「働き方改革」は希望か、懸念か?勤務医1,000人に聞いた実態と本音

提供元:ケアネット

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公開日:2017/08/02

 

 来月召集される臨時国会の焦点となっている「働き方改革」。昨年、電通社員の過労による自死事件でにわかに長時間労働の実態と弊害がクローズアップされ、見直しの機運が高まっている。そして、この動きは医療界にも少なからず影響を及ぼすことになるだろう。ケアネットでは、CareNet.comの医師会員を対象に働き方をめぐるアンケート調査を実施し、1,000人の労働事情について聞いた。

 日本医師会をはじめ、医療団体や個別の医療機関レベルでも医師の働き方について見直しや議論が本格化しつつあるが、まずはどのような現状にあるのかを知っていただきたい。

 調査は、2017年7月3~5日、ケアネット会員のうち勤務医を対象にインターネット上で実施した。回答者の内訳は、年代別では50代が32%で最も多く、40代(30%)、30代(22%)、60代(12%)と続く。病床数別では、200床以上が71%で最も多く、以下、100~199床(19%)、20~99床(10%)。

 このうち、医師の働き方を労働基準法で規定することに賛成か、反対かを尋ねたところ、74.5%が「賛成」と答えた。その理由として、「超過勤務が当然のように横行している」「法律以外に規制の方法がない」などといったコメントが多くみられた。一方、「反対」(25.5%)と答えた理由としては、「救急医療が成り立たない」「(時間が)抑制されると最良の治療を選べなくなる」といった懸念や、「患者の理解が得られない」「患者のニーズに応えるため」など、医療者特有の事情を挙げる人もいた。このほか、「専門職であり、その能力を発揮して多く働くのは問題ない」など、医師としてのスタンスを理由とするコメントもみられた。

 また、業務に関連するものの上司や管理者から勤務時間とみなされなかった項目と、勤務時間とみなすべきと考える項目について同一内容で尋ねたところ、両者共に割合が高かったのは、「書類作成などの事務処理」、「オンコール当番」、「院内の会議」など。患者と直接は向き合っていないものの、業務として時間を拘束される状況に問題を感じている人が多いのではないかと考えられる。

 月当たりの休暇取得状況は、週換算で1日程度の「4~5日」(30.2%)が最も多く、以下、「0~1日」(23.1%)、「2~3日」(19.9%)と続き、完全な休日をほとんど取得できない勤務が常態化している様子がうかがえる。

 最も働きやすさにつながると思う項目と、最も実現しやすいと思う項目について、同一内容で尋ねたところ、働きやすさにつながるのは「休暇取得の徹底」を挙げた人が最も多い(32.8%)のに対し、実現しやすいのは「勤務時間の実態に即した残業代の支払い」と上げる人が最も多かった(42.7%)。前述したように、労基法で時間を一律に規制することが難しく、休暇取得も困難な状況下においては、労働実態と折り合いを付ける妥協点として、適切な残業代の支払いを求める人が多いことがうかがえる。

 アンケート調査では、勤務時間や残業代をめぐるトラブル事例や労働状況に対する意見を記述してもらった。その中には、「25年間365日のオンコール待機がまったく評価されなかった」「上司の意向で時間外申請を40時間でカットされた」「仲間が過労死した」など、具体的なエピソードや率直なコメントが多数寄せられた。

 コメントの中には、「医師も労働者であり、1人の人間である」という切実な訴えも少なくなかった。働き方改革は、医師にとって希望なのか、それとも懸念なのか。難しい議論となるだろうが、国の動向を注視していきたい。

 今回の調査の詳細と、具体的なエピソードやコメントはCareNet.comに掲載中

(ケアネット 鄭 優子)