非虚血性拡張型心筋症(DCM)の患者は、虚血性心筋症の患者と比較すると心室性不整脈のリスクが少ないかもしれない。さらに、DCMは心臓再同期療法(CRT)が奏効する指標の1つとして知られている。そこで英国のSérgio Barra氏ら研究グループが、心不全患者の1次予防として、CRTに植込み型除細動器(ICD)を追加することの有効性について、大規模研究で検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年4月号に掲載。
ヨーロッパの多施設研究、5,307人の心筋症患者を対象
本研究は、欧州における、観察型、多施設共同のコホート研究で、DCMもしくは虚血性心筋症(ICM)、かつ持続性心室頻拍の既往がない患者でCRTの植込みを受けた、連続した5,307例を対象とした。CRTに植込み型除細動器(ICD)を追加した4,037例(CRT+ICD群)と、ICDを追加しなかった1,270例(CRT単独群)に分け、プロペンシティスコアと死亡原因の解析によって両群のアウトカムを比較した。
非虚血性心筋症患者では除細動器による死亡率の改善は認められず
平均41.4 ± 29.0ヵ月のフォローアップ期間において、ICMの患者は、CRT+ICD群のほうが生存率は良好だった(プロペンシティスコアと全死亡率の予測因子で調整した死亡率のハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.62~0.92、p=0.005)。一方、DCMの患者においては、そのような差が認められなかった(HR:0.92、95%CI:0.73~1.16、p=0.49)。
CRT+ICD群と比較して、CRT単独群の超過死亡率は、ICM患者で8.0%、DCM患者では0.4%であった。
CRT-Dを非虚血性心筋症患者に植込む際には慎重な患者選択が必要
CRTの植込みが適応となる心不全患者において、ICM患者と異なり、DCMの患者はICDによる1次予防のベネフィットは受けられないかもしれない。DCMの患者におけるCRT-D(除細動器を伴った心臓再同期ペースメーカー)患者と比べて観察されたCRT-P(心臓再同期ペースメーカー)患者の超過死亡率は心臓突然死以外の原因によるものであり、この結果は最近報告されたDANISH研究の結果と一致している。著者らは、DCMで心室性不整脈の既往がない患者に対しては、CRT-Dの植込みには慎重な検討が必要であると報告している。
(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)
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