眼圧計を安全に繰り返し使うための殺菌方法はないか。米国眼科学会を代表して米国・マイアミ大学のAnna K. Junk氏らが、システマティックレビューに基づき検討した結果、眼圧計の次亜塩素酸ナトリウム(希釈漂白剤)による消毒が、一般に眼科診療で院内感染と関連するアデノウイルスや単純ヘルペスウイルス(HSV)に対して効果的な殺菌法となることを報告した。なお、プリオン病の疑いがある患者の診療では使い捨て眼圧計チップの使用が望ましいこと、眼圧計プリズムは定期的に破損の徴候がないか調べる必要があるといった注意喚起も行っている。Ophthalmology誌オンライン版2017年7月11日号掲載の報告。
研究グループは、繰り返して使う眼圧計プリズムについて、さまざまな消毒方法の有効性を評価するとともに、消毒が眼圧計にどのような破損をもたらすのか、および患者への有害性についても調べた。
PubMedとCochrane Libraryのデータベースを用い、2016年10月に原著論文を検索しシステマティックレビューを行った。レビュー、英語以外の言語の論文、非眼科学論文、調査および症例報告は除外された。
主な結果は以下のとおり。
・64報が特定され、除外基準に従い10報が本レビューに組み込まれた。
・10報中、9報はプリズムを、1報は鋼板を使用していた。
・10報において評価された感染因子は、アデノウイルス8型および19型、HSV-1および2、ヒト免疫不全ウイルス1型、C型肝炎ウイルス、エンテロウイルス70型および変異型クロイツフェルト・ヤコブ病であった。
・アデノウイルス8型について、4報で検討されていた。いずれも次亜塩素酸ナトリウム(希釈漂白剤)による消毒でウイルスは検出不可となると結論していたが、70%イソプロピルアルコール(アルコールワイプまたは浸す)でウイルスの全滅を認めたのは2報のみであった。
・HSVについて検討した研究は3報で、いずれも次亜塩素酸ナトリウムおよび70%イソプロピルアルコールはHSVを除去すると結論した。
・エタノール、70%イソプロピルアルコール、希釈漂白剤および機械的洗浄はすべて、壊死細胞片を完全に除去できなかった。
・一方で、壊死細胞片の除去はプリオンの伝播を防止するために必須となる。したがって著者は、「プリオン病が疑われる患者を診療する場合は、単回使用眼圧計チップまたは使い捨て眼圧計カバーの使用を考慮すべき」としている。
・次亜塩素酸ナトリウム、70%イソプロピルアルコール、3%過酸化水素、エチルアルコール、水浸、紫外線および熱曝露が、眼圧計プリズムの破損の原因であった。
・消毒剤により接着剤が溶けると、眼圧計チップが膨張してひびが入る可能性があり、ひび割れは角膜を刺激したり、微生物の温床となったり、眼圧計チップ内部に消毒液が入る原因となりうることも示された。
(ケアネット)