統合失調症患者のうつ症状は、臨床アウトカムに影響を及ぼす重要な症状である。岡山大学のYuto Yamada氏らは、統合失調症患者の慢性的なうつ症状や自殺関連症状が将来の臨床アウトカムと関連しているか、向精神薬使用により臨床アウトカムの改善が認められるかについて、検討を行った。Psychopharmacology誌2022年3月号の報告。
統合失調症のうつ症状に対する炭酸リチウム使用は男性で良好な臨床アウトカム
対象は、2010~11年に岡山大学病院で治療を受けた15~64歳の統合失調症の外来患者462例。最終来院時(平均年齢19.2歳)での臨床全般印象度の重症度(CGI-S)スコアと過去のうつ症状、自殺念慮、自殺企図との関連を調査した。病歴を含む複数の交絡因子による調整には、重回帰分析およびロジスティック回帰分析を用いた。
統合失調症のうつ症状や自殺関連症状と臨床アウトカムとの関連を検討した主な結果は以下のとおり。
・462例中168例(36.4%)において、統合失調症発症から2年間でうつ症状が認められた。
・自殺念慮歴および自殺企図歴は、臨床アウトカム悪化と関連していた。
・うつ症状歴と臨床アウトカム悪化との関連は、男性では認められたが、女性では認められなかった。
・統合失調症患者のうつ症状に対する炭酸リチウムの使用は、とくに男性において良好な臨床アウトカムと関連していた。
・抗うつ薬治療は、男性のみで良好な臨床アウトカムとの関連が認められた。
著者らは「統合失調症患者において、慢性的なうつ症状または過去の自殺関連症状は、将来の臨床アウトカム悪化との関連が認められた。とくに男性患者において、炭酸リチウムまたは抗うつ薬の使用は推奨される可能性が示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)