化学放射線同時併用療法(CCRT)は、手術不能なIII期非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する標準治療であるが、最良の化学療法レジメンは特定されていない。S-1とシスプラチン(CDDP)の併用(SP)は進行NSCLCに対する標準化学療法レジメンの1つであり、CCRTにおける良好な成績も報告されている。day1、8に分割したドセタキセルとCDDPの併用(DP)を用いたCCRTは、旧世代のCDDPレジメンとの比較試験で、良好な結果(2年生存割合)を示しているが、全生存については有意な差は認めていない。そこで、日本医科大学の久保田 馨氏らは、NSCLC患者に対するCCRTにおいて、SPとday1のみにドセタキセル+CDDPを投与するDPの2つの併用化学療法レジメンの成績を評価するランダム化第II相試験TORG1018を行い、その結果を米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表した。
対象は手術不能なIII期NSCLC患者で、化学療法、放射線療法、外科療法歴なし。登録された患者をSP群またはDP群にランダムに割り付けた。SP群ではS-1 80~120mg/m2/日(day1~14)とCDDP 60mg/m2(day1)を4週ごとに、DP群ではドセタキセル50mg/m2とCDDP 80mg/m2(両薬ともday1)を4週ごとに投与した。同時併用する放射線療法(60Gy/30分割)は、両群ともにday1から開始した。CCRT後、両群の患者は、3週ごとの地固め化学療法をさらに2回受けた。主要評価項目は2年生存割合(2yOS)、副次評価項目は全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、毒性プロファイル、用量強度、奏効割合(ORR)。期待2yOSは65%、閾値2yOSは50%とした。
結果、2011年5月~2014年8月に、19施設から110例の患者が登録され、106例(各群53例)が評価対象となった。男性83例、女性23例、年齢中央値は65歳(42~74)であった。観察期間39.3ヵ月での2yOSはSP群で79%(95%CI:66~88%)、DP群では69%(95%CI:55~80%)であり、両群共に主要評価項目を達成した。OS中央値はSP群で55.23ヵ月、DP群で50.83ヵ月、ORRとPFSはSP群でそれぞれ71.7%、11.63ヵ月、DP群では67.9%、19.91ヵ月であった。
DP群におけるGrade3/4の白血球減少および好中球減少はSP群より有意に高かった。また、発熱性好中球減少症、肺臓炎はDP群でより高い傾向があった。毒性の少なさと共に2yOSはSP群で良好であり、将来はSPを放射線同時併用の適用レジメンとして選択する、と著者は結んでいる。
■参考
ASCO2017 Abstract
(ケアネット 細田 雅之)