経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は、高リスクな症候性大動脈弁狭窄症(AS)患者への新たな技術として発展してきた。これまでの無作為化比較試験において、開心術が難しい、もしくは高リスクな患者に対し、TAVRを標準治療として用いることが妥当であることが証明されてきたが、形態学的な特徴を理由に、先天性二尖弁の患者は除外されてきた。
二尖弁に対するTAVRの報告は少数であるが、これまでのレジストリによれば、二尖弁AS患者の割合は2~6%に及んでいる。米国Cedar Sinai Medical CenterのSung-Han Yoonshi氏、Raj Makkar氏らは、Bicuspid AS TAVR多施設レジストリのデータを基に、二尖弁と三尖弁それぞれの患者に対する手技と臨床結果についてプロペンシティスコアマッチを用いて比較した。Journal of the American College of Cardiology誌2017年5月15日号掲載の報告。
プロペンシティスコアでマッチさせた546例の三尖弁と二尖弁のASを比較
本研究では、欧米アジアを含む33ヵ国のレジストリデータを基に、二尖弁患者561例と、三尖弁患者4,546例をプロペンシティスコアでマッチさせ、ベースライン時に同様の特徴を有する546例のペアを比較した。手技と臨床結果については、VARC-2 基準に従って記録された。
その結果、二尖弁のAS患者は、三尖弁のAS患者と比べてより高い頻度で外科手術に変更され(2.0% vs. 0.2%、p=0.006)、人工弁の留置の成功率は有意に低かった(85.3% vs. 91.4%、p=0.002)。旧世代の人工弁(Sapien XT、CoreValve)は二尖弁患者320例と三尖弁患者321例に使用され、新世代の人工弁(Sapien、Lotus、Evolut R)は二尖弁患者226例と三尖弁患者225例に使用された。旧世代の人工弁については、二尖弁の患者がSapien XTの植込みを受けた際、大動脈基部の損傷がより頻繁に起こり(4.5% vs. 0.0%、p=0.015)、CoreValveの植込みを受けた患者は、より高頻度に中等度~重度の弁周囲逆流が生じていた(19.4% vs. 10.5%、p=0.02)。一方、新世代の人工弁を植込まれた患者では、手技に関する成績は異なる種類の人工弁でも相違なく、同等であった。2年間での累積全死亡率は、二尖弁と三尖弁で同等であった(17.2% vs. 19.4%、p=0.28)。
大動脈障害を考慮した長期のフォローアップ研究が必要
三尖弁と比較して、二尖弁患者に対するTAVRは同様の予後であったが、人工弁留置の成功率は低かった。手技に伴う成績の差は、旧世代の人工弁では認められたが、新世代の人工弁では違いが認められなかった。
TAVRの適応を若くリスクが低い患者に広げることは、二尖弁のASに併存する大動脈拡大などの大動脈障害を考慮しなければならないことを意味する。著者らは、二尖弁のASに対するTAVRの評価には、これらの併存する大動脈障害と、人工弁の耐久性を長期にフォローアップした研究が必要と述べている。
(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)