肺がん再生検 患者の想い再確認

提供元:ケアネット

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公開日:2017/02/13

 

 2017年1月31日、第6回アストラゼネカ・オンコロジーサイエンス・メディアセミナー「肺がん患者さんの薬剤へのアクセスを考える」が開催された。

 タグリッソ(一般名:オシメルチニブ)の使用には再生検の実施が必要だが、侵襲性への懸念等から十分に実施されていない。静岡県立がんセンターでは、EGFR-TKI治療に耐性を生じた患者120例のうち、再生検未実施が45例(37.5%)であったとの報告がある。再生検実施に至らなかった理由には、アクセス不能な腫瘍部位(19例)に続き、医師の判断(10例)、患者拒否(6例)などが挙がった。

 昨年末に血漿検査(リキッドバイオプシー)が承認され、アストラゼネカ株式会社によるEGFR T790M血漿検査の倫理提供が開始されている。血漿検査は生検に比べて侵襲性が低く、これまで生検が不適合であった患者にとって福音であるものの精度は改善の余地があり、血漿検査で陰性であっても生検で陽性となることがある。患者が嫌がっているのではないかと心配して医師が再生検を実施しないことがあると考えられるが、患者は再生検を望んでいないのだろうか。意思決定にあたって患者の気持ちを知っておくことは重要である。

 このような中、「進行・再発非小細胞肺がん患者の組織採取や遺伝子検査に関する意識調査」が行われ、遺伝子検査の実施には、これまで以上に医師・患者双方による意思決定の重要性が増していることがわかった。

 演者である北里大学医学部附属新世紀医療開発センター教授/北里大学病院集学的がん診療センター長 佐々木 治一郎氏は、「進行・再発非小細胞肺がん患者への組織採取や遺伝子検査に関する意識調査」の結果を解説した。本調査では、有効回答数167例のうち102例(77.3%)の患者が、確定診断時の検査がつらかったと回答した。一方で、検査がつらかったと回答した92例のうち82例(89.2%)が、リキッドバイオプシーで陰性であった際、遺伝子変異が特定できる可能性がある場合は再度つらい思いをした組織採取を受けると回答した。

 患者の経験する検査の「つらさ」の実態とはどのようなものだろうか。上述の定量調査の対象者のうち、同意のとれた10名に対して行われた定性調査の結果がNPO法人肺がん患者の会ワンステップ代表の長谷川 一男氏より紹介された。1対1の患者インタビューを行った結果、「えずくし、咳込んでしまう」「窒息している感じ」「喉にちょっとした異物が入っただけでも違和感があるのに、そこに管が入っていく」など、組織採取時のつらさが浮き彫りになった。だが、遺伝子検査により薬剤の効果が保証されるようになった今、患者は次の治療につながるのであればつらい検査でも受けたいと考えている、と長谷川氏は自身の経験を交えて語った。

 組織採取は患者さんにとってつらい検査であるため、そのつらさを認識し、なるべく侵襲性の低い選択をすることが望まれる。一方で、つらい検査であっても、患者さんは次の治療の可能性があるのであれば受けたいと思っていることも事実である。意思決定に際し、がん細胞が持つ遺伝子情報をきちんと患者さんに提示し、その情報に基づいた治療を理解してもらうための努力が求められている、と佐々木氏は述べた。

(ケアネット 細川 千鶴)