが現状である。本邦では、失神患者の診断にホルター心電図、心エコーを行う頻度が多いが、これで原因がわかることはまずない、と安部氏は言う。心臓突然死が多い米国では、この2つの検査で陰性でも、さまざまな検査と行う。なかでも、体外式長時間心電計と共に、ICMの本邦医療機関での使用頻度は米国に比べきわめて少ない。
ICMは心原性失神の原因を特定するために有用なのであろうか?安部氏は、講演の中で、産業医科大学における原因不明の失神患者に対するICMの診断有用性の評価試験の途中経過を紹介した。86例の原因不明の失神患者のうち、ICMで確定診断に至ったのは61例(71%)にのぼった。また、確定診断に至った患者のうち心原性失神は42例(64%)であった。そのなかには、長年にわたり診断がつかない再発性の失神患者も存在する。
本邦医療機関でのICMの普及遅れの背景として、失神の診断についての知識不足という医療者側の問題と共に、ICMの抵抗感による患者の拒否という要因も否めない。当デバイスは、従来に比べ1割強に小型化され、さらに挿入方法の工夫により侵襲も低くなっていることもあり、患者の抵抗感が少なくなるのではないか、と安部氏は言う。
ICMは失神の原因診断率が高い検査であり、いつ発生するかわからない失神の原因把握に有用性が高いといえる。失神は突然死の原因となるだけでなく、就労や自動車運転の制限など社会的な影響も大きい。ICMの新デバイスがこれらの問題解決の一翼を担うことを期待したい。
(ケアネット 細田 雅之)