妊娠初期のリチウム曝露は、幼児のEbstein奇形や全体的な先天性心疾患のリスク増加と関連している可能性があるが、そのデータは相反し、限定的である。米国・ハーバード大学医学大学院のElisabetta Patorno氏らは、メディケイドのデータより、2000~10年に出産した女性における132万5,563件の妊娠に関するコホート研究を行った。NEJM誌2017年6月8日号の報告。
妊娠第1三半期においてリチウムに曝露された幼児の心臓奇形リスクを、曝露されていない幼児と比較した。2次分析では、他の一般的に使用される気分安定薬であるラモトリギン曝露との比較を行った。リスク比(RR)および95%信頼区間(CI)は、精神医学的状態、薬物療法、他の潜在的な交絡因子に関してコントロールし、推定した。
主な結果は以下のとおり。
・心臓奇形が認められた幼児は、リチウムに曝露された663例中16例(2.41%)、曝露されていない132万2,955例中1万5,251例(1.15%)、ラモトリギンに曝露された1,945例中27例(1.39%)であった。
・リチウムに曝露された幼児における曝露されていない幼児と比較した心臓奇形に関する調整RRは、1.65(95%CI:1.02~2.68)であった。
・リチウムの用量別にみると、600mg/日以下のRRは1.11(95%CI:0.46~2.64)、601~900mg/日のRRは1.60(95%CI:0.67~3.80)、900mg/日超のRRは3.22(95%CI:1.47~7.02)であった。
・右室流出路障害の有病率は、リチウムに曝露された幼児では0.60%であったのに対し、曝露されていない幼児では0.18%であった(調整RR:2.66、95%CI:1.00~7.06)。
・ラモトリギンに曝露された幼児を対照として用いた場合、その結果は類似していた。
著者らは「妊娠初期における母親のリチウム使用は、幼児のEbstein奇形を含む心臓奇形リスクの増加と関連していた。この効果値は、以前に考えられていたよりも小さかった」としている。
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(鷹野 敦夫)